画期的な片頭痛の治療薬であるエムガルティを脳神経内科専門医が解説

画期的な片頭痛の治療薬であるエムガルティを脳神経内科専門医が解説

2021年4月に、片頭痛の画期的な薬、「エムガルティ」が承認されました。当院は、脳神経内科を専門としているため、市販薬が効かなかったり、専門外の医師に受診したが効果がなかった頭痛患者さんが集まってきます。そんな患者さんに、今回、注射薬として片頭痛の新薬が発売されたのです。実際、適切な患者さんに、適切に使用するととても効果があるようです。今回は、脳神経内科専門医の長谷川嘉哉が、片頭痛の新薬「エムガルティ」の対象者、使用方法、使用上の注意について解説します。

1.片頭痛とは?

頭痛には、神経、血管、筋肉が原因の3種類のタイプがあります。片頭痛は、血管性頭痛の代表格です。脳内の血管が広がり、血管に絡みつく三叉神経が刺激を受けることで痛みが起きます。痛みの程度は激烈で、この片頭痛には市販薬は効きません。若い女性が中心で、遺伝性があります。国内の推定患者数は1千万人。人口の8%。女性が男性の4倍くらいで、特に30代、40代の女性に多く見られます。

2.新薬エムガルティとは?

今回、承認された新薬「エムガルティ」には、以下の特徴があります。

2-1.画期的な作用機序

頭の硬膜や三叉神経にあるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は、片頭痛発作時の血管拡張や炎症の原因です。「エムガルティ」の正式名称は、「ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤」であり、CGRPの働きをブロックすることで、片頭痛の発作を減らし、さらに程度も軽くするのです。

2-2.注射薬で高価

従来の、片頭痛の薬は飲み薬でしたが、「エムガルティ」は注射薬です。エムガルティは最初の月に2本、2ヶ月目から1ヶ月に1本注射をします。ただし、モノクローナル抗体製剤であるため薬価も高くなります。3割負担でも、初月は27099円、2か月目以降は毎月13550円の費用がかかります。(初診、再診料等は別です)

2-3.高価であるが効果もある

「エムガルティ」は高価な薬ですが、モノクローナル抗体製剤であるため、作用目的のみに効果を発揮するように設計されています。そのため、効果も高く、副作用もきわめて少ないのです。実際に、臨床試験で6カ月間の使用で片頭痛の日数が減った人の割合は、50%減が59%、75%減が33%、100%減が11%です。つまり、片頭痛発作が、ゼロになった例が10%を超えている点は驚きです。

3.新薬エムガルティ使用の注意

「エムガルティ」を使用するには、以下の条件を満たすことが大事です。

  • 医師に、片頭痛と診断されていること
  • 片頭痛が過去3か月の間で、平均して1か月に4日以上起こっていること
  • 従来の、片頭痛の予防薬で効果が不十分
  • 妊娠中・授乳中は、、十分検討して「慎重投与」
  • 18歳未満は、使用不可

4.脳神経内科専門医としては?

脳神経内科専門医としては、「エムガルティ」の実際の使用においては以下の心配をしています。


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4-1.本当に片頭痛?

患者さん自身が、「片頭痛」と言われても、実際に診断すると本当の片頭痛は1割程度です。少なくとも、本当に片頭痛であれば、仕事をすることはできませんし、市販薬は効きません。

4-2,片頭痛と筋肉性頭痛の混在?

教科書的には、片頭痛と筋肉性頭痛は明確に分かれて記載されていますが、実際は日によって、片頭痛であったり筋緊張性頭痛であったり、混在することが大部分です。まず筋緊張性頭痛が起こり、その後片頭痛を誘発することもあります。このように混在している患者さんでは、「エムガルティ」を使用するか否か迷ってしまいます。なお、片頭痛と筋肉性頭痛については以下の記事も参考になさってください。

4-3.正しい治療を受けている?

頭痛程度なら、専門関係なく診断・治療できていると思われがちですが、結構難しいのです。詳細に、頭痛の性情を聞き、数種類の薬を患者さん自らで試してもらいながら治療が必要です。頻度が多ければ、予防薬を処方。頻度が少なければ、数種類の治療薬の組み合わせて治療を行います。少なくとも単に痛み止めを出しているだけでは、とても対応できるものではないのです。

4-4.経口薬でかなり治療できている

当院では、他院でコントロールできない患者さんも、予防薬と治療薬の組み合わせで殆どコントロールできています。そのため現状では、「エムガルティ」の必要性は感じていません。今後、さらなる重症例がいらした場合は、使用を検討したいと思います。

4-5.群発頭痛にこそ使いたい

片頭痛ほどの頻度はなく、男女比も、男性に多い「群発頭痛」という疾患があります。群発頭痛の痛みは激烈で、薬の効果もあまりありません。作用機序的には、片頭痛に近いため、是非、「エムガルティ」を使えればと考えています。残念ながら日本では保険適応ではありませんが、海外では治験が進んでいるようなので、今後の報告を待ちたいと思っています。

5.まとめ

  • 片頭痛に対する、新規の治療薬「エムガルティ」が承認・発売されました。
  • 「エムガルティ」はモノクローナル抗体製剤のため、高価ですが、効果もあって副作用が少ない特徴があります。
  • 従来の予防薬でも片頭痛が過去3か月の間で、平均して1か月に4日以上起こっている場合は、使用を検討することができます。
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