『先生、認知症の患者さんは
痛みに鈍感なんですか?
過敏なんですか?』
という質問を受けました。
実は、その答えを考えているうちに
痛みに鈍感な患者さんと
痛みに過敏な患者さんを
それぞれ、経験していたため
答えに詰まってしまいました。
患者さんやその家族は、
素朴でありながら
鋭い質問をされます。
そんな時には、自分が研修医時代に
先輩の先生の言葉を思い出します。
自分があまりに、質問をするものですから、
ついに言われました。
『長谷川先生、
世の中には、
分かることと
分からないことがある。
そして、
分からない事の方が
多いんだよ』
ということで、認知症患者さんが
痛みに鈍感か過敏かは
分かりません・・
と言いたいところですが、
一応専門医としての考えを
痛みに鈍感な方は、
痛みは感じるのですが
その痛みを保持する記憶まで
障害されています。
どちらかというと、
認知症としても重度に近い方が多いようです。
逆に痛みに過敏な方は、
痛みを記憶することはできるのですが、
過去の痛みとの比較ができないのです。
我々は、
痛みを感じたときに、
過去の経験と照らし合わせます。
例えば、腹痛を感じたときも、
これが過去に経験したレベルであるか
もしくは、今までに経験したことの無い痛みかを
判断します。
結果として、
様子を見たり
救急受診をします。
しかし、過去の記憶が比較できないと、
とりあえず、
“痛いものは痛い”と
激しく訴えます。
しかし、痛みが治まれば
“痛くない”です。
経験的には、
重症というより、中等度レベルの方に多いようです。
以上より
重症度によって
痛みに過敏から鈍感になっていくのが
認知症と考えています。
いかがでしょうか?