【お薦め本の紹介】「医療・介護産業」のタブーに斬りこむ! 日本国・不安の研究

【お薦め本の紹介】「医療・介護産業」のタブーに斬りこむ! 日本国・不安の研究

今では多くの人が、高速道路のサービスエリアの食事が驚くほど良くなったと感じているのではないでしょうか。実はこれ、元東京都知事で作家の猪瀬直樹氏が推し進めた「道路公団民営化」の成果です。そんな猪瀬氏が次に注目しているのが、日本の医療・介護業界。年間55兆円規模の巨大市場でありながら、非効率やムダ、古い仕組みが放置されている現状を、現場取材と豊富なデータでわかりやすく解き明かします。薬の過剰処方や高止まりする医療費の背景、既得権益の構造を鋭く指摘しつつ、「高収益のリハビリ病院」や「介護費削減に成功した自治体」など、希望が見える事例も紹介します。

  • 日本のGDP五五〇兆円のうちいまや一割の五五兆円が医療(四三兆円)と介護(一二兆円)である。そこで雇用されている医師や看護師や理学療養士や介護福祉士などが六〇〇万人いる。
  • 日本を代表する製造業、自動車関連の製造品出荷額は五五兆円で、自動車産業の雇用五五〇万人と肩を並べるまでに巨大化している。
  • 透析患者三三万人に年間一兆八〇〇〇億円の医療費が費やされている
  • 地方の公立病院のほとんどは地方自治体の一般財源から税金を補填することで成り立っているのが現状で、このコストは「国民医療費四三兆円」のなかにカウントされていない。
  • 国立・公立・公的病院だけでなく民間病院もすべて含めるとじつに八五〇〇もの病院が乱立している。
  • 万波医師の先端的な試みは、よってたかって否定されているうちに、医療用ロボット「ダ・ヴィンチ」の時代へと移り変わっていたのである。
  • チャレンジに多少の瑕疵があったとしても既得権益層がすぐに否定に走る、そういう体質を変えない日本であっては、医療・介護の改革もできない。
  • 介護と連携した地域包括ケアシステムを確立していくことが、わが国の医療・介護を末永く維持するために必要不可欠なのです
  • 精神病床数(人口一〇〇〇人当たり)はダントツで世界一なのだ。
  • しかも平均在院日数は一カ月以内の先進国が多いが、日本だけが九カ月と、これもまたダントツである。異様な風景である。
  • ヨーロッパで精神病院の患者数が激減できたのは、施設への収容から地域での医療・ケアへと転換してきたからだ。
  • 認知症の受け皿としてのグループホームはかなりのペースで増えているが、精神病院の出口としてのグループホームはまだ少ない。出口をしっかりさせれば、医療費削減のひとつの方向を見出すことができる。
  • 「療養費等」は五〇〇〇億円もあり、決して小さな数字ではないからだ。  主に柔道整復師にかかわる費用(一部、鍼灸師もあり)で、かつて整形外科医が足りない時代に柔道家が〝接骨医〟として整骨院の看板で仕事をしていた経緯
  • 医科診療医療費三一兆円は、国民医療費のなかで最大である。その三一兆円のうち約二兆円が精神医療にかかわる費用であり、さらにうち一兆四〇〇〇億円が精神科入院費用である。
  • 障害児の学童保育」と呼ばれる「放課後等デイサービス事業」で、この三年間で事業所数が五〇〇〇カ所から一万カ所と二倍になっている。ネットで「放課後デイ」と検索で打ち込んだらすぐに「儲かる」と予測ワードが出た。〝儲かる神話〟はかなりのスピードで浸透しているのだ。
  • いずれにしろ医療・介護費とは別建てで「障害福祉サービス等予算」が一兆五〇〇〇億円に膨らんでいる。
  • 生活保護費は、過去二十年間で倍増している。事業費ベースで三兆七〇〇〇億円(国費四分の三、地方自治体四分の一)であり、うち医療扶助費が一兆八〇〇〇億円である。
  • 問題は介護費用である。二〇〇〇年に介護保険制度がスタートしたが、当初より三倍超の一二兆円に増え、二〇二五年には一五兆円と想定
  • 介護関係者は「サ高住は、いま客(利用者)の奪い合いになっている」と口をそろえていう。サ高住はよく表現すれば規制が少なく融通がきくシステムだし、悪い見方をすれば質的な保証が弱い。客集めのために安い家賃を売りものにしているところもある。
  • 利用者に訪問介護と訪問看護、在宅診療を組み合わせることで療養病棟のようなサ高住ができてしまったりしている。そういう油断も隙もない業者の対策を考えないと介護産業は食い物にされる恐れがある。
