【要注意】契約できたのに保険金がもらえない!民間介護保険に潜むリスク

【要注意】契約できたのに保険金がもらえない!民間介護保険に潜むリスク

介護が必要になる将来に備え、民間の介護保険に加入する方が増えています。「公的な介護保険だけでは不安…」という思いは、多くの人に共通するものです。しかし近年、認知症と診断されてから慌てて民間の介護保険に加入しようとする方が後を絶ちません。そして、ここに重大な落とし穴があることを、皆さんはご存じでしょうか? 実際、当院の認知症専門外来でも、認知症の診断後に保険に加入し、その後に介護認定を受けたものの、保険金が支払われなかったというケースをこれまでに5~6件、経験しています。

目次

1.民間介護保険で“もらえない人”が続出する理由

「診断を受けた後でも、審査が通れば大丈夫です」「要介護認定が下りたら申請できます」――こんな説明を受け、安心して介護保険に加入したという方も多いでしょう。実際に、医師から「軽度の認知症」と言われたあとに保険に入れた、という事例もあります。

しかし問題は、「加入できたからといって、保険金が支払われるとは限らない」という事実にあります。ここを知らずに契約してしまうと、いざ保険金を請求したときに「支払い対象外」と判断されてしまうのです。

2.よくあるケース:加入時に認知症の診断がついていた

多くの民間介護保険では、支払い条件として「保険契約後に、所定の要介護状態または認知機能の低下が認められること」が定められています。つまり、契約の時点ですでに認知症と診断されていた場合、それが“既往症”と見なされる可能性が高いのです。

「審査に通ったんだから大丈夫でしょ?」と思ってしまいがちですが、実際の保険金支払いは、加入時の健康状態に遡って調査されます。後から診療録や通院歴、画像所見などを提出させられ、契約時にすでに症状が出ていたと判断されると「告知義務違反」や「責任開始前発症」として不払いになるのです。私たち医師の立場では、カルテ上の初診日や診断名は、当然ながら事実通りに記載せざるを得ません。ときには、ご家族から「初診日を遅らせて書いてもらえませんか?」とお願いされることもありますが、それは医師にとって重大な倫理違反であり、法的責任を問われかねません。そのため、丁重にお断りしています。

3.保険営業マンが「大丈夫」と言っても…

すべての保険営業マンが悪意をもって案内しているわけではありません。しかし残念ながら、民間介護保険の給付条件を正確に理解していない販売員も多く、「入れますよ」「最近も同じような人が入りました」といった楽観的な言葉で契約を進めてしまう例は少なくありません。

大切なのは、「加入できるかどうか」ではなく、「本当に保険金が支払われるか」を基準に考えることです。契約後に支払いトラブルになっても、保険会社は“正しい告知がなかった”ことを理由に責任を免れる可能性があります。営業マンがどう言っていたかは、契約書に記載されない限り証拠にはならないのです。当院でも「母が軽い認知症と診断されてから入った保険、要介護認定後に請求したら“告知義務違反”で不払いに」 、「営業の人が“まだ軽度だから大丈夫”と言ってくれたのに、初診日から“発症は契約前”と判断され支払い拒否」。このようなケースは決して特殊な例ではなく、各地でも報告されているようです。こうなると払い込んだ保険料は全く無駄になってしまうのです。


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4.認知症になる前の“備え”こそが本当の保険

保険は「転ばぬ先の杖」です。認知症と診断される前に、できるだけ早い段階で備えておくことが最も確実な対策です。特に、家族歴や生活習慣から将来的に認知症リスクがあると考えられる方は、40〜60代のうちに保障内容や条件を確認し、自分に合った保険を選んでおくことが重要です。

5.まとめ:保険は“入る”より“出る”が難しい

  • 介護保険は、入るのが簡単でも、本当に保険金を受け取るのは難しい商品です。
  • 「保険に入っていたのに、もらえない」にならないために、加入のタイミング・健康状態・告知内容などをきちんと見直しましょう。
  • そして、販売員の言葉を鵜呑みにせず、複数の情報源から正しい知識を得ることが、あなたやご家族を守る第一歩です。

 

 

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