医療法人ブレイングループは、長年、認知症を専門として診療を行ってきました。令和2年6月の敷地内に歯科クリニックの開院に合わせて、糖尿病専門外来を開設します。認知症・糖尿病・歯周病はそれぞれが密接に関わっています。まさに、当院に受診することで総合的に対応が可能となるのです。
糖尿病専門外来では、血糖を「視える化」するFreeStyleリブレ(アボット社)という機械を積極的に導入します。私自身も、毎日、頻回に血糖を測定することで多くの学びを得ることができました。今回の記事では、認定内科専門医の長谷川嘉哉が、リブレを使った「血糖の視える化」について解説します。
目次
1.FreeStyleリブレとは?
FreeStyleリブレは、間質液中のグルコース濃度を測定します。皮膚に貼るセンサーと、測定値を読み取るリーダーの2つから構成されます。私より先に導入されている医師の先生は以下のようにレポートしています。
”注意:リブレが計測している数値は、正確には「間質液中グルコース濃度」です。血液中の「血糖値」の補正済みの近似値なのですが、わかりにくいので本記事ではあえて「血糖値」と表現します。実際に測定をしていみると、実際の血糖値よりも遅れた数値が出ます。そのため血糖が上がるときは低めに、血糖が下がるときは高めにでます。(出典:【リブレ】47歳医師が自ら24時間血糖測定をやってみた、涙の14日間全記録〜その1(装着編)〜)”
1-1.センサーはどうやってつけるの?
センサーの大きさは、500円玉大程度の大きさです。センサーを皮膚に装着する器具があり、皮膚に押しつけると、「ガシャッ!」とセンサーが押し出され皮膚に密着するように貼られます。センサーは耐水性設計のため、入浴しようが運動しようが、何をしても大丈夫です。私も装着した状態でゴルフをしましたが、全く問題はありませんでした。センサーは2週間しか測定ができないため、2週間で交換する必要があります。
1-2.装着時の痛みは?
正直、センサーには比較的長い針がついているので、一瞬ひるみます。しかし、とても柔らかい材質でできているので、殆どというよりは、全く痛みがなく装着できます。恥ずかしながら、私は相当痛みに弱いのですが、全く問題はありませんでした。
1-3.リーダーは?
リーダーをセンサーにかざすだけで、血糖値が一瞬で画面に表示されます。数秒で測定が終わりますから、外来中でも、人と会っていても、ちょっとしたスキマ時間で測定できてしまいます。リーダーの画面では、24時間の血糖も見ることができます。また、USBに接続すれば、データを印刷することもできます。そのデータを有効に利用するためには、食事の記録をしておくことも必須になります。
2.リブレを使ってわかったこと
私は、2か月ほどリブレを装着。同時に、スタッフや患者さんにも装着いただき、管理栄養士さんともデータを確認して、多くの知見を得ました。
2-1.食事によって血糖の上がり方が異なる
リブレにより、食後に血糖が上がりやすい食べ物が発見できました。自分の場合では、バナナ、おにぎり、みたらし、ピザ&パスタによる急激な血糖上昇が驚きでした。患者さんの事例では、焼きそば定食、オムライス、たくさんのコロッケ、炊き込みご飯2杯などでの血糖上昇が顕著でした。
一方で、ステーキ、焼き肉、魚、卵、納豆といったタンパク質での血糖上昇は僅かであり、当たり前ですが炭水化物で血糖は上昇し、特に焼きそば定食のような「炭水化物オン炭水化物」はNGです。。
2-2.一緒に何を食べるかも大事
一緒に何を食べるかも重要です。すき焼きなどは、野菜も一緒に食べるため血糖上昇は僅かでした。同様に、血糖の上昇が著明な食べ物でも野菜などを一緒にとっていると、明らかに血糖の上昇は抑えられました。
2-3.間食よりもデザート
出来れば血糖の上昇カーブは1日3回程度にしたいものです。糖尿病になりやすいのは、ダラダラといつも何か食べていることです。そのため、スイーツでも、間食として食べるよりも、食後のデザートとして食べた方が血糖上昇の回数を抑えることができます。
何よりも測定をするようになると、間食をしなくなります。どうしても口寂しい時は、ナッツなど糖質の少ないものを口にすることで対応ができます。
3.リブレを日常生活に取り入れるとどうなるか
リブレを日常生活に取り入れると、多くの学びがありました。
3-1.食後の運動は有効であることがわかった
食後に身体を動かすことは血糖の上昇を抑えることに有効でした。焼きそば定食で血糖の急激な上昇を認めた患者さん。別の日の「糖質オン糖質」の食事では、血糖の上昇がみられない日がありました。詳細に尋ねると、その日は、食後に2時間ほど草刈りをして体を動かしていたとのことです。
逆に言えば、身体を動かす際には、前もって炭水化物を多めにとっておく必要もあるのです。
3-2.血糖値の上昇具合に個人差がある
私は、糖尿病家系です。一方で同僚の橋本先生は家系に糖尿病の方はみえません。二人は、毎日同じお弁当を食べるのですが、血糖の上がり方が全く違います。私の場合は、「血糖値スパイク」が見られるほどですが、橋本先生は、僅かに上がるのみです。正直、不公平な気持ちもありますが、リブレのお陰で自分の弱点が見つかったと前向きに考えています。
※血糖値スパイク=血糖値の急な上昇ののちに急激な低下がみられること。糖尿病の血糖コントロールが必要な方にはリスクとなると同時に、糖尿病の悪化を招くことになります。
3-3.安全な糖質制限が可能
身体をあまり動かす仕事でなく、血糖が高いもしくは糖尿病と言われた方は、1日に1食か2食の糖質制限食はきわめて有効です。しかし、3食すべて糖質を抜くことは多くのリスクがあるので絶対にやめてください。リブレを使うと安全な糖質制限が可能です。糖質制限については、以下の記事も参考になさってください。
4.具体的導入方法
リブレを試してもらいたい方は、以下のような方法があります。
4-1.インスリンを使用している人は保険適応
令和2年4月より、1型糖尿病の方は、健康保険の適応になりました。2型糖尿病の方でもインスリンを導入されている方は、月に2週間分は健康保険で対応が可能です。
4-2.無料2週間サービスコース
当院では、糖尿病でコントロールが不良な患者さんには、無料で2週間リブレを装着いただきます。最初の1週間で食事の問題点をチェック、残りの1週間で食事の改善効果を実感いただきます。
4-3.自費でも対応可能
4-2の方で、2週間無料チェック後も継続したい場合は、自費で購入いただきます。もちろん、最初から自分で血糖管理をしたい方は、自費での購入も可能です。実はアマゾンでも購入は可能です。「アマゾンで売って良いの?」との疑問もありますが、値段は当院で購入する方が安いようです。
以下にアマゾンのサイトもご紹介します。測定リーダは一度購入すれば何度も使えますが、センサーは2週間に1回の消耗品です。
リブレのリーダー:
リブレのセンサー:
5.まとめ
- 糖尿病のコントロールにおいて、リブレは極めて有効です。
- 血糖の急上昇を招く食事を避けることで、自然と血糖が改善します。
- 何を一緒に食べるか、食後の運動も血糖に影響を及ぼすことが体感できます。