認知症の高齢者が起こしたJR事件・・主治医の責任は?

2016-03-11

2007年12月、愛知県大府市のJR共和駅で起きた、
徘徊中に死亡した認知症患者さんの事故の判決が出ました。
『認知症の高齢者が起こした事故の責任を、家族が必ず負うわけではない』
という判決には、現場としては安堵しました。

新聞記事だけでなく判決文を詳しく読むと
記事では扱われていない疑問がわいてきます。
患者さんは84歳で認知症を発症
86歳で要介護度①が認定
その後、入院を契機に認知症が悪化、
要介護度が②となり、週6回デイサービスを利用
さらに認知症は進行し、
89歳時には、周辺症状として徘徊、介護への抵抗が出現。

このケースは、典型的なアルツハイマー型認知症の経過です。
記憶障害を主とする中核症状が進行し
周辺症状が出現しています。
この段階では、よほどの介護力がない限り、
自宅での介護は困難です。
しかし、このケースでは夫婦二人暮らしで、
子供たちは同居していません
乏しい介護力で、在宅介護が困難な患者さんを診ていたのです。


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専門医であれば
徘徊・介護への抵抗といった周辺症状に対して
薬でのコントロールを試みます。
私の経験では、2/3はコントロールすることができます。
しかし周辺症状のコントロールができない場合は、
専門医として在宅介護継続に対して、
ドクターストップをかけます。
通常の介護施設で受入れ困難な場合は、
精神科病院へ紹介します。
以上のような基本的な対応をすれば、
1人しかいない配偶者がウトウトした一瞬に
患者さんが徘徊して、列車事故を起こすことはあり得ません。

そんな疑問を持って今回のケースを検討すると。
裁判で全く登場しないのが、患者さんの主治医です。
適切な対応ができていない点からすると
“認知症の専門医ではない”と推察されます。
しかし専門でないといって、責任が回避されるのでしょうか?
もし私の患者さんが、消化器系の異常を訴えれば
専門外であっても専門医に紹介する義務があります。
それを怠れば、当然ながら責任を問われることになります。
認知症患者さん462万人の時代、
非専門医でも最低限の知識は持っていただきたいものです。

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