私は、医療法人ブレイングループで介護事業を経営しています。まさか令和2年4月1日からの新しい民本の改正が、介護事業に影響を受けるとは思いもしませんでした。それは今回の改訂の一つ、「個人根保証契約と限度額の定め」です。多くの介護サービスでは、契約が必要であり、そこには必ず保証人さんにも契約いただいています。今回の記事では、大部分の介護事業所が、契約書を変更する必要がある理由をご紹介します。
目次
1.高齢者施設での今までの契約
通常、介護事業、とくに入所系の契約においては、保証人として、身元引受人を1~2名定めることが普通でした。これは、死亡時の家賃等の支払いや急変時の対応などが目的でしたが、契約上は「入居者の債務一切を負担する形式」でした。これでは、保証人は際限なく債務を負担しなくてはならなくなってしまいます。
2.民法の改正で、介護事業所には大きなリスク!
そこで、新民法では負担する保障に上限額を設定、その限度までを保証範囲としたのです。ここで、多くの介護事業所が注意が必要なことは、もし限度額を設定しないで契約をした場合は、契約は無効となるのです。つまり、連帯保証人が付いていない契約となりますので、介護事業所としては大きなリスクとなります。
3.本来の民法改正の意味
本来、今回の民法の改正の目的は「個人根保証に関する規制の強化」が目的です。根保証とは民法465条の2第1項の「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証」のことです。日本での自殺の理由も、「根保証により主たる債務の額が想定外に膨れ上がり、保証人が過酷な状況に陥ること」が一因とされています。
といっても、介護事業の契約で、「保証人に過酷な状況」に陥ることはあり得ないのですが・・。
4.事業所は契約書の修正が必要
したがって、介護事業所は、保証人に対して限度額を契約書に記載して説明しなければいけません。そのためには、各事業所が、極度額を設定する必要があります。これって結構悩ましいものです。「極度額1億円」などど記載したら、保証人が驚いてサインをしてくれないでしょう。といって、「極度額100万円」では、家賃の延滞によっては、すぐにオーバーしてしまいます。何しろ、保証人には、極度額にまでしか請求できないのですから…。
そこで、極度額は、高額すぎず、リスクが極力少ない額を設定する必要があるのです。私が、弁護士さんに相談したところ、賃貸借契約における「連帯保証人に負担を命じた裁判所の判決例では、平均値は月額家賃等の13.2か月分」とのことです。したがって、家賃を含めた月額利用料の12か月から24か月分程度が妥当と思われます。
5.まとめ
- 民法の改訂の一つ、「個人根保証契約と限度額の定め」は介護事業所まで影響を及ぼします。
- 契約書において、限度額を設定しないで契約をした場合は、連帯保証人が付いていない契約と一緒になってしまいます。
- 早急に、契約書の変更をお願いします。