コンタクトレンズに使える花粉症点眼薬は一つだけ!【医師が解説】

コンタクトレンズに使える花粉症点眼薬は一つだけ!【医師が解説】

以前、花粉症に苦しむ三姉妹から、「お父さん、花粉症の目薬を処方して」といわれ処方しました。しかし彼女ら曰く、「この目薬、コンタクトレンズ使用時には使えないよ!」とダメ出しをされてしまいました。

実は我々内科医は、春の季節には、普通に花粉症の内服薬も処方しますし、花粉症の点眼薬も処方します。しかし内科医であるため、コンタクトレンズ(以下CL)を使用している患者さんへの目薬の知識を持ち合わせていないことが大半です。娘たちに言われるまで、それに気づかずに漫然と処方してしまっていたのです。そこで、これではいけないと一念発起。薬局にて調べてまいりました。その結果、処方薬で1つ、市販薬でも2つ見つけることができました。

今回の記事では、CL使用している患者さんが使うことのできる目薬について、医師である長谷川嘉哉が解説します。

1.基本的な対応は、コンタクトレンズを外す?

実は、花粉症の際に使用できる点眼薬を調べると、とりあえず「CLの使用禁止」という注意書きが散見されます。その理由としては、「点眼薬を使用するような眼疾患を持っている人にCLを装用させてよいのか」との考えによります。

しかし現実には、常日頃CLを使用している方にしてみれば、花粉症シーズンでもCLの装用を希望するものです。そのためにも、正しい知識を持ったうえで、花粉症用の目薬を使用したいものです。

Woman blowing her nose
ひどいときはコンタクトレンズを外した方がよろしいです

2.多くの目薬がコンタクト使用時に適応していない理由

多くの点眼薬がCL使用時に適応していないのには理由があります。

2-1.目薬の成分の角膜への影響

一度、点眼薬の成分を見てみてください。殆どの目薬に、防腐剤として塩化ベンザルコニウムという成分が含まれています。塩化ベンザルコニウムは、その濃さと接触時間に関連して角膜障害を起こすとされています。通常のまばたきをしていれば、問題はないのですが、CLを使用している場合はその影響が心配されるのです。

2-2.点眼薬の成分の角膜への影響

市販されている点眼剤は充血を改善する血管収縮剤を含むものが多く、特に注意が必要です。これはCL装着によって酸素が不足しがちなところにこれらの薬を点眼すると、角膜の血管が収縮し酸素不足が助長される可能性があるためです。

2-3.目薬の成分のコンタクトレンズへの影響

防腐剤である塩化ベンザルコニウムはCLに吸着されやすく、レンズの変形、白濁や変色する可能性があります。このため防腐剤を含む点眼薬は、CL使用時は避ける必要があるのです。

hands washing contact lens with solution
コンタクトレンズは、薬の成分を吸収して、長時間目に触れさせるので、危険が高いのです

3.医師が処方できる目薬のうちコンタクトレンズでも使用できる点眼薬はこれだ!

実は、医師が処方できる点眼薬は、アレジオン点眼液」1種類しかありません。眼科などでは、防腐剤が入っていないためゼペリン点眼薬も使用されていますが、メーカーは推奨していません。

3-1.アレジオン点眼薬

アレジオン点眼液0.05%にはベンザルコニウムが含まれていないため,ソフトコンタクトレンズ装用時にも点眼が可能です。涙液の浸透圧比は約1pH7.45です。これに近い点眼液は目にしみません。アレジオン点眼液は浸透圧比が0.9〜1.1、ph6.7〜7.3で目にしみません.

