認知症の予防というと、頭を使うような脳トレが有効と思いがちです。しかし、最近の研究では歩行をはじめとした運動機能が認知症の発症に関わっていることが報告されています。今回の記事では、月に1000名の認知症患者さんを診察する長谷川嘉哉が、歩行が遅くなったら認知症に注意をしなければいけない理由と予防についてご紹介します。
目次
1.2020年2月・米医学雑誌の報告とは
運動機能の低下が認知症発症に関わっている、という一つの研究報告がこのほど発表されました。
60歳以上の欧米人を対象に行われた6つの研究をまとめて解析したもので、参加者は約7千人程度。開始段階では認知症がなく身体機能も正常な参加者を10年前後観察し、途中で記憶力や歩行速度を測定。結果は記憶力も歩行速度も低下しない人に比べ、記憶力だけが低下する人は認知症になる率が3.5倍、歩行速度だけが低下した人は2.2倍、両方が低下した人は6.3倍にもなっていました。(出典・産経新聞)
つまり、身体機能の低下と認知機能の低下がどちらもある人は、より一層の注意が必要なのです。
歩行という動作には脳や脊髄といった中枢神経系が幅広く関わっています。早く歩けなくなるということは、筋力だけでなく、中枢神経機能の低下の可能性があり、認知機能にも影響を及ぼすことが考えられます。
2.脳トレも運動も情報処理である
なぜ、歩行速度が認知症と関係があるのでしょうか?
私たちは、文字を読んだり、書いたり、計算をするといかにも頭を使っているような気がします。しかし、歩いている際にも、道路に段差はないか、周囲に危険はないか、さらには路面がデコボコであればバランスをとったり、まさに脳はフル活動しているのです。
つまり、脳にとっては、頭を使うことも身体を使うことも情報処理をしていることには変わりはないのです。
3.なぜ歩行が遅くなると認知症になりやすい?
歩行が遅くなることが、認知症になりやすくなる原因をご紹介します。
3-1.血管性認知症の疑い
認知症と歩行障害を合併する要因として最も多いものが、血管性認知症です。認知症の原因としては、血管性認知症は、アルツハイマー型認知症に次いで第2位と頻度が多いのです。頭部CTや頭部MRIで小さな脳梗塞がいくつも指摘された場合は注意が必要です。臨床的には、歩幅が狭くなったり、食後にむせたり、言葉が聞きづらくなったりする症状が見られます。詳しくは、以下の記事も参照になさってください。
3-2.意欲の低下
加齢に伴い、前頭葉の機能が低下すると意欲が低下します。意欲が低下すると、頭を働かせることも、身体を動かすことも億劫になります。結果として、脳と身体の廃用が原因となって認知症に進行してしまうのです。
3-3.転倒による骨折
歩みが遅くなると、歩幅が狭くなり足を上にあげることが難しくなりがちです。そうなると、ちょっとした畳の縁のような段差にも引っかかって転倒してしまいます。転倒により骨折、入院・安静。その結果、認知症へと進行してしまうのです。
4.歩行障害の予防と改善をするには
そんな、認知症への引き金になる歩行障害を改善するには、以下が有効です。
4-1.有酸素運動
まずは、有酸素運動を定期的に行いましょう。30分程度の散歩を、週に1〜2回から習慣化しましょう。散歩自体が、バランスよく全身を刺激します。その上、散歩に出かけることで意欲が高まり、景色の移り変わりを視覚・聴覚で感じることで脳への刺激が高まります。
4-2.筋力トレーニング
有酸素呼吸運動に、できれば筋力のトレーニングも加えたいものです。といっても、高齢者の方がジムなどで行う筋トレは難しいものです。そんな時には手軽な方法として「片足立ち」があります。文字通り、支えなしに片足で立つだけ。スペースのある場所で行うことが基本です。膝をあげて足の裏を5~10センチ浮かせましょう。もちろん、よろけそうになったら壁や椅子につかまって構いません。片足を上げた状態でゆっくり呼吸しながら、1分間を目指しましょう。
4-3.身体の柔軟性
身体が硬いことは、疲れやすさ、ケガをしやすくなり、姿勢も悪くなり、歩行が不安定になります。結果、認知症の悪化要因となってしまいます。そのため、毎日の、ストレッチを習慣化してしまいましょう。入浴後の、就寝前に行うと睡眠の質が良くなります。また起床時に、行うと、頭がすっきりして勉強や仕事にもスムーズに取り組めます。詳しくは、以下の記事も参考になさってください。
5.ブレイングボードもお勧め
ブレインググループが開発したブレイングボード®もお薦めです。ブレイングボード®は、「有酸素運動」「筋力トレーニング」「柔軟性向上」「バランス性向上」の4つの運動がわずか5分でできてしまいます。特に、有酸素呼吸運動だけでなく、筋力や柔軟性・バランスを改善することで運動効果を高めますのでお勧めです。
ブレイング®とは、ブレイングループが創った「脳を意味するブレインとトレーニングを組み合わせた言葉」です。まさに、ブレイングボード®を使うことで、運動機能の改善と脳への刺激が同時に可能となるのです。
6.まとめ
- 物忘れだけでなく、歩行が遅くなることも認知症の症状の一つです。
- 脳にっては頭を使っても、身体を使っても情報処理をしていることには変わりはないのです。
- 歩行の改善のためには、有酸素運動、筋力トレーニング、柔軟性が大事です。