薬も効かない仕事もできない激烈な症状を呈する「群発頭痛」について専門医が解説

薬も効かない仕事もできない激烈な症状を呈する「群発頭痛」について専門医が解説

頭痛程度では仕事は休みにくいものです。しかし、脳神経内科専門医である私が、仕事を休むための診断書を書くほどの「頭痛」があります。それは、群発頭痛です。あまりの痛みに、見ていても気の毒です。「世の中には、頭痛ぐらいで仕事を休む?」といった、間違った認識も多いものです。今回の記事では、脳神経内科専門医の長谷川嘉哉が、薬の効果もなく、仕事もできないような頭痛の一つ、群発頭痛について解説します。

1.群発頭痛とは?

群発頭痛とは以下の特徴を持ちます。

1-1.群発する頭痛とは?

群発頭痛の、群発とは辞書的には、「いっときの間、しきりに起こること」とされています。群発地震をイメージするとよいかもしれません。群発頭痛は、群発地震のように、1か月程度の決まった期間に定期的に起こります。しかも、毎日のように決まった時間に1〜2時間継続される頭痛発作を引き起こします。

1-2.男性に多い

国際頭痛学会の、分類では、群発頭痛は、「片頭痛」「緊張型頭痛」と一緒に、慢性頭痛として分類されています。男女比では、片頭痛は女性が男性の 4 倍多く、緊張型頭痛に男女比は認めません。しかし、群発頭痛は男性が女性より5倍と圧倒的に多くなっています。

1-3.好発年齢

好発年齢は、20~40歳です。つまり、働き盛りの、男性に起こりやすいため、仕事にも支障が出ることが多いのです。

2.具体的症状は

群発頭痛の症状は激烈です。患者さんの言葉を借りると、「片側の目の奥がえぐられような強烈な痛み」と評されます。あまりの痛みに、安静にすることもできずに、じっとしていることもできないことも特徴です。このような痛みが、1回につき1~2時間程度、1~2か月にわたって続くのです。

なお国際頭痛学会では、症状を以下のようにまとめています。

  • 片側の目の奥や眼球を中心に激しい痛みが起こる。
  • 一度発症すると、以後は必ず同じ側にだけ痛みが生じる。途中から反対側が痛むようになるということは絶対に起きえない。
  • 痛みの起こる側の顔面(額や顔面の発汗など)や目(涙、充血など)、鼻(鼻水、鼻づまりなど)の症状を伴う場合が多い。
  • 痛みが側頭部や下あご、歯などに広がることもある。
  • 明け方に痛みを感じることが多く、痛みによって毎日同じ時刻に目を覚ます。

3.発症を誘発するもの

群発頭痛は、何らかの原因で血管が拡張することで、発作が誘発されますので以下の行為は控えることが大事です。

3-1.アルコールは絶対禁止

群発期には、絶対にアルコールは禁止です。アルコールが血管を拡張させて痛みを誘発するのです。逆に、アルコールを飲んでも、頭痛発作がなくなれば、群発期が終わったと考えられます。

3-2.気圧の変化にも注意

気圧の変化も、血管を拡張させ頭痛を誘発します。飛行機に乗ったり、スキューバーダイビングなどは気圧の影響を受けやすいので群発期は控えることがお勧めです。


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3-3.血管を広げるような日常生活に注意

日常生活での何気ない行動も血管を広げて頭痛を誘発しますので注意が必要です。具体的には、熱い温度の入浴、サウナ、食事で辛い物を食べることにも注意が必要です。激しい運動も、群発期は避けるようにしましょう。

4.治療への反応が悪い

群発頭痛は、これだけ激しい症状のため、市販薬程度では全く効果がありません。逆に市販薬が効くようであれば、群発頭痛ではありません。

4-1.トリプタン製剤

治療薬としては、片頭痛で使用される、トリプタン製剤を使用します。現在、使用できるトリプタン系薬剤は5種類(商品名でイミグラン、ゾーミック、レルパックス、マクサルト、アマージ®)です。タイミングを逃さずに服薬できるように、その剤形には、錠剤だけでなく、口腔内速溶/崩壊錠、点鼻薬、注射薬があります。頭痛が起きそうになったら、すぐに服用できるタイプを主治医を相談して処方してもらうことをお勧めします。

4-2.酸素吸入

トリプタン製剤の効果が不十分だが、発作後10分以内に対応できる場合は、酸素吸入治療も有効です。これは、保険も適応されており、100%の酸素7リットルを15分間吸入します。私の患者さんでも、著効する患者さんがいらっしゃいました。

4-3.「エムガルティ」に期待

片頭痛に対して、特効薬である「エムガルティ」が認可されました。群発頭痛は、作用機序的には、片頭痛に近いため、「エムガルティ」を使えればと考えています。残念ながら日本では保険適応ではありませんが、海外では治験が進んでいるようなので、今後の報告を待ちたいと思っています。「エムガルティ」については以下の記事も参考になさってください。

5.群発頭痛の知名度は低い

群発頭痛の有病率は、全人口の0.1%に過ぎません。ちなみに片頭痛の有病率は8%とその差は歴然です。そのため職場の上司も、「頭痛ぐらいで大げさ」と思っている方もたくさんいらっしゃいます。それどころか、医師の中でも群発頭痛について知らない方の方が多いのです。

だからこそ、あまりに激しい頭痛の場合は、脳神経内科専門医に受診する必要があります。専門外の先生が鎮痛剤を処方するだけで対応できる疾患ではないのです。

6.まとめ

  • 片頭痛と異なり、男性に多い、群発頭痛という病気があります。
  • 群発頭痛の痛みは、激烈で、通常の痛み止めなどは全く効果がありません。
  • 今後は、片頭痛の特効薬である「エムガルティ」の保険適応にも期待したいものです。
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