生命保険は死ななくても受け取れます・・FP資格を持つ専門医が提言

生命保険は死ななくても受け取れます・・FP資格を持つ専門医が提言

先日、とても嬉しいことがありました。私の患者さんで50代前半の男性が、脳出血を再発。後遺症が残ったため、高度障害の申請を勧めたところ、無事に生命保険の支払いが決定、同時に住宅ローンは免除、さらに特別障害者手当の支給が決定しました。私は、神の手を持つ脳神経外科医や、優れた救急救命医ではありません。しかし、自分なりの方法で患者さんのお役に立てたのではと思っています。今回の記事では、FP資格を持つ脳神経内科専門医の長谷川嘉哉が、「生命保険は死ななくても受け取れる」ことについて解説します。

1.生命保険は死亡または高度障害で受け取れる

死亡保険の支払事由には、死亡以外に高度障害があります。高度障害については保険販売員でさえ、「高度障害=寝たきり」と勘違いしている人がいます。確かに、「中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの」はいわゆる寝たきりに相当しますが、以下の病態も高度障害となります。

  • 両眼の視力を全く永久に失ったもの
  • 言語の機能を全く永久に失ったもの:頻度的に多いものは、優位半球(右利きなら左)の脳梗塞による失語です。この場合、決して寝たきりではなく椅子に座っていることもできるので高度障害が見過ごされることが多くなります。また、ミュージシャンのつんくさんのように喉頭癌の手術によってしゃべることができなくなった場合も含まれます。
  • そしゃくの機能を全く永久に失ったもの:口からの食事がとれなくなって、胃ろうが増設された患者さんなどです。
  • 交通事故などで両足が動かない対麻痺、頚髄の損傷で四肢が動かない四肢麻痺も高度障害になります。私の今回のケースは、右側の脳出血後に、左側の脳出血を再発し、結果として四肢麻痺の状態となり条件を満たしました。

2.住宅ローンの免除と高度障害は同じ基準

高度障害の基準と、住宅ローンの免除の基準は同一です。したがって、高度障害が認定され死亡時と同じ保険金が支払われた場合は、同時に住宅ローンも免除されます。逆に言えば、高度障害が否認されれば住宅ローンも残ってしまうのです。この両者の差はあまりに違いがあります。したがって今回の書類作成においても、専門医として真剣に記載させていただきました。

3.住友生命の態度には疑問

今回のケースでは対象の保険会社によって、保険金支払いまでの手続きにかなりの差がありました。患者さんは、住宅ローンはJAさんから借りられていました。JAさんは、手続きも極めてスムーズで簡単な確認で「住宅ローンの免除」が決まりました。

一方で、死亡保険は住友生命でした。私が記載する診断書も莫大、提出後の問い合わせも頻回。さらに家族にも何度も確認の連絡が入ったそうです。その内容もかなり厳しく、途中「先生、もうこれ以上生命保険の問い合わせに耐えられません」と訴えるほどでした。

専門医の立場からすれば、「生命保険の高度障害」と「住宅ローンの免除」は同じ規定ですから、差があることに疑問です。

4.特別障害者手当も忘れない

死亡給付金や住宅ローンの免除ほどのインパクトはありませんが、特別障害者手当の手続きも忘れてはいけません。特別障害者手当は、毎月27,300円が「精神又は身体に著しく重度の障害を有するため、日常生活において常時特別の介護を必要とする状態にある在宅の20歳以上の方」に支給されます。高度障害に該当する方であれば、特別障害者手当の基準も満たすことが多いのです。なお、特別障害者手当については以下の記事も参考になさってください。

5.医師への教育を

今回のケースは、すべてがうまくいきました。しかし、患者さん自身が脳出血を2回も罹患したことは間違いなく不幸なことです。そんな不幸を、医師は診断書によって最小限化させることができます。


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今回のケースは、家族からではなく私が専門医の立場から申請をお薦めしました。世の中で医師から生命保険の申請を勧めるケースがあるでしょうか? 多くの医師は、診療に忙しいだけでなく、そもそも高度障害を含めた知識を持っていません。

しかし医師は診断書でも患者さんを救うことができます。今後は、私の「FP資格を持った専門医の知識」を、医学部生や若い医師たちに伝える機会があればと思っています。

6.片麻痺は網羅されない

今回のケースは、脳出血を繰り返しているため四肢麻痺となり高度障害の適応になりました。しかし、通常の脳梗塞や脳出血による片麻痺は、高度障害にはなりません。したがって、住宅ローンも免除されません。世の中に圧倒的に頻度の多い片麻痺に対する対応は、個別で対応しておく必要があります。そのためにも以下の記事も参考になさってください。

7.高齢であっても終身保険が残っていることも

時々70歳を超えた患者さんで、「もう生命保険は加入していない」と言われる方がいらっしゃいます。しかし、この時代の方は現役時代に、3000万円の保障を得るために「2700万円の定期保険と300万円の終身保険」に加入されていた方が結構いらっしゃいます。もちろん定期保険は権利を失っていますが、終身保険は死ぬまで権利が残ります。

現状で、高度障害の基準を満たせば終身保険の300万円分を受け取ることができます。私は在宅の患者さんで相当数の方に、終身保険の高度障害を受け取ってもらいました。一度、昔の保険証券を確認されることをお薦めします。

8.まとめ

  • 生命保険は死亡時だけでなく、高度障害の状態でも受給できます。
  • 保険販売員の中には、「高度障害=寝たきり」と勘違いしている人がいます。
  • また保険会社によって保険金の受給までの態度に相当違いがあります。
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