アルツハイマー型認知症は糞便を介して他の個体に伝染する!?

アルツハイマー型認知症は糞便を介して他の個体に伝染する!?

私は以前から、アルツハイマー型認知症の本質に到達するには脳だけを見るだけでなく、身体全体、特に腸への視点が重要と考えています。今回、アイルランドの研究チームが、アルツハイマー病患者の糞便を健康なラットに移植するという実験で、「アルツハイマー病が糞便を介して他の個体に伝染する」可能性が示されました。今回の実験について認知症専門医の長谷川嘉哉が解説します。

1.脳以外の部分が認知症に関与

アイルランドのユニバーシティ・カレッジ・コーク(UCC)の研究チームは、以下の実験を行い、結果が脳科学分野の学術誌「Brain」に掲載されました。詳細は以下です。

アルツハイマー病の患者69人と認知症ではない人64人から移植用の糞便と血液を採取。次に、7日間、抗菌薬を与え続けて元々の腸内細菌を死滅させた11週齢のオスのラット16匹ずつ対して、アルツハイマー病とそうでない人の糞便を溶かした液体を3日間経口投与して、ヒトの腸内細菌を移植。(11週齢のラットを選んだ理由は、成体かつ十分に若いため、老化による影響を避けるため)

その結果、最初の移植から10日後以降に健康診断や記憶テストを行ったところ、アルツハイマー病患者の腸内細菌を移植したラットには、長期空間記憶の障害や新規認識記憶の著しい低下など認知症と思われる症状が認められた。さらに、重症患者の腸内細菌を移植されたラットほど、記憶障害が重度であった。その後、神経細胞を特異的に染色するマーカーを使ったり、脳の切片を顕微鏡で観察したりすることで、アルツハイマー病患者の腸内細菌を移植したラットの脳では、海馬での新しい神経細胞の産出や成長の減少が観察された。

つまり、患者の糞便移植によって、健康なラットにアルツハイマー病の症状が「伝染する」ことが示唆されたのです。

2.アルツハイマー型認知症の腸内は有害細菌叢

UCC研究チームは、以前から、「アルツハイマー病の患者は健康な患者に比べて有害な腸内細菌を多く持つ」という報告に着眼していました。

そこで、患者の糞便に現れた腸内細菌叢を分析すると以下の結果が認められました。

酪酸を産出して腸内の清掃や腸内壁の修復作業を担うクロストリジウム属やコプロコッカス属の腸内細菌が大幅に減少。一方、パーキンソン病など様々な病気の発症に関連していると考えられているデスルフォビブリオ属の細菌が増加

以上より、損傷された腸壁が十分に修復されず、デスルフォビブリオ属の細菌から産出された毒素が血管に入り込み、血流に乗って脳に悪影響を及ぼしたことが疑われ、実際に、アルツハイマー病患者の血液から取り出された血清を、胎児性のヒト海馬の神経前駆細胞に注ぐと、神経細胞の成長と機能を低下させることが確認されました。

つまり、有害な腸内細菌によって腸管壁から毒素が血流に乗って脳に認知症変化を引き起こしたと考えられるわけです。


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3.今の治療法は根本的でない

以上の結果を考えると、現在の治療法は、変化が起きた脳に対する治療でしかありません。これでは治療も遅すぎます。効果も期待できません。もっと、根本的な治療として腸内環境を意識した治療が必要なようです。ある意味、机から落ちて割れた花瓶の破片を見ているようなものです。なぜ、花瓶が落ちたのかを考えることが大事なのです。

4.やっぱり腸内細菌が大事

こうなると腸内細菌を整えることが大事になります。この場合に注意が必要なのでは善玉菌を摂取するだけでなく、そのエサになるものも同時に摂取する必要があるのです。

4-1.善玉菌を増やす

腸内細菌のバランスを整えるには、善玉菌を増やす食事を心がけることがおすすめです。乳酸菌やビフィズス菌が含まれるヨーグルト、納豆や漬け物などの発酵食品を毎日の食事にプラスするだけで、手軽に善玉菌を補給できます。なお、以下のようなサプリメントもお薦めです。Amazon広告からご紹介します。

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4-2.善玉菌のえさを摂取する

善玉菌を摂取するだけでなく、善玉菌のエサになる食物繊維やオリゴ糖の摂取も必要です。食物繊維が豊富な野菜や海草類などを積極的に食事にとり入れたり、オリゴ糖を多く含む豆類やバナナなどの食品を意識して摂取する必要があります。

4-3.悪玉菌をのさばらせる食習慣の改善

悪玉菌は肉や脂肪などを好みます。通常は小腸で吸収されるアミノ酸や胆汁酸が大腸に流れ込むことで、悪玉菌によって発がん物資や有害物資を作られてしまいます。洋食が多く、外食が多い方は、食生活自体を見つめ直す必要があります。肉食に偏らないバランス良いメニューを心掛けましょう。

5.まとめ

  • アルツハイマー型認知症患者さんの糞便をラットに移植することで、認知症が発症した。
  • アルツハイマー型認知症患者さんの腸内細菌叢では、腸内の清掃や腸内壁の修復作業を担うクロストリジウム属やコプロコッカス属の腸内細菌が大幅に減少してる。
  • 腸内細菌叢の整備が、認知症の予防に対して最も根本的な解決につながると考えられます。

 

 

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