外国人介護職員が増える時代――高齢者施設の『ワクチン対策』は大丈夫か

外国人介護職員が増える時代――高齢者施設の『ワクチン対策』は大丈夫か

先日、「介護施設にポルトガル語が響く時代」という内容のブログを書きました。私が協力医を務めている高齢者施設でも、外国人職員が働く姿は珍しくなくなりました。フロアにいる職員3人が全員外国人という施設もあります。今後、日本の介護現場を支えるうえで、外国人材の存在はますます大きくなるでしょう。

そんな記事に対して、ある医師から非常に興味深いコメントをいただきました。その先生が連携している高齢者施設の中には、「近いうちに職員の半数以上が外国人になる」と話している施設もあるそうです。

さらに印象的だったのが、外国籍の職員が水痘、いわゆる「みずぼうそう」を発症したという話です。施設の入居者が帯状疱疹を発症し、そこから感染した可能性が考えられたとのことでした。ここには、これからの高齢者介護を考えるうえで重要な問題が隠れています。それが、外国人職員の予防接種歴と感染症対策です。

目次

第1章 「帯状疱疹から水ぼうそう」が起こる理由

「高齢者の帯状疱疹が、若い職員の水ぼうそうにつながる」

一般の方には少し不思議に聞こえるかもしれません。しかし、水痘と帯状疱疹は、どちらも同じ「水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)」によって起こります。子どもの頃などに水痘に感染すると、治った後もウイルスは体内の神経節に潜伏します。それが加齢や免疫力の低下などをきっかけに再び活動するのが帯状疱疹です。

一方、水痘にかかったことがなく、十分な免疫も持っていない人が帯状疱疹の患者さんからウイルスに感染すると、「帯状疱疹」ではなく最初の感染として「水痘」を発症することがあります。水痘の感染経路には空気感染、飛沫感染、接触感染があります。特に成人が初めて水痘を発症した場合、小児より重症化するリスクが高いことも知られています。

高齢者施設では、入浴や着替え、排泄介助など、職員と入居者が極めて近い距離で接する機会が多くあります。つまり、高齢者の帯状疱疹は「本人だけの病気」と考えてはいけません。施設内に水痘への免疫を持っていない職員がいれば、感染管理上の問題になる可能性があるのです。

第2章 外国人職員は「ワクチンを打っているはず」と考えてはいけない

日本人の場合、私たちは無意識のうちに「子どもの頃に必要な予防接種は受けているだろう」と考えがちです。しかし外国人職員については、その前提が必ずしも成り立ちません。

国によって予防接種制度は異なります。制度として存在していても費用や地域事情などによって接種率が異なる可能性がありますし、本人自身が「何のワクチンを何回受けたか」を把握していないことも考えられます。

問題になるのは水痘だけではありません。高齢者施設や医療・介護現場では、麻疹、風疹、水痘、ムンプス(おたふくかぜ)などについて、職員が十分な免疫を持っているかを考えておく必要があります。

日本環境感染学会の「医療関係者のためのワクチンガイドライン」でも、麻疹・風疹・水痘・ムンプスについて予防接種歴や抗体の確認を行う考え方が示されています。たとえば水痘などについて、既往歴だけで判断せず、予防接種記録や必要に応じた抗体検査によって確認することが重要になります。

麻疹は特に感染力が非常に強く、免疫を持たない人が感染すると発症する可能性が極めて高い感染症です。厚生労働省もMRワクチンの2回接種の重要性を示しています。「外国人だから危険」という話ではありません。

むしろ逆です。日本で働いてくれる外国人職員を、感染症から守る必要があるという話なのです。


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第3章 採用時に「健康診断+ワクチン歴確認」を

今後、高齢者施設では外国人職員を採用する際の仕組みそのものを変えていく必要があると思います。私は少なくとも、「どの予防接種を受けているか」「母子手帳や接種記録に相当する資料があるか」「水痘などの罹患歴があるか」

を確認し、必要に応じて抗体検査やワクチン接種につなげる仕組みを検討すべきだと思います。

これは外国人だけに特別な検査をするという意味ではありません。本来、日本人職員を含めたすべての医療・介護従事者について考えるべき問題です。しかし外国人職員が増えることで、「予防接種歴は人によって違う」という当たり前の事実が、より見えやすくなったのです。

そして、この費用をすべて本人負担にしてよいのかという問題もあります。日本は、人手不足を補うために外国人に来てもらうだけでは不十分です。

日本語を教える。
介護技術を教える。
住居を準備する。

それと同じくらい、日本で安全に働ける健康管理の仕組みを用意することが必要です。抗体検査や必要なワクチン接種について、施設任せ、本人任せにするのではなく、国として一定の仕組みを整える時期に来ているのではないでしょうか。

終わりに――外国人を「働き手」ではなく「仲間」として守る

これから10年、日本の介護現場の風景は大きく変わると思います。日本語だけでなく、ポルトガル語、ベトナム語、インドネシア語、ネパール語など、さまざまな言葉が飛び交う施設が当たり前になるかもしれません。

私はそれを否定的には考えていません。むしろ、日本の高齢者を支えるために海外から来てくださる方々には、本当に感謝しなければいけないと思っています。

だからこそ、単なる「労働力」として考えてはいけません。外国人職員が感染症にかかれば、本人が苦しむだけではありません。高齢で免疫力の低下した入居者への感染、ほかの職員への感染、さらには施設運営そのものにも影響します。

外国人職員が増える時代だからこそ、予防接種歴の確認、抗体検査、必要なワクチン接種を含めた感染対策を、もう一度見直す必要があります。外国人に日本の介護を支えてもらうのであれば、私たちも彼らの健康を守る。それが、これからの高齢者施設に求められる新しい感染症対策ではないでしょうか。

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