岸田首相の肝いりで始まった「新しいNISA制度」は、長期投資を促すことで国民の資産形成を後押ししようという点で、非常に好感の持てる取り組みだと感じていました。しかし、やはりというべきか、従来の制度では認められていなかったような「高配当・高手数料」の投資商品を、新たに売り込む動きが現れ始めています。それを可能にする仕組みこそが、「プラチナNISA」と呼ばれる制度です。
結局、国の制度を利用して、金融機関が再び“都合の良い商品”を売り出す土壌が整えられつつあるのです。この記事では、私たち国民がこのような制度の裏にある思惑に騙されないために、最低限知っておくべきポイントをお伝えします。
目次
1.プラチナ新NISAって何?
2024年からスタートした「新NISA(少額投資非課税制度)」が話題となる中、高齢者に対して「プラチナ新NISA」なる提案が一部の金融機関から現れています。「高齢者の皆様に特別なNISA枠を」「ハイリターンを目指す選ばれし人のために」などと、いかにも魅力的な響きを持たせたこの“新商品”。しかし実態を見れば見るほど、その裏には古典的で悪質な営業構造が透けて見えてきます。
2.利回りが高い=地雷商品?そのカラクリ
多くのプラチナ新NISA提案では、「毎月高配当」「利回り5〜7%が期待できます」「インフレに強い」「実績のある海外投資信託」などの謳い文句が使われています。
しかし、ここで注意したいのは「その利回り、誰のためのものか?」という視点です。高利回り商品にはほぼ必ず、高額な手数料や信託報酬がついて回ります。実質利回りで見れば、投資家が得られる利益は想定よりはるかに少なくなります。
言い換えれば「利回りが高く見えるよう設計された“ぼったくり商品”」に他なりません。そして、販売した金融機関や営業マンにとっては、これこそが“おいしい商材”なのです。
3.なぜ高齢者が狙われるのか?
高齢者は以下の理由で、金融機関の“格好のカモ”になってしまいます。
- 投資経験が少なく、「NISA=安全」というイメージを持ってしまう
- 銀行や証券マンを未だに“先生”と思っている
- 契約時に詳細なリスクを理解しきれないことも多い
- 一括で大きな資金を預けてくれる
結果、内容の分かりづらい複雑な商品、または手数料構造がブラックボックス化された商品が、あたかも「賢い選択肢」のように売られていくのです。
4.「天国に行けない人たち」──現場で見た金融機関の実態
筆者はこれまでに何人もの金融機関の営業マンと接してきました。中には誠実な方もいましたが、多くは数字を追うばかりで顧客の資産形成などまったく頭にない。むしろ、“いかに売り切ってノルマを達成するか”だけを見ているのです。
「高齢者が理解してないの、わかってる。でも買わせないといけないんです」
「短期解約されると自分の報酬が吹き飛ぶんで、長期縛りでお願いしてます」
これ、本当に人の道としてどうなのでしょうか?地道に働き、老後のために蓄えた資産を、わかりづらい仕組みの中で削り取っていく。それが「資産運用」の名のもとに許されている現在の仕組みは、もはや“合法的搾取”と言っても過言ではありません。
5.新NISAをどう活用すべきか
新NISA自体は制度として素晴らしい枠組みです。特に「つみたて投資枠」では、信託報酬の低いインデックス型投資信託しか選べません。これは長期・分散・低コストという投資の王道を守る仕組みです。
つまり、「プラチナ」などという肩書に惑わされる必要はありません。むしろ“ごく普通のNISA”を“愚直に、分散して、長期で使う”ことこそ、最大のリターンを生む近道なのです。
6.まとめ:金融機関に“モラル”を求めるな、自分で守れ
プラチナ新NISAのように、「高齢者に売りつけやすい」構造の商品は今後も形を変えて出てくるでしょう。金融機関の人たちが“天国に行けるかどうか”は知りませんが、少なくとも私たちの資産を守る責任は、彼らではなく自分自身にあることは間違いありません。
誤った選択は、老後を“地獄”に変えかねません。だからこそ、華やかな謳い文句よりも、「地味でも本当に守ってくれる商品」を選びましょう。