2000年に発売された、幸田真音さんの『日本国債』は、国債の「未達」によって国債市場が暴落し、金利が高騰する流れが小説仕立てでとてもよく理解できました。 自分自身の『国債』の理解の根底になっているとさえ言えます。そんな 幸田真音さんの新作『天佑なり』 を一気読みしてしまいました。 アベノミクスが模倣していると言われる高橋是清を題材にしたものです。高橋是清の名前は知っていたのですが、今の時代のような“社会保障費”がない時代のことと、気楽に考えていました。しかし、この時代には、社会保障費の代わりになんと“軍事費”があったのです。これは、社会保障費以上に大変な支出であることが小説から伝わってきました。
小説の中から気になったフレーズを
1)徹底した歳出削減に軸足を置いた『松方デフレ』は、財政再建にかじを切り、インフレ制圧に対しては一定の実績を上げたが、そのしわ寄せは庶民生活を直撃する。・・小泉政権時代?
2)日露戦争開戦時に実施されたのは大増税であった。国内債ももちろん最大限発行されたが、やはり外債発行の成否が国の運命を決める。戦争は、あたかも公債募集の成功と時を同じくするように、いよいよ本格化し始めている。・・現代の社会保障費?
3)日銀総裁に就任してまもなく、当時の総理大臣に『歳出の削減、なかでも過度な軍事支出は避けるべきだ。獲得した外貨は可能な限り国内産業に仕向け、支出の拡大を図ること。「民力」を養うことが重要である』と提言した。
4)大正12年9月1日関東大震災発生。東京の人口は400万人、死者行方不明は10万人越え(日清戦争の死者が13000人、日露戦争が84000人)・・東海地震?
5)国債発行と日銀による直接引き受けは、日本経済の危機を救うために編み出した税源捻出の奇策だった。それによって可能になった財政出動と金融緩和政策により、日本はいち早く恐慌を切り抜けることには成功した。だが一方で軍事費調達への道を開くことにつながった。そして、その奇策にも限界が見えてきた。軍部の暴走を止めなければならなかった。・・黒田政策?
6)是清暗殺後、高橋財政も軍備膨張への歯止めも何もかも崩れ去った。軍はこのあと戦争への道を一歩ずつ着実に歩み。やがて第二次世界大戦へと進んでいく。・・戦争の代わりは?
時代背景も全く異なりますが、高橋是清も恐慌からは切り抜けましたが、根本的な解決をしたわけではありません。結局先送りされ、戦争によってすべてチャラになったわけです。現在の日本も、軍事費が社会保障費に代わり、高橋財政をアベノミクスが真似て国債の日銀引き受けを行っています。これで、2015年ごろに大地震が起こると戦争の代わりになるものですべてがチャラになるのかもしれません。何とか、そこを生き残らなければ・・・