なお、2019年9月には、アレジオンLX点眼液0.1%が発売されました。0.05%は1日4回、0.1%は1日2回で効果があります。但し、この点は、「1日2回は助かる」という方や、「1日4回は使いたい」という方と好みが分かれると思います。

その他の保険認可されている抗アレルギー剤の点眼薬は、点眼前にレンズを外し、数分以上経過後(製品により異なります)に再装用する必要があります。

3-2.アレジオン点眼薬は少々高い

ただし、アレジオン点眼液の欠点は値段が高いことです。0.05%は1本5㎖の薬価が、1358円。0.1%は濃度が倍になるので、1本5㎖で薬価は倍の2707円です(令和5年時点)。通常、目薬1滴は、0.05㎖。両眼で1回0.1㎖。これを1日4回。1日分0.4㎖と考えると、1本で、12日程度。1か月で3本は必要です。


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つまり3割負担で、0.05%は1か月で1358円×3本×0.3=1,222円が負担となります。(0.1%は値段は高くても回数が半分なので同じ負担になります)。これでCL使用時に、点眼薬が使えれば安いのかもしれませんが・・。

3-3.ステロイド点眼が必要な段階では、CLを使用してはいけない

花粉などによるアレルギー性結膜炎では,抗ヒスタミン薬やステロイドなどの目薬を使用します。ご紹介したアレジオンは、抗ヒスタミン薬ですが、これでも症状が治まらない場合は、ステロイドの点眼薬は必要になります。この段階まで症状が進行した場合は、CLの使用は一時中止してください。

4.市販薬でも2つ発見!

市販の目薬は多くの種類があります。私が見つけた花粉症に使用できる目薬はご紹介する2種類です。しかし、私が調べ切れなかったものもあるかもしれません。その際は、「成分・分量」を見ていただき、「ベンザルコニウム塩化物」が含まれていないものを選んでください。

スマイルコンタクトEX AL-Wクール 12mL:防腐剤無配合なので、カラーコンタクトレンズを除くすべてのコンタクトレンズ装着中に点眼できます。抗ヒスタミン成分「クロルフェニラミンマレイン酸塩」と抗炎症成分「グリチルリチン酸二カリウム」が含まれます。「コンドロイチン硫酸エステルナトリウム」も含まれ、角膜表面の乾燥を防ぎ、異物感をやわらげます。Amazon広告からご紹介します。

【第3類医薬品】スマイルコンタクトEX AL-Wクール 12mL ×2

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この目薬は、薬剤師さんから教えていただきました。ロート製薬からでているロートアルガードコンタクトもCL使用したまま点眼できる目薬だそうです。お探しの方は参考になさってください。

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【第3類医薬品】ロートアルガードコンタクトa 13mL ×2(Amazon紹介ページ)

5.アレルギー性結膜炎の一般的注意

目薬を使用すると同時に、以下の点にも気をつけてください。

5-1.1日使い捨てタイプ

点眼薬のCLへの影響を考えた場合、1日使い捨てタイプであれば,殆ど心配はありません。ベンザルコニウムの含まれない目薬を使って、1日使い捨てタイプならば殆ど問題はないと思われます。

5-2.花粉症自体をコントロール

花粉症によるアレルギー性結膜炎を抑えるには、花粉症自体をコントロールすることも有効です。薬の服用で目の掻痒感もかなり抑えることが出来ます。花粉症自体の治療については、以下の記事も参考になさってください。

観測史上最大の「花粉」超大量飛散予想!病院受診せずに自宅で改善するとっておきの方法

5-3.早めに治療を

ステロイド点眼薬を使用するまで悪化させないことは重要です。そのためには、粉飛散予測日の約2週間前、または症状が少しでも現れた時点で抗アレルギー点眼薬の使用を開始することがお勧めです。早めの点眼が、症状の発症を遅らせ,発症後の症状を軽減します.もちろん抗ヒスタミン薬は症状がある時にだけ使用しても目のかゆみをある程度軽減してくれます。

6.まとめ

  • コンタクトレンズを使用しながら点眼できる花粉症目薬は、保険適応ではアレジオン点眼薬のみです。
  • 市販薬では、私が調べた限りは、「スマイルコンタクトEX AL-Wクール」と「ロートアルガードコンタクト」2種類のみです。
  • 但し、ステロイド点眼を使用するほど悪化した場合は、コンタクトレンズ自体の使用を中止しましょう。
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