  • ケアマネジャーは、公正かつ誠実にケアプランを作成しなければならないと介護保険法で義務付けられている。だがケアマネジャーは介護施設に所属して給与を得ている場合がほとんどなので、その施設を経営している事業者の利益を最大化するためのケアプランを作成しがちである。
  • ケアプランを一件つくると一万円ほどの報酬で、四〇件を超えると報酬単価が減額されるため大きな収入は見込めない。事務所維持費などもあるから、とても独立は維持できず、結局、どこかの施設に所属して給料をもらうしかない。法人格を別にしてあっても専属契約をしていれば独立しているとはいえない。
  • その結果、独立ケアマネジャーは一割程度でしかない。
  • 全国一八〇〇の市町村のうち、六十五歳以上の高齢者で要介護・要支援に認定されている割合は平均で一八パーセントだが、地域によって認定率に大きな差がある。低位二〇番までの平均は一一パーセントだが、高位二〇番までの平均は二六パーセントで、その差は二・四倍
  • いつの間にか訪問介護は生活援助中心になっていて、炊事・洗濯や買い物まで家事代行サービスのように利用されていた。介護保険によって民間の家事代行サービスは市場を奪われていた。
  • 医療では、急性期の入院があり、回復期はリハビリへ、となり退院へのコースが設定される。それでも長期入院や療養病床での入院漬けが起きたりしてはいるが、基本的に出口へ向かうのが医療である。
  • ところが介護は、要支援の軽い状態からサービス漬けにしてまるで重い要介護の状態へ、終点のほうへ追い込むような考え方だった。
  • 経験・技能のある介護職員の給与を月額八万円増やすと、年収で四三五万円となり、全産業水準と遜色のないレベルが実現できる。
  • 通常の経営では  売上げ-経費-人件費=利益と考えるが、  アメーバ経営では 売上げ-経費=利益+人件費としている。
  • 口腔ケアをきちんとやると入居者の誤嚥性肺炎を原因とする入院率が下がる。
  • 価格が高くレアなスーパーカー・フェラーリは、世の中の景気が上向きかける少し前から売れ始め、景気が落ち込むよりかなり早い段階で売れ行きが下がり始め、センサーのような特徴がある。
  • 風景として違和感を覚える門前薬局の繁盛振りを見るにつけ、この薬局調剤医療費八兆円についてきちんと精査してみる必要がありそうだ
  • 現在、院内処方が三割、院外処方は七割の比率である。
  • 院内で会計処理すると三二〇円、三割負担なら九六円となる。それに対して院外処方なら三四五〇円、三割負担なら一〇三五円となり、一〇倍以上の差が出る。
  • 私学の定員は二倍に膨れ上がったのである。四六あった薬学部が七〇以上にも増えている。
  • 短期間に定員が二倍に増えるのは、すでに述べたが異常である。定員割れが常態化している薬学部も少なくない。認可した文科省、黙認した厚労省、天下り先を増やすことになるとしたら無責任だろ
  • 一〇〇〇人当たりの薬剤師数は日本がダントツで世界一位である
  • 薬局従事薬剤師数は、二〇〇五年を起点に比較すると二〇一七年で一・四七倍になっている。およそ十年間で一・五倍という増加率は、すでに述べた薬学部の増設と大きな関係がある。
  • 健康関連や化粧品などの家計費支出は年間一〇万円であり、同じく調剤は一四万円なのでそれぞれが別個にやるよりはドラッグストアで一つにすれば同じ商圏で二倍のビジネスができる。
  • 日経新聞によれば市販薬と同じ成分の医療用医薬品が五〇〇〇億円以上あり、それは全額自己負担で購入すべきである、
  • 最大は主に湿布薬に使われる成分の七〇二億円、二位はアトピー性皮膚炎や肌荒れに使う保湿剤成分の五九一億円、鼻炎薬も上位。
  • ジェネリック薬への転換をサボタージュしているとしか思えない団体が一つ発見された。  どの団体も多少の差はあれど、ほぼ七割の使用割合ではあったが、医師が加入している医師国民健康保険組合の数値が極端に低い。
  • スポーツに親しむなど健康寿命を延ばす工夫をしながら働けるなら七十歳まで就労し、繰り下げの割り増しを受ける。そのほうが人生百年時代の正解ということになる。
  • シルバー人材事業は、会員を減らしながら専従職員の人件費を増やすという本来の目的と違った方向へ進んでいると断ずるしかない。
  • 二十二年前に『日本国の研究』を書いた。構造改革のテキストとして、それにもとづいて小泉内閣で道路公団民営化を実現することができた。いま新しく求められている課題を『日本国・不安の研究』としてまとめたつもりである。
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