レミニール(ガランタミン)の効果、使い方、副作用を専門医が解説

レミニール(ガランタミン)の効果、使い方、副作用を専門医が解説

皆様の親御さんが、抗認知症薬レミニール(一般名:ガランタミン)を処方されたとします。そんな時、どういう効果があるのか? 飲むとどうなるのか? どんな症状が良くなる?などと考えるでしょう。

さらに、うちの親の認知症の程度にあっているのか? この薬の副作用は? この薬を変えることはあるの? などの疑問が沸くものです。

今回の記事では月に1,000人の認知症患者を診ている認知症専門医の長谷川嘉哉が、レミニールの特徴について解説いたします。この薬について理解を深めたい方はぜひ参考になさってください。

目次

1.レミニールとは?

レミニールは、現在日本でにアルツハイマー型認知症で認可されている4種類の薬のうちの1種です。2000年にヨーロッパで承認されて以来、世界70カ国以上で使用されている薬です。

reminyl
レミニール(ヤンセンファーマ)。内用液も登場
reminyl12
レミニール12mg(武田薬品工業)

1-1.効能効果

適応疾患は、軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制です。当初は、アルツハイマー型認知症以外の脳血管障害を原因とするものに有効とされていました。しかし、私が臨床で使っていても、他の抗認知症薬に比べて血管性認知症に効果があるという印象はありません。

実際、添付文書にも「アルツハイマー型認知症と診断された患者にのみ使用すること。本剤がアルツハイマー型認知症の病態そのものの進行を抑制するという成績は得られていない。」とされています。つまり、対象疾患はアルツハイマー型認知症に限定され、症状の進行を遅らせるために使用するのです。

1-2.レミニールが効果がある認知症のレベル

レミニールは、軽〜中度のアルツハイマー病に効果があるとされています。具体的には、認知症の側頭葉機能を測定するMMSE(Mini-Mental State Examinaton :ミニメンタルステート検査)が30点満点で20点以上の方には、とてもよく効きます。逆に、15点以下では殆ど効果がありません。その間の、16点から19点の間の方は、効果がある方も見えますが、効果がないケースもあります。

そのため、レミニールを処方するにあたっては、最低限MMSEを測定してもらいたいのですが、かなりの医師は、認知症の症状だけで処方をしていることが多いようです。

An Anatomy of Human Brain
中程度のアルツハイマー型認知症に効果があります

1-3.作用機序

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬のひとつで、アリセプトやイクセロン/リバスタッチパッチと同系統のくすりです。

脳は神経伝達物質を介して記憶・学習を行なっているのですが、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症では神経伝達物質の1つであるアセチルコリンが脳内において減少していることが知られています。

脳内にはアセチルコリンを分解する役割を持つ酵素であるアセチルコリンエステラーゼがあり、レミニールはこのアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害することで、脳内でのアセチルコリンの濃度を高め神経伝達を助けます。

2.レミニールの効果

レミニールの特徴は以下のようなものです。

2-1.アクセル系の一つ

アルツハイマー薬の作用は、アクセル系とブレーキ系に分けることができます。患者さんが初診で訴えられた症状で、「やる気が出ない」、「物覚えが悪い」、「出来ていたことができなくなった」という症状の際、アクセル系の薬を最初に使います。具体的には、保険薬ではレミニール以外にアリセプト、イクセロン/リバスタッチパッチの3種類がこれにあたります。

2-2.認知症の進行予防の効果に差はない

認知症の進行を抑制する効果については、保険薬ではレミニール、アリセプト、イクセロン/リバスタッチパッチの3種類で効果に差はないと報告されています。

2-3.アリセプトとレミニールのちがいは?

レミニールにはアセチルコリンエステラーゼ阻害作用のほかにニコチン性アセチルコリン受容体の働きを高める作用があります。イメージとするとアリセプトが一刀流の剣士とすると、レミニールは刀のほかに手裏剣も持っている侍のイメージです。

そのため認知機能に対する効果は、レミニールでよく使われる16mg(8mgを1日2回)と、アリセプトでよく使われる5mgとの比較では、若干レミニールの効果が高いと言われています。しかし、日々の臨床では、ほとんど差はないと感じています。

3.処方と服薬の方法

通常、成人にはレミニールとして1日8mg(1回4mgを1日2回)から開始し、4週間後に1日16mg(1回8mgを1日2回)に増量し、経口投与します。なお、症状に応じて1日24mg(1回12mgを1日2回)まで増量できます。増量する場合は変更前の用量で4週間以上投与した後に増量します。

なお、1日8mg投与は有効用量ではなく、消化器系副作用の発現を抑える目的なので、原則として4週間を超えて使用しません。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


4.副作用

副作用を気にされる患者さんがいらっしゃいます。しかし、薬としての効果があるものは、同程度の副作用があるものです。副作用のない薬は、効かないのです。副作用も理解したうえでの服薬が大事なのです。

