全国の認知症の人の数は、2025年に最大で約730万人にのぼることが、厚生労働省の研究班の推計でわかりました。認知症の人は、2012年時点で約462万人。65歳以上の7人に1人とされますが、25年には5人に1人に増加します。そのため、徘徊する高齢者が事故に遭うのに加え、車を運転して事故を起こすケースも増えています。今回の道交法改正案では、75歳以上のドライバーを厳格に審査することで、「高齢者が被害者にも加害者にもなる事態」の防止を目指しているようです。
実際、高齢者による以下のような問題が発生しています。
1)2013年1~9月に全国の高速道路で車両が逆走したケースでは165件中23件で運転手が認知症だったことが確認。
2) 2003年に約195万人だった75歳以上の免許保有者は13年には約425万人。18年には530万人を突破すると推計。
3) 現行の道交法では、75歳以上を対象に、3年ごとの免許更新時に認知機能の検査を義務づけています。認知症の疑いが指摘され、信号無視や逆走などの違反をすると、医師が診断し、認知症と認められれば初めて免許取り消しとなります。
現行の制度では、運転を続けても違反がなければ認知症かどうか判断される機会がありません。その上、検査自体もかなり甘く、認知症が進行していても通ってしまいます。また、3年以内に症状が悪化するような高齢者への対応もできません。また認知症は、75歳未満でも発症するのでもっと対象を広げる必要があります。
結論的には、大変な手間になりますが、“65歳以上には全員に認知症の検査”を、“80歳を超えれば一律免許を返上する”ぐらいの思い切った対策が必要です。もちろん、そのためにはタクシー代の優遇といった自治体や地域社会が連携して見守る体制づくりが必要となります。