脳神経内科専門医が伝える、デパス(一般名:エチゾラム)の使い方

脳神経内科専門医が伝える、デパス(一般名:エチゾラム)の使い方
2018-11-21

デパス(一般名:エチゾラム)という薬があります。外来では、睡眠薬もしくは、抗不安薬として処方します。適切な量を守って処方すると、睡眠薬としては安全で使いやすい薬です。一方で、抗不安薬として使用する場合は、習慣性がつきやすく、処方量も増えがちになります。

そのため、デパスを服薬している方は、どこかで「不安」を持たれているのではないでしょうか? デパスは、上手く利用すればとても安全で有用な薬です。今回の記事では、脳神経内科専門医の長谷川嘉哉がデパスの適切な使用方法についてご紹介します。

1.デパス(一般名:エチゾラム)とは

Pills in woman hands.
睡眠薬としても抗不安薬としても処方されることがあります

デパス(一般名:エチゾラム)は、1984年に発売されたベンゾジアゼピン系に分類される抗不安薬・睡眠薬です。気持ちを落ち着ける効果だけでなく、催眠作用も期待できるお薬です。筋弛緩作用も強いため、肩こりなどの筋緊張を和らげる目的でも使われています。

ただし私の考えでは、睡眠薬として1日1錠を使用することが大部分です。抗不安薬や肩こりに対して、1日2~3回の処方については、副作用の観点からあまり使用していません。

その副作用のためか、30日を超える長期投与ができていたデパスが、2016年11月から30日分を限度とされる内服薬になってしまいました。私は、睡眠薬等の副作用の際には、最初に呼ばれる脳神経内科専門医ですが、デパスを適正量、眠剤(睡眠)として服薬している患者さんにこの副作用で呼ばれたことはありません。

2.デパスの作用と特徴

デパスには以下のような特徴があります。

2-1.血中半減期が短い

血中半減期とは、服薬したの血中濃度が半減するまでの時間をいいます。おおよそ効果が薄れ、身体の中からも薬が排泄されるタイミングと考えてください。つまり、血中半減期が短いということは、薬の効き目が短いことを指します。反対に、血中半減期が長いということは、薬の効き目が長いことを指すのです。

その点でいうと、デパスの半減期は6.3時間です。睡眠薬として使用する場合は、寝る前に服薬すれば起床時には殆ど身体から薬が排泄されているのです。

2-2.抗不安作用がある

人間は、脳内の一部が過剰に興奮することで、不安、緊張、不眠などの症状が現れます。そんな時には、脳内のベンゾジアゼピン(BZD)受容体を刺激することで、不安が収まったり、催眠・鎮静作用を呈することが期待できます。デパスは、BZD受容体に結合しこの受容体を刺激することで、抗不安作用を発揮します。

2-3.筋弛緩作用

デパスは、脊髄反射を抑えることで筋肉の緊張を緩める作用もあります。そのため、肩こりや体のこわばりが認められるなど、筋肉の緊張が高まっているときには効果が期待できます。腰痛症や緊張性頭痛の治療薬として使われることもあります。

3.デパスの睡眠薬としての特徴とは

私は、睡眠薬としてはデパスが第一選択です。理由としては以下になります

  • 最高血中濃度になるには、3時間ほどかかるのですが、急激に血中濃度が高まるために患者さんの実感としては即効性を感じます。そのため、不安感が伴って寝付きに時間がかかるような患者さんには適切です。
  • 半減期が6時間程度ですから、服薬してから起床時には身体の中から薬は殆ど排泄されています。そのため、起床時に眠気が残るような副作用が少ないのです。
  • 筋弛緩作用が強いため、睡眠効果とともにマッサージ効果が期待できます。そのため、初めて睡眠薬を服用する患者さんにも使用しやすい薬です。
Senior woman having sleep disorder
疲れているのに眠れない、ときなどは適正量を守れば優秀なお薬です

