平成24年4月17日(火)多治見市倫理法人会のモーニングセミナー祭りでお話をさせて頂きました。
平成18年6月入会以来、倫理歴も6年目を終えようとしています。
私の担当日も、朝6時開始にも関わらず約180名の方に参加いただきました。
4月は、4人の講師で600名以上の参加者を目指していましたが、無事達成できたようです。
さて、当日は、『心豊かに向き合える~人生の最期を考える~』という演題でお話させていただきました。
当グループが在宅で患者さんを看取る場合に、訪問看護婦さんが作成した冊子を渡します。
自宅で患者さんを看取ることに不安を持ったご家族に大変評判が良いため、当日はこの冊子を使いながら講演させていただきました。
少し紹介します。
~状態の変化~
死が近づいて来るといくつかの症状が出てきます。
それらの症状に出会ったとき、不安と悲しみの為、どうしてよいか混乱するかもしれません。
しかし、これから挙げることは決して特別な事ではなく、あくまでも自然の経過です。
落ち着いて、経過をしっかりと受け止めてあげて下さい。
① 眠っている事が多くなります。
ご家族の方は会話が出来ずさみしい思いをされるかもしれません。
しばしば、目覚めが困難になったりします。これは、新陳代謝が悪くなってきているためです。
無理に起こしたりせず、いつも誰かがそばにいるように交代で見守ってあげて下さい。
② 手足が冷たくなったり、冷汗でじっとりしていたり、手足の末端が紫色になったりする事があります。
これは血液の循環が悪くなるためです。温かくしたり、さすってあげたりして下さい。
触ってもらっている感覚は暖かく、安心感を与えます。
③ 食欲は低下し、ほとんどの物を口に出来なくなってきます。
この時期は、氷、冷水、シロップをかけたかき氷、果汁…等さっぱりしたものを好まれる方が多いようです。
無理に進める事は苦痛を増やす事があります。様子を見ながら、唇を湿らす程度に少しずつあげて下さい。
④ 時間や場所、名前、家族のだれかがわからなくなったり、亡くなった人がそばに居ると言ったりする事も
よくあります。
『怖くないよ』『そばに居るから安心して』などの声をかけて見守って下さい。
新陳代謝が悪くなった為に起こる自然の経過です。
⑤ 尿や便を失禁してしまう事があります。
これは肛門括約筋や尿道の筋力が低下してくるので仕方のないことです。
ご本人のプライドを傷つけないように心掛けてあげて下さい。
⑥ “五感”の機能は少しずつ低下して来ますが、“聴力”(耳)は最後まで残ります。
耳から入って心地よいと思われる言葉や音を意図的に使われると良いでしょう。
楽しかった思い出や心に残っているエピソード、感謝の気持ちなど伝える事は大変意味のある事です。
返事をしてほしくて必死で呼び掛けたりすることは、負担を大きくします。
よく見守って、小さな反応を見逃さないようにしましょう。
この時期に最後のメッセージを残される方が多くみえます。
会いたい人、合わせたい人があればこの時までに会わせておいてあげましょう。
⑦ 体がだるく、身の置き所がなくなり、じっとしていられず終始手足や体を動かし、
落ち着きがなくなる事があります。
背中や手足をさすり、タオルや枕を利用して楽な姿勢を工夫するなどして下さい。
⑧ 終末が近くなると突然高い発熱を見る事があります。
これは体温調節の機能が低下しておこるものです。
汗をかいたらこまめに拭き、氷枕やアイスノンや冷たいタオルなどで少しでも気持ち良いと感じる事を
してあげて下さい。
⑨ 終末が近づくと、あえぐような呼吸や、急に呼吸がとまったようになり、驚く事があるかもしれません。
呼吸のパターンが変調し、10~30秒くらい無呼吸状態になることもあります。
これも自然の経過で、時々苦しそうに顔をしかめるかもしれませんが、体全体の酸素が不足してくると、
意識がボーッとしてご本人は苦しさを感じなくなります。
終末期に酸素吸入など行う事は、“苦痛のないようにバランスをとる”といった、身体の自然現象の
妨げとなり得ます。
⑩ 意識が低下してくるとうめき声が聞かれる事があります。
苦しそうに聞こえるかもしれませんが、これは衰弱が進み声帯が不安定になって声が漏れるので、
苦しみの表現ではありません。
落ち着いて見守って下さい。
⑪ 死に至るまでの経過は個人差があります。
徐々に時間をかけて終末に向かう方もみえれば、早い経過で終末に向かわれる方もあります。
呼吸も次第に弱くなっていき、最後にとまったかどうかも分からない方もみえますし、
大きな息をして止まる方もみえます。
必ずしも、その瞬間を見届けていなければならない事はありません。
参加者の方々には、一緒になって、模擬的に人が亡くなる場に立ち会ってももらいました。
一度、経験しておくと良いものです。皆さん必ず亡くなるのです。
死への覚悟を決めて、存分に生きてみましょう。
講演の機会を頂いたこと、多くの方に参加いただいたことに感謝します。