年をとっても衰えない「結晶性知能」について、脳神経内科専門医が解説

年をとっても衰えない「結晶性知能」について、脳神経内科専門医が解説

年を取ると脳の機能は、「衰える一方」と考えられている方が多いのではないのでしょうか? 確かに、身体機能などは、年齢には勝てません。しかし、最近の研究では脳の機能のすべてが衰退するわけでなく、逆に維持・強化されるものもあることがわかってきました。そのような機能を「結晶性知能」と言います。今回の記事では、脳神経内科専門医である長谷川嘉哉が、年を重ねても維持強化される「結晶性知能」について解説します。

1.知能とは?

知能とは、辞書的には「環境に適応し、新しい問題状況に対処する知的機能・能力とされています。人間は、1日に35,000回もの決断をしていると言われています。そのそれぞれで、常に正しい選択をすることで、様々な問題や行動を効果的に処理していく能力と言えるのです。

つまり、知能が高いということは、出来事に対して最適な状態を導き出す力のことで、決して記憶力の良さや、知識量を意味するものではないのです。

2.知能には2種類ある

知能には、大きく分けて以下の二つがあります。

2-1.流動性知能

新しい環境に適応する際に必要な能力です。情報を収集して、処理して、操作していく能力で、処理のスピード、計算力などが含まれています。年を取ると、新しい商品やサービスが出た時に、使いこなすことが難しくなるのは、流動性知能が低下しているためにおこるのです。

2-2.結晶性知能

個人が長年の経験・学習などから獲得していく能力です。言語能力、判断力、理解力、毎代解決能力、洞察力などは含まれます。これらは、「経験」という貴重な財産の蓄積であり、生活習慣や訓練によって維持していくことだできる能力です。

長年の経験で得た知識や感覚は失われるどころか強化されていきます

3.知能の種類によって、年齢の影響が異なる

国立長寿研究センターの報告では、結晶性知能は、高齢でも維持されていますが、流動性知能は、50歳代の後半ごろから低下することがわかっています。つまり、知能の中でも50歳台前後から低下する能力と、80歳代まで維持される能力があるのです。特に結晶性知能の中でも「語彙の能力」は、20歳頃から高齢期まで一貫して向上し、高齢期になっても高く維持されることがわかっています。

そもそもですが、私たちの日常生活は、過去に経験に若干変更を加えているものが多いのです。そのため、年とともに結晶性知能が蓄積されると、自然に流動性知能のニーズは低下すると言えます。つまり、年とともに行動を知能の低下に合わせて変化させれば、トータルでは知能の低下を目立させなくできるのです。


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4.知能の特性に合った人生を

年とともの、知能の特性に合った生活を送ることが大事です。

4-1.流動性知能の低下を嘆かない

加齢により、記憶力の低下や処理スピードの低下を嘆く方がいらっしゃいます。しかし、すべての知能が低下するわけではありません。流動性知能は、若い人に任せて、結晶性知能を生かした生活を送るべきです。決して、流動性知能の低下を嘆いてはいけません。

4-2.結晶性知能を生かした生活とは?

若い時代は、新しい情報を獲得することに集中します。しかし、50歳を超えたころからは、すでに獲得している情報を経験に基づいて、いかに使うかが重要となります。そして、高齢になっても維持されている結晶性知能が生かされるような生活をめざしましょう。具体的には、散歩しながら野鳥を観察したり、珍しい花づくりに挑戦したり、若い時代に夢中になった本を再度読んでみたり、以前から持っていた興味・関心を改めて、掘り下げることが理想です。

4-3.誘われたら断らない

もちろん生活行動が、すべて知能によってのみ影響を受けるわけではありません。「結晶性知能」や「流動性知能」をどちらを使うか以前に、人や社会との交流が大事です。そのための最低限の協調性は必須です。そのうえで、「誘われたら断らない」精神で、新しい環境に身を置くことが大事になります。

5.まとめ

  • 知能とは、出来事に対して最適な状態を導き出す力のことです。記憶力の良さや、知識量を意味するものではありません。
  • 知能には、新しい環境に適応する際に必要な流動性知能と、長年の経験・学習などから獲得していく結晶性知能があります。
  • 年とともの、知能の特性に合った生活を送ることが大事です。
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