4.デパスの抗不安薬としての特徴とは

デパスの半減期の短さは、睡眠薬として使用する場合は、メリットに働きます。しかし、抗不安薬として使用する場合は、効果を持続するためには、1日3回使う必要があります。また、即効性があることは、習慣性につながります。その結果、処方量が増えることにもつながります。

そのため、漠然と使い続けるとお薬がやめられなくなることがあります。その上、減薬すると離脱症状が生じてしまい、お薬を中止するのが難しくなってしまうこともあります。

*離脱症状:薬物およびアルコールなどの嗜好品を、中止や減量した際に生じる様々な身体的・精神的症状のこと。禁断症状とも呼ばれる。


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不安作用が強くて、デパスの処方が増えがちになる場合には、くれぐれも内科ではなく精神科の受診を検討してください。

Doctors and patients sit and talk. At the table near the window in the hospital.
日中も依存を感じたら早めに精神科に相談しましょう。他の薬を提案されるかもしれません

5.デパスの安全な使い方

デパスは、決して危険な薬ではありません。以下に注意して使用してください。

5-1.寝る前に0.5㎎を1錠を守る

即効性、半減期の短さ、筋弛緩作用の強さから、睡眠薬としてはとても安全な薬です。1日1回であれば習慣性もほとんど生じません。ただし、量は0.5㎎を守りましょう。デパスには1㎎錠もありますが、量が増えれば副作用も生じやすくなります。

5-2.抗不安薬として1日3錠は、認知症様症状に注意

認知症外来に初診で受診される患者さんの中には、デパスが1日3錠処方されている患者さんもいらっしゃいます。この場合、デパスを徐々に減量すると、離脱症状もなく中止でき認知症の症状が改善されることもあります。

つまり、デパスの副作用により認知症様の症状を呈することがあるといえるでしょう。

5-3.他科との重複処方に注意

筋肉の緊張を和らげる作用もあるエチゾラムは、頭痛や腰痛、肩こりなどにも処方されます。そのため、異なる医療機関から重複して処方されることがあります。デパスが、重複処方される診療科で最も多いのは、内科と整形外科の組み合わせです。内科では不眠などの症状、整形外科では腰痛や肩こりなどに対して処方されることがあるのです。

特に、一方が先発品、他方が後発品(ジェネリック錠)の場合は、薬品名は異なっても同じデパスであることがあるので薬剤師によるチェックも重要となります。

6.デパスのジェネリック錠

デパスは、1984年に発売されました。発売から10年経過しているため、デパスのジェネリックは、この特許が切れた後に発売となりました。当初は、様々な名称のジェネリック医薬品が発売されていました。医師としては、山のように出てくるジェネリック名を記憶することは不可能に近いものでした。そのため、近年は薬の一般名をつけることに統一されてきています。ですからデパス錠のジェネリックとしては、エチゾラム錠となっています。

ちなみに、かつては、

  • パルギン錠
  • メディピース錠
  • エチセダン錠
  • エチカーム錠
  • セデコパン錠

などが発売されていました。これらはすべて、エチゾラム錠となっています。デゾラム錠のみ、独自の名称で発売が続いています。(2018年10月現在)

ジェネリック医薬品では、多くの製薬メーカーが製造販売していますが、薬の有効成分は同じとされています。しかし、現実には、薬の製造方法や製剤工夫が会社によって異なるため、それぞれが微妙に異なることが事実です。そのため、患者さんによっては、ジェネリックに変えたことにより、効果に違いを感じる方はいらっしゃいます。その場合、先発品を使用してもらうことになります。

7.まとめ

  • デパスは、抗不安作用と睡眠作用があります。
  • 睡眠薬として1日1回眠前に、1錠0.5㎎であれば副作用も少ない、とても良い薬です。
  • 筋弛緩作用により整形外科から処方されることもありますので、ジェネリックも含め、重複処方に気をつけましょう。
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