またまた、素晴らしい本に出会いました。自分が欲する時に、それを満たす本に出会えることはとても嬉しいものです。本の名前は、海生裕明さんの『会社と社長個人のバランスシートを合算する連結バランスシート経営』です。
決算書は、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書で成り立っています。その中で、経営者がどれを重視するかは、経営者のレベルによって異なります。やはり損益計算書が小遣い帳の延長とも言えるため、気にされる方が多いようです。しかし、損益計算書は単年度を示しているにすぎません。一方、貸借対照表は、会社の歴史、誰と付き合っているか、お金お使い方、会社の未来までもを表します。そのため、本来経営者は貸借対照表を気にすべきなのです。この本では、決算書を見る比率を『意識レベルでは、損益計算書は1%、貸借対照表は49.5%、キャッシュフロー計算書が49.5%にしろ』とまで言っています。
以前から私は、『法人と個人のバランスをどのように取ればよいか?』 と疑問に思い、それに対する指標が欲しいと思っていました。その答えといえるのが、この本で紹介されている『会社と社長個人の連結バランスシート』なのです。もちろん、これはオーナー会社の多い中小企業が対象であり、大企業のような雇われ社長は対象外となります。逆に、中小企業では、連結バランスシートこそ本当の会計情報といえます。
例えば、会社と個人どちらを豊かにすべきでしょうか?答えは、まずは会社を豊かにすることです。しかし、その後は、どちらかに偏ってはいけません。
会社を犠牲にして、個人だけを豊かにする経営者は論外です。少し儲かると、個人で贅沢をする経営者がいます。しかし、連結バランスシートが債務超過になっていれば、何かあるとすぐに破たんする危険があります。経営とは、地震が起きて1年間売上がゼロでも生き残る必要があるのです。
一方、『私は個人を犠牲にして、会社を豊かにする』という社長がいるとします。美談に聞こえますが、これでは経済状況が急変した際に、個人で会社に貸し付けることができません。いざとなれば銀行も当てになりません。さらに、個人にキャッシュがないと相続の際に、速やかな経営譲渡ができません。
以上から、中小企業における経営では、連結バランスシートを使って『個人と会社のバランス』が大事となるのです。貸借対照表が理解できずに、重要性が分からない経営者にはピンと来ないかもしれません。個人の貸借対照表も作れないと、合算もできません。しかし、個人と、グループ会社の全体を合算すると、今まで見えてこなかった本質が見え、気が引き締まります。お薦めです。