令和元年10月13日(日)に宝島社さんから私の9冊目の本、「ノートを書くだけで脳がみるみる蘇る」が出版されます。この本を書くきっかけになったのは、毎日、朝日新聞の天声人語を書き写し、さらに寝る前には10年日記をつけている父親の経験が元です。「書く」習慣があったために、脳梗塞の初期症状である「失書」に気が付き、早期受診・対応により後遺症もなく退院できたのです。
今回の本は、そんな父親の出来事から、改めて書くことの重要性について、脳神経内科専門医の立場から解説しています。今回の記事では、この新刊本の内容を一部紹介させていただきます。
目次
1.書くことはなぜ脳に良いのか?
書くことはなぜ脳に良いのでしょうか? 書くという行為は、脳のあらゆる部位と関連しています。書くためには、読むことも必要、読むにも漢字・カタカナでは認識する部位が異なります。そしてイメージを膨らませることも必要。昔の記憶を引っ張り出すことも必要。そして、実際に手を使って文字を書く必要があるのです。まさに脳がフル回転するのです。そのため書くことが習慣化している人は、年をとっても脳の機能が維持されている方が多いように思えます。
2.具体的な方法① 野帳ノートで、思い出せなかったノート
年を取ると、人の名前が覚えられない、物の名前が出てこない、本や映画のタイトルが思い出せなかったりするものです。しかし、すべての言葉が思い出せないわけではありません。それぞれの思い出せない言葉には傾向があるものです。そのために私が活用しているのが、「思い出せなかったノート」です。ことある事に、思い出せなかった言葉をノートに書いておきます。そして、暇があるとそのノートを眺めていると、少しずつ思い出せないことが減ってくるから不思議です。
そんな思い出せなかったノートにお勧めなのが、「コクヨ 測量野帳 スケッチブック」です。「測量野帳」という名の通り、元々は測量業務を仕事にされている方向けに開発された手帳で60年以上作られているベストセラーです。このスケッチブックのサイズや機能性が日常携帯するのにちょうどよく、方眼のおかげで読みやすく書くことができるのです。
3.具体的な方法② 5年日記はお勧め
日記を書くことは、認知症治療の回想療法と同じ効果があります。毎日眠る前に、1日を振り返りることで、頭の中が整理されます。そして、1日の中でインプットされた情報を、日記に書くなどしてアウトプットすることで記憶として定着します。その際に、感情が刺激されるとより印象深く記憶されるのです。日々、膨大な情報の中で生活している人ほど、日記による「回想療法」の効果は大きくなります。
*回想療法:心理療法の一つ。過去のことを思い出して言葉にしたり、相手の話を聞いて刺激を受けたりすることで脳が活性化し、活動性・自発性・集中力の向上や自発語の増加が促され、認知症の進行の予防となる。
4.具体的な方法③ 新聞コラムの書き写し
認知症専門外来では、よくご家族から「薬だけでなく何か認知症の改善・予防に効果的なことはありませんか?」という質問をいただきます。そんな時にお勧めしているのが、新聞の一面のコラムの書き写しです。
書き写すことは、ワーキングメモリーといって、短い時間に心の中で情報を保持し,同時に処理する能力を改善します。繰り返すことでワーキングメモリーが鍛えられ、一度に保持できる文字数が増えることから、書き写しにかかる時間が短縮されます。ちなみに、初めは600文字の書き写しに30分程度かかっていたものが、慣れてくると20分程度にまで短縮されることが多いようです。
5.己書の薦め
私は、字が下手なことがコンプレックスでした。そんな時に、知ったのが「己書」です。ドキドキしながら、最初のお試し講座に通うと、初日からそれなりに書けるのです。それが楽しくて楽しくて、今では暇があると筆ペンで字を書いているほどです。その心地良さは、まさに脳の扁桃核が、快・快・快です。扁桃核が心地よさを感じることは、認知症予防に効果があると思っています。
実はこの本では、私が己書で書いた作品が、2つほど載っています。これをご覧いただければ、筆書きに自信がない方でもできそうな気が起きてくるのではないでしょうか。
このような記事を掲載した、新刊「ノートを書くだけで脳がみるみる蘇る」は以下から予約、お求めいただけます。よろしければぜひお手にとっていただければ幸いです。
6.まとめ
今回ご紹介した以外にも、書くことのメリットや具体的方法がたくさん紹介されています。是非、一読いただければ嬉しいです。