検査のための受診は本当に必要?──休日診療所で見えた現実と検査の正しい理解

検査のための受診は本当に必要?──休日診療所で見えた現実と検査の正しい理解

先日、私は休日診療所で1日診療を担当しました。驚いたのは、「もう熱はないけれど検査だけしてほしい」という方の多さです。確かに、発熱の患者さんも数多くいましたが、実際に受診された方のうち約8割は、症状はすでに改善しているにもかかわらず、「念のため」「職場に証明が必要」「家族にうつしたかもしれない」などの理由で検査を希望して来られた方々でした。しかし、これは本当に医療機関を受診すべきケースなのでしょうか?

目次

1.高熱が下がった後に検査する意味はある?

コロナやインフルエンザにかかった後、体調が良くなってきたということは、すでにウイルス量も減り、体がウイルスを排除した証拠です。この段階で検査をしても、「陰性」と出る可能性は高く、むしろ「陰性=感染していなかった」と誤解を生む恐れもあります。検査のためだけに受診することは、医療資源の無駄遣いになってしまいます。休日診療所は、本当に今具合が悪い方のためにある場所です。

2.検査結果は“絶対”ではない

多くの方が「陰性なら安心、陽性なら隔離すればいい」と考えているかもしれません。しかし、検査には限界があるのです。

PCR検査の「偽陰性率」

最も精度が高いとされるPCR検査でも、感染直後〜発症初期では70〜80%が偽陰性になると言われています。

検査のタイミング 偽陰性率 理由
感染直後(1〜3日) 約70〜80% ウイルス量が少ない
発症日〜3日後 約40〜60% 鼻や喉にウイルスが十分出ていない
発症3〜5日後 約20% この時期が最も検出率が高い
発症10日以降 約30〜40% ウイルス量が減ってくる

つまり、発症時期を過ぎると「陰性」と出る確率が高くなるのです。回復してからの検査は、あまり意味がありません。

3. 抗原検査の精度はさらに低い

いわゆる「15分で分かる検査(迅速抗原検査)」は、簡便な反面、感度が低く、偽陰性率は40〜60%とかなり高めです。特に発症初期では、感染していても半数以上が「陰性」と出てしまうこともあります。「陰性だから安心」は誤解です

検査が「陰性」だったからといって、100%感染していなかったとは限りません。例えば、


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  • 発症からの時間が短すぎる
  • ウイルス量が少ない
  • 綿棒の取り方が不十分

といった理由で、感染していても検出されない(=偽陰性)ことが日常的に起きています。

特にインフルエンザでは、発症12時間以内では感度が30〜40%程度という報告もあります。早すぎても遅すぎても「陽性」と出にくいのです。

4.検査を受ける前に知ってほしいこと

  • 「症状があるかどうか」がまず重要です。軽快しているなら基本的に検査の必要はありません。
  • 検査の精度には限界があります。「陰性=感染していない」ではないのです。
  • 医療機関は検査キットの代わりではありません。本当に治療や診断が必要な方のために、受診の判断をしましょう。

5.医療を守るために、私たち一人ひとりができること

「大げさかもしれないけど不安だった」「職場が検査を求めた」といった声を聞くたびに、医療現場が本来の役割を果たせなくなることを危惧します。もちろん、不安な気持ちや周囲への配慮は理解できます。しかし、本当に医療が必要な人たちのために、冷静な判断と正しい知識が今こそ必要です。検査に頼るのではなく、症状や経過を見て判断する。それが、医療を守る第一歩です。

 

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