平成27年7月29日、以下のような事件が起こりました。
“長崎市のアパートで84歳の男が同じアパートに住む女性を殺害したとして逮捕。男は今月、女性の部屋に押しかけるなどのトラブルを起こしており、警察は、女性を狙った動機について詳しく調べています。この事件は29日、長崎市のアパートで52歳女性が刃物で胸を刺されて殺害されたもので、同じアパートに1人で住む84歳男性容疑者が殺人未遂の疑いで逮捕されました。男性は、去年2月、被害者の娘に対してひわいなことばを叫んだとして長崎県の迷惑行為防止条例違反で書類送検されたほか、今月中旬、被害者の部屋の前で声を上げながらドアを叩いて押しかけたため、警察は、同様の行為を繰り返さないよう厳重に注意したということです。これについて警察署は「対応は適切と考えているが、今回事件が起きたことで検証する必要がある」としています。一方、おととし11月と去年2月には容疑者が「近所の人に悪口を言われる」と警察に相談しており、警察は、容疑者が近所の住民とさまざまなトラブルを抱えていたとみています。”
この容疑者に認められる症状は、異常行動、被害妄想です。その上、84歳という年齢、押しかけたり殺人ができたという点から運動機能障害はないと思われます。以上から、アルツハイマー型認知症の周辺症状、もしくは前頭側頭葉型認知症(=ピック病)が疑われます。受診いただければ、画像診断と認知機能検査で診断は可能です。このようなケースで家族がいれば別ですが、自ら病院に受診されることはありません。
今後、一人暮らしの認知症患者さんが増えれば、同様の事件が増えてくると思われます。もちろん、この状態になると、家族でさえ受診を勧めることが困難になります。書類送検したり、警察による厳重注意の際に、強制的に専門医への受診を勧めていただけると有難いものです。