私の父は、結婚以来、毎年12月31日に財産の“洗い出し”をしています。具体的には、貯金がいくら、保有している株の時価、不動産があれば時価評価しています。さらに、1年の中での大きな買い物なども記載されています。父親は、結婚以来続けているので金婚式を迎えた現在、50年以上続けているのですから大したものです。
私も、時々そのノートを見せて貰うのですが、結婚当初などとても財産とは言えない僅かな貯金があるだけです。そんな中にも、長女〈私の姉〉にピアノを購入した記事などは、本当に子どものためにやり繰りして購入した姿が浮かび上がります。その後も、社宅から一軒家を購入したり、さらに一軒家を売って別の場所に買いなおしたりと、右肩上がりの日本の経済成長を如実に表しているようです。財産目録の流れが、夫婦そして家族の歩みとなっているのです。そんな伝統を、私も引き継いでいます。
話が変わりますが、私が認知症の診察で重視している質問があります。「金銭管理ができていますか?」 今までできていた金銭管理ができなくなった場合、認知症であることが多いからです。しかし、認知症患者さんには、健康な時から金銭管理をしていなかった方が多いのです。つまり、配偶者に100%依存していて、貯金がいくらあるかも全く知らないのです。これは信頼しているというより、社会人として“思考停止”していると思われます。このような態度は、見方を変えると認知症の“リスクファクター”になります。夫婦のどちらかがリーダーシップを取って管理することは問題ありませんが、任せる側も最低限関心を持つ必要があるのです。“年末の財産目録作成”は、そのための一助にもなりますので、多くの意味でお勧めです。