4-1.胃腸症状

代表的な副作用として、食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢などの消化器症状があります。多くは内服開始後および増量後に出現します。軽度なものであれば多くは様子をみているうちに体が慣れてきて自然に軽快します。個人差がありますが、軽度の場合はおおむね数日~1週間程度で治まる方が多いようです。

症状が比較的強かったり長引いたりする場合は整腸剤や吐き気止めなどを併用することで内服を継続できることもあります。

しかし重度の場合には、胃腸薬を併用してもまったく食事がとれなくなって、全身状態が悪化することもあります。その場合は、基本的に中止します。

4-2.陽性症状

レミニールを長期にわたって服薬していると「興奮」しやすくなることがあります。その他にも過剰な感情反応で、易怒性や易刺激性、攻撃性といった症状を呈することがあります。この症状は、脳が刺激を受けやすくするレミニールの効果が過剰に表れたと考えられます。この場合は、レミニールを減量・中止します。もしくは落ち着かせる作用のあるメマリーを併用することで対応します。

4-3.徐脈・不整脈

脈が遅くなる除脈、脈が正しい間隔で打たなくなる不整脈などの副作用が報告されています。ただし、これらの症状は高齢者の場合はもともと合併しやすいため、すべてが副作用とはいえません。そのため当院では、服薬前に必ず心電図をとることで、服薬後の変化が分かるようにしています。

5.副作用以外のデメリット

レミニールの効果は、アリセプトとよく似ています。特徴はなく、積極的に第一選択として使うことはあまりありません。何よりも、この薬の難点は、一日2回服用する必要があることです。

認知症では比較的初期の段階で、服薬管理ができなくなります。具体的には、MMSEが30点満点で24点を切ってくると薬の管理ができなくなります。この段階の認知機能障害は軽度であるのですが、服薬管理は一足早くできなくなるのです。そのため、一日2回の服用はハードルが高くなります。家族が対応するにも、やはり一日1回の方が負担は軽くなります。

服薬管理のためにカレンダーに薬を貼ることも多いのですが、やはり1日2回ではカレンダーにも貼りにくいものです。家族によっては、レミニールの1日2回服薬のために、ヘルパーさんに入ってもらうケースさえあるのです。これは、経済的負担にまでつながります。

昔、レミニールを販売するメーカーさんから、『先生、レミニールを日本で一番処方する先生になってください』と頼まれたことがあります。それに対して、『そんなことをしたら、認知症患者さんの生活を理解していない専門医になってしまいます』と丁重にお断りしました。

5.処方の知恵

レミニール処方におけるちょっとした知恵をご紹介します。

5-1.MMSEの急激な悪化には最大容量まで増量

当院では、3〜4か月に1回はMMSE検査を行って認知機能を評価します。降圧剤を処方する際に、血圧を測定することと同じです。通常は、レミニールは1日量16㎎(1日に8㎎を2回)が標準です。しかし、MMSEの悪化が急激な場合などでは、積極的に最大容量の24㎎(1日に12mgを2回)まで増量します。

私の経験では増量すると3人に1人は症状の悪化が抑えられたり、改善します。

Doctor comforting patient
認知症においては定期的なMMSEによるチェックが不可欠です

5-2.陽性症状出現時にメマリー追加

レミニール1日量24㎎(1日に12mgを2回)まで増量すると1日量16㎎(1日に8㎎を2回)に比べ、易怒性、攻撃性を表しやすくなります。その際は、必要があって増量したわけですからレミニールを減量せずに、アクセル系のメマリーを加えることで陽性症状をコントロールします。

もちろん、それでも陽性症状が治まらないときは、レミニールを1日量16㎎(1日に8㎎を2回)に減量します。

5-3.1日2回投与のデメリットはあってもレミニールを使いたい場合はあるのか?

正直、認知症専門医である私個人の感想としては「ありません」。以前東京で、認知症を相当診ている医師のみが30名ほど集まった会がありました。その際にある医師が、「アクセル系としてはレミニールを使用することが多いです」と発言したところ、他の多くの医師から「その根拠は?意義は?患者さんのメリットは?」と矢継ぎ早に質問され、明確に答えられずに火だるまになっていました。

医師によっては、「アリセプトに比べると、易怒性など認知症の周辺症状にも治療効果が期待できる」という理由で、処方することもあるようです。もちろん、MMSE20点以上の方に効果的であることも事実です。現在服用されている方は、MMSEの数値を参考にしながら、治療を続けてください。

6.まとめ

  • レミニールは、抗認知症薬としてはアクセル系の作用機序です。
  • 効果的には、同じアクセル系のアリセプトやイクセロン/リバスタッチパッチに比べ差はありません。
  • 1日2回服薬が必要という点が最大のネックです。
長谷川嘉哉監修シリーズ