親の金融リテラシーの欠如が、子供を住宅ローンで苦しめる

親の金融リテラシーの欠如が、子供を住宅ローンで苦しめる

最近、私の周囲の人たちから、同じような質問を受けます。「結婚した子供が住宅ローンを組んだが、かなり無理をしているようだが大丈夫でしょうか?」という内容です。それに対して、自分は「親として何かアドバイスや、資金援助をしましたか?」と伺うと、心配はしているが何もしていないとのこと。これは、親自身の金融リテラシーの欠如が、見事に子供に受け継がれているとも言えます。

住宅ローンは人生における最大の負債です。住宅ローンを組む前に、そもそも「住宅を買ってよいのか?」、「どの程度の額まで買えるのか?」、「親からの援助は期待できるのか?」をできれば親子で話し合えるような関係性が望まれます。今回の記事では、FP資格を持つ認知症専門医である長谷川嘉哉が住宅ローンについて解説します。

1.住宅ローンはいくらまで借りられるのか?

住宅ローンの上限額を考えるには、基本的な考え方があります。

1-1.世帯年収から考える

通常、自宅の購入の場合は世帯年収の5~7倍が限度とされます。といっても住宅を購入する場合は、諸費用が掛かりますので、目いっぱいの7倍を借り切るのは危険です。せめて5倍以内にしたいものです。

1-2.何歳まで返済できるのか?

何歳まで住宅ローンを組むかも重要です。若いうちは、65歳でも70歳でも可能な気がします。しかし60歳を過ぎた場合、サラリーマンであれば収入が70%減ることもあります。そうなると住宅ローンの支払い自体も困難になります。やはり住宅ローン返済は60歳までには終えたいものです。

1-3.手取り収入の20%以内

年収の5倍以内でも、60歳までの返済で1年以内の返済額を計算する必要があります。そうすると仮に年収の5倍以内であって、返済額は手取り収入の20%以内に収める必要があります。政策金融公庫などでは手取り収入の30~35%まで認めていますが、現実問題これでは日々の生活に余裕はなく、お金のことばかり考えて生きていくことになります。また給与カットや転職・失業による収入ダウンで、住宅ローンが払えなくなり自宅を手放すことにもつながるのです。たとえ金融機関が貸してくれると言っても、そのまま借りてしまわないように気を付けましょう。

2.住宅ローンの共有名義は避けたい!

返済を60歳までにして、返済額を手取り収入の20%以内にすると、多くの方は年収の5倍も借りられません。そうすると共働きの世帯の場合、夫婦の共有名義で住宅ローンを組むことを勧められます。しかし、これにはさらに大きなリスクを伴います。

2-1.出産・子育て

女性の場合、出産や子育てに際して、退職・転職・休職で収入減になる可能性が高くなります。そうなると途端に住宅ローンの返済が厳しくなります。

2-2.離婚

何よりも、離婚になると相当大変です。売却して住宅ローンが相殺されれば良いのですが、殆どのケースでは借金が残ります。そうなると、「家を売るのか売らないのか?」、「誰が住宅ローンを払い続けるのか?」、「誰が家に住むのか?」といった泥沼の争いが始まります。3組に1組は離婚するといわれている現状を考えると「住宅ローンの共有名義」は避けたいものです。

3.頭金が大事

これはビジネスでも住宅ローンでも同じですが、すべての借り入れにおいて、最低でも20%の頭金が理想です。これだけあると借入返済も楽ですし、想定できない事態がおこっても対応できるものです。ならば頭金をいかに用意すべきでしょうか?

3-1.地道な貯蓄

理想は、独身時代から想定して貯蓄をしておくことです。結婚してからも子供さんが小さいうちに貯蓄をすべきです。年収に関わらず年間100万円は歯を食いしばって貯蓄したいものです。これぐらい頑張って貯蓄をしてから、以下の親からの援助をお願いすべきです。

3-2.親からの援助

日本の富は高齢者に偏っています。そのため国を挙げて若い世代への資金移動を促しています。特に、「子や孫への住宅購入のための資金の非課税贈与制度」は、2021年末で終了予定でしたが、2023年末まで延長されます。非課税となる金額が最大1,500万円から1,000万円へと縮小されましたが、とても有効な制度です。

4.親がいくら援助できるか?

そもそも親に金融リテラシーがないと、子供にいくら援助できるのかが分かりません。

4-1.退職金を使い切ってしまった例

知り合いの方は、子供の住宅ローンのために、退職金の半分を贈与。そのため老後の生活費にも事欠き、70歳を過ぎても仕事をしています。これは明らかに贈与額が多すぎたのです。


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4-2,貯めこんで死んでしまうことも

逆に、子供には一銭の援助もせずに死亡。残された財産を見た子供たちから、「生前に援助してもらえたらとても助かったのに」との恨み節を言われるケースもあります。

4-3.まずは財産目録作成を

親世代も、まずは自身の財産目録、さらには年金生活における収支を計算しましょう。そうすればおのずと、子供への援助の可否が分かるものです。少なくとも意味ものなくため込む「愚」は避けることができます。せっかくのお金です、皆が喜ぶように使いたいものです。なお自身も親から援助してもらった方は、最低限その分は子供に援助することを忘れてはいけません。財産目録作成については以下も参考になさってください。

5.まとめ

  • 子供さん世代で、無謀な住宅ローンを組まれる方が増えています。
  • これは親世代の金融リテラシー欠如が、子供に受け継がれているとも言えます。
  • 親自身が財産を把握して、可能なら子供世代に援助してあげてほしいものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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