2つの糖尿病薬が認知症リスクも軽減?その理由は・・認知症専門医が解説

2つの糖尿病薬が認知症リスクも軽減?その理由は・・認知症専門医が解説

糖尿病は、認知症の中でもアルツハイマー型認知症と血管性認知症のいずれの原因にもなることも分かっています。そのため、糖尿病には出来ればなりたくないものです。しかし、現在の日本では約2000万人の方が糖尿病もしくはその前段階と言われ、糖尿病の薬を服薬する方も急増しています。そんな糖尿病の治療薬ですが、最近の報告では、治療薬自体が認知症を予防する可能性が示唆されています。今回の記事では、認知症専門医であり、総合内科専門医でもある長谷川嘉哉が糖尿病治療薬の認知症の予防効果について解説します。

1.糖尿病がアルツハイマー型認知症の原因になるとは?

糖尿病は、血糖を低下させるホルモンであるインスリンが減って血液中のブドウ糖が増えることで発症します。一方、アルツハイマー型認知症は、脳内にアミロイドβが蓄積してしまうことで脳の神経細胞が破壊されて発症します。

インスリンはこのアミロイドβの分解をサポートする働きがあるのです。そのため、糖尿病になりインスリンが減ることで脳内のアミロイドβが蓄積され、アルツハイマー型認知症を発症させてしまうのです。

2.2つの糖尿病薬が認知症リスクを減らす可能性があることがわかった

血糖を下げる糖尿病の薬を服薬している人が、服薬していない人に比べて、アルツハイマー型認知症の発症リスクが下がるという研究結果が米国神経学会で発表されました。その研究では、糖尿病に対して使われる2種類の薬が、アルツハイマー型認知症に一因となる「アミロイドβ」の蓄積が抑えられる可能性が示されたのです。

つまり、糖尿病病の薬が、血糖を下げるだけでなく、認知症自体を改善させる可能性が示唆されたのです。

3.糖尿病治療薬DPP4阻害剤の抗認知症効果

総合内科専門医として、糖尿病の薬の中でもっとも多く使用しているタイプの薬は、DPP-4阻害薬と呼ばれているものです。低血糖の副作用も少なく、年齢関係なく第一選択とされています。そんなDPP-4阻害薬ですが、認知機能の低下を抑制する報告がされています。韓国の延世大学校医科大学の報告は以下です。

参加者は3つの群に分けられた。①糖尿病でDPP-4阻害薬による治療中の群、②糖尿病だが薬物治療を受けていない群、③ 糖尿病でない群。研究開始時の認知テストでは、全員が同様のスコアを示した。脳内のアミロイド量を測定するために脳スキャンを行った結果、DPP-4阻害薬を服用していた患者は、他の患者に比べ、脳内のアミロイドの蓄積量が最も少ないことが分かった。さらに認知症の機能を測定する「ミニメンタルステート検査(MMSE)」で経過を追うと、DPP-4阻害薬を服用していた患者が、最も機能の低下が少なかった。

糖尿病でない群よりも、DPP-4阻害薬を服用していた患者さんの方が、アミロイドβの蓄積が最も少なく、MMSEの低下が最も少なかった点は驚きです。

4.糖尿病治療薬メトホルミンの抗認知症効果

DPP4阻害薬と同程度の頻度で使用する薬に、メトホルミンがあります。オーストラリアのガーヴァン医学研究所からは、メトホルミンの服用が、認知機能の低下を遅らせ、認知症の発生率を低下させる報告がなされています。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


研究の参加者のうち、123人が2型糖尿病で、67人がメトホルミンを服用していた。参加者は、記憶力、実行力、注意力と速度、言語などの多くの機能について測定する認知機能テストを2年ごとに受けた。その結果、メトホルミンを服用していた2型糖尿病患者は、服用していない患者に比べ、認知機能の低下が遅く、認知症のリスクが低いことが明らかになった。さらには、メトホルミンを服用していた2型糖尿病患者は、糖尿病ではない患者に比べても、認知機能の低下は6年間で差がなかった。

メトホルムの服用で、糖尿用病患者さんとの比較だけでなく、正常の方との比較でも認知機能低下に差がなかった点は、やはりとても興味深いものです。

5.糖尿病治療薬を服用して、血糖値が正常が最も良い?

紹介した2種の糖尿病の薬は、日本では糖尿病でない方に、処方することはできません。しかし、2種の薬の認知症に対する作用は、魅力的です。

理想を言えば、2種類の糖尿病の治療で血糖が正常にコントロールできる患者さんがもっともメリットがあるのかもしれません。つまり、糖尿病の合併症はなく、薬による認知症の抑制作用を享受することになるのです。

もちろん、2種類の糖尿病薬で血糖値がコントロールできなくなってしまうと、本末転倒ですので、注意してください。

6.まとめ

  • 糖尿病の治療薬自体が認知症の進行を抑制する報告がされています。
  • 特に、DPP4阻害薬は、糖尿病でない人よりも、糖尿病でDPP4阻害薬を服薬している方が脳内のアミロイドβの蓄積量が少ないのです。
  • 2種類の糖尿病の治療で血糖が正常にコントロールできる患者さんが糖尿病の合併症はなく、薬による認知症の抑制作用を享受することになるのです。
error: Content is protected !!
長谷川嘉哉監修シリーズ