先回、映画『神様のカルテⅡ』から、医師の労働条件の悪さのお話をさせていただきました。そんな時に、日本経済新聞に素敵な記事が載っていたのでご紹介します。
『赤ひげ先生』は仕組みでつくるby大石佳能子。この言葉にお思わず惹かれてしまいました。大石佳能子さんは元マッキンゼー・アンド・カンパニー出の優秀な方です。1998年に息子さんを出産した際の医療業界への違和感が、起業のきっかけだったようです。待合室で長時間待たされた揚げ句、わずか数分で診察が終わるのは当たり前。患者の診察データが病院間で共有されない。素朴な発想にプロの経営コンサルタントとしてのノウハウを合体させ、コンセプトに賛同する医療法人と組んで、2000年に世田谷区内に診療所を立ち上げられました。カルテはインターネットを通じて患者が自分で確認できる。診察データは所内で共有し、担当医が代わっても引き継がれる。そんな中で出てきたモットーが「『赤ひげ先生』は仕組みでつくる」だそうです。医師個人の能力に頼りすぎず、人数や勤務体制の工夫で負荷を減らし、事務作業は極力スタッフが分担する。素晴らしいですが、当たり前と言えば当たり前です。
多くの医療機関で、これだけ電子カルテが普及しているのに患者さんが急変したり、亡くなったりしたときに主治医しか対応できないというのは問題があります。365日、24時間いつでも主治医が来てくれるような状況は、”労働基準法違反“なのですから・・。それは、感情の問題でなく、社会のルールなのです。この点には、患者さんやご家族にもご理解を頂く必要があるのです。当院でも、約200名近くいる在宅患者さんについては、あえて主治医制は取らず二人で見ています。訪問診療も交互に行くことで、急変時にも両者が対応できます。もちろん情報は電子カルテで共有化されています。ある意味当院でも、「『赤ひげ先生』は仕組みでつくる」を実践しているといえるのかもしれません。