認知症介護の描かれ方は50年変わらない?現実との違いを専門医が解説

認知症介護の描かれ方は50年変わらない?現実との違いを専門医が解説

先日、ニコ・ニコルソンさんの「わたしのお婆ちゃん」という漫画を読みました。この本の中でも、認知症の症状で苦しみながら、限界を超えるまで、家族が介護する姿が描かれています。この漫画だけでなく、認知症は、映画や小説にも描かれています。しかし、残念ながら1972年に有吉佐和子さんが出版された「恍惚の人」以来、50年間認知症介護の描かれ方は変わっていません。今回の記事では、祖父が認知症であった経験をもつ認知症専門医の長谷川嘉哉が、50年変わらない認知症介護の描かれ方について解説します。

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1.認知症の決まった描かれ方とは

現在、認知症の患者さん数は462万人、その前段階の早期認知症が1000万人いると言われています。そのため、多くの小説、映画、そして最近では漫画でも認知症が描かれています。それらには以下の特徴があります。

1-1.認知症の周辺症状で困る

認知症は、家族にとって困ったものとして描かれています。特に、認知症の患者さんの、「幻覚・妄想・徘徊・失禁・乱暴行為・性的問題・不潔行為・食事異常」といった周辺症状がおこると、周囲への介護負担が重くなります。逆に、認知症の代表的症状である「物忘れ」の段階で認知症が治まっていれば、何とか対応できるのです。詳しくは以下の記事も参考になさってください。

1-2.在宅で特定の家族への介護負担が描かれる

描かれる認知症では、特定の介護者に介護が集中しています。多くは、配偶者であったり、長男のお嫁さんであったり、最近ではお孫さんであることもあります。いずれも、自身の人生をすべてを認知症の介護に捧げています。なぜか、家族による介護が不可能になって、入所するような場面は描かれません。

1-3.亡くなるところは描かれない

当たり前ですが、認知症介護にも終わりがあります。患者さん自身の年齢を考えれば、最後はお亡くなりになるのです。しかし、本当の最期については、殆ど描かれることなく、いきなり遺影や葬儀の場面が描かれることが多いのです。詳しくは以下の記事も参考になさってください。

2.現実の対応策①・・周辺症状はコントロールできる

認知症の症状は、中核症状と周辺症状に分けられます。最初に、記憶障害、見当識障害、理解・判断力の障害といった中核症状が出現します。そのうち幻覚、妄想、介護拒否、暴言暴力など周辺症状が出現します。

周辺症状が出現すると、ご家族の介護負担も極めて重くなります。つまり、専門医としては周辺症状をいかに治療するかで、患者さんの処遇が決まってしまうのです。私は専門医として、「周辺症状をコントロールする事は7〜8割は可能です」と伝えています。その際には、メマリーというブレーキ系の抗認知症薬が効果を発揮します。逆に、周辺症状がコントロールできなければ、在宅介護を継続してはいけません。介護者自身が体調を崩し、時に命を失うことさえあるのですから。詳しくは以下の記事も参考になさってください。

3.現実の対応策②・・特定の介護者への負担は避けたい

「恍惚の人」では、同居する長男のお嫁さんが、認知症の介護を一手に引き受けていました。それから約50年経った現在でさえ、誰かが犠牲になっています。最近では女性でも仕事をしながら認知症介護に取り組んでいる分、より負担が重くなっています。

公的介護保険制度は、「家族の負担を軽減し、介護を社会全体で支えること」を目的に、2000 年に創設されたものです。小説や映画でも、そんな国の動きに合わせた認知症の介護を、描いてほしいものです。

4.現実の対応策③・・最後は食事を摂らなくなる

認知症の患者さんが、どのように亡くなるかをご存じない方も多くいらっしゃいます。認知症の患者さんは、中核症状から周辺症状を呈してから、その後は徐々に日常生活動作が低下してきます。廃用性の下肢筋力低下により、歩行も不安定になり車いす移動から、いずれはベッド上の生活が主体になります。そして、徐々に食事量も減ってきます。

そんな時に、ご家族によっては「食事が摂れないから入院」という選択をされる方がいます。入院をすると、中心静脈栄養や胃ろうといった処置がなされ、患者さんに苦痛を与えてしまいます。やがて、退院を迫られ、劣悪な環境の病院や施設に入ることになります。劣悪な施設については、以下の記事も参考になさってください。

無用な処置をしなければ、やがて食事を摂ることができなくなり、2週間前後で静かに天寿を全うされます。人の死を経験されていない現代の方には、不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、昭和30年代の日本では80%以上の方が、このような自然の死を自宅で迎えていたことを認識してほしいものです。

5.まとめ

  • 認知症介護の描かれ方は、50年前から変わっていません。
  • 周辺症状で困り、特定の介護者に負担がかかり、本当の最後は描かれません。
  • 今こそ2000年4月の介護保険の創設以降、大きく変化した認知症介護を描いてほしいものです。
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