口内炎・医療機関を受診せずに治す方法と重病との区別を医師が解説

口内炎・医療機関を受診せずに治す方法と重病との区別を医師が解説

先日、睡眠不足、ハードワーク、暴飲暴食が続いた際、舌の先に口内炎ができました。口内炎の病変は小さくてもとても不快です。幸い医学的知識を総動員して、安静、軟膏、ビタミン剤の摂取で数日で改善しました。実は多くの口内炎は、医療機関に受診しなくても、薬局で市販されている軟膏や飲み薬で対応が可能です。但し、口内炎が治りにくいときには特殊な病気が隠れていることもあります。

今回の記事では、総合内科専門医の長谷川嘉哉が、口内炎について市販薬での対応方法、それでも治らない場合に医療機関受診を勧めるポイントをご紹介します。

目次

1.口内炎とは?

Canker sore on woman upper lip
口のなかにデキモノ(水疱や潰瘍)ができる疾患です

口内炎とは、口の中や周辺の粘膜に起こる炎症の総称です。具体的には、口腔内や口唇、舌の粘膜に炎症が生じ、水疱やびらん(ただれ)、潰瘍、白苔(はくたい)などの粘膜病変が起こります。その結果、口の中が荒れて、痛みや出血、食べ物が飲み込みにくくなるなどの症状があらわれます。

病変も数個であれば、痛みを我慢しながら食事摂取も可能です。しかし、私は20年ほど前に風邪気味なのに無理をして、雨天の中ゴルフをしたことがあります。その際には、口の中に無数の口内炎ができて、水分以外何も食事がとれなくなりました。口腔外科の先生に診察してもらったところ、「かなりひどいです。入院されますか?」と言われました。入院後の対応を聞いたところ、「キシロカインゼリー(表面麻酔薬)を含んで、麻痺しているうちに食事をとってもらいます」と言われ、丁重にお断りしました。重篤になるとそうするしかなくなることもあるのです。幸い数日で完治しましたが、無理をしたことを深く反省しました。

2.口内炎の原因は?

口内炎の原因はみなさんが思っているよりさまざまかもしれません。

2-1.アフタ性口内炎

もっとも頻度が多いのが「アフタ性口内炎」です。アフタ性口内炎にかかると、2~10mm程度の丸くて白い潰瘍が、ほお・唇の内側・舌・歯ぐきなどに発生します。小さなものが2~3個群がって発生することもあります。普通は10日~2週間ほどで自然に消滅してあとは残りません。

原因ははっきりわかっていませんが、ストレスや疲れによる免疫力の低下、睡眠不足、栄養不足(ビタミンB&Cの欠乏)などが考えられています。私が、睡眠不足、ハードワーク、暴飲暴食の末になったのもこのタイプです。

*潰瘍:皮膚や粘膜や眼球などを覆う上皮組織が欠損しその下層の組織に至った状態。

2-2.カタル性口内炎

歯の詰め物、入れ歯、矯正器具が接触したり、ほおの内側を噛んでしまったりしたり、熱湯や薬品の刺激などが原因で起こる口内炎です。口の粘膜が赤く腫れたり水疱ができたりします。アフタ性とは異なり、境界が不明瞭で、唾液の量が増えて口臭が発生したり、口の中が熱く感じたりすることもあります。また、味覚がわかりにくくなることもあります。

繰り返す場合は、歯科医による調整も必要となります。

2-3.感染性口内炎

口内炎は、ウイルス、細菌、カビ(真菌)が原因でも起こります。

民間では「風邪の吹き出し」「風邪の華」とよばる単純ヘルペスウイルスの感染が原因の「ヘルペス性口内炎」は、体力が低下した際に、主に唾液などの接触感染や飛沫感染によって感染します。ウイルス性口内炎に多くみられる多発性の口内炎は、口の粘膜に多くの小水疱が形成され、破れてびらんを生じることがあり、発熱や強い痛みが伴うことがあります。

ほかにも梅毒・淋病・クラミジアなど、性感染症(STD:Sexually Transmitted Diseases)による口内炎が知られています。

またカビ(真菌)の一種であるカンジダ菌は、もともと口の中に存在する常在菌のひとつですが、免疫力が低下したりすると増殖し、「カンジダ性口内炎」を発症することがあります。

2-4.その他

アレルギー反応の原因となる、特定の食べ物や薬物、金属が刺激となる「アレルギー性口内炎」、喫煙の習慣により起こる「ニコチン性口内炎」などもあります。ニコチン性口内炎の場合は、口の中の粘膜や舌に白斑ができ、がんに変化するおそれもあります。

3.口内炎ができる部位

口内炎は、唇の裏や、舌、のど、歯ぐきなど、できる場所はさまざまです。

歯ぐきにできたものは「歯肉炎」、舌にできたものは「舌炎」、唇の裏などにできたものは「口唇炎」、口角にできたものは「口角炎」と呼ばれます。患部は潰瘍になったり水疱になったりします。

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口、舌、咽頭に関わる部分に発生します

4.口内炎の悪化要因

口腔内は、食事、呼吸、しゃべる際に常に外部と接しています。そのため、細菌・ウイルス・ほこりなどが付着・侵入する可能性の高い部分です。一方で、鼻や喉ともつながっている重要な器官であるため、さまざまな粘膜で覆われて防御されています。そのため、健康であれば多くの場合こうした微生物に感染することはありません。
しかし、風邪や疲れなどで免疫力が低下していると、侵入した微生物に感染し炎症を起こしやすくなります。口内炎はまさに、普段の生活を見直すきっかけになるのです。

まさに私自身、「風邪気味での雨天ゴルフ」、「睡眠不足&ハードワーク&暴飲暴食」には深く反省しています。


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5.薬局で購入できる治療・対策

多くの口内炎は、病院に受診しなくても、市販薬で対応できてしまいます。Amazonの広告を利用して紹介します。

5-1.軟膏

  • トラフル軟膏PROクイック:従来はケナログ口腔内軟膏を処方していました。しかし、製薬メーカの都合で医師の処方は2019年3月末日で販売中止となります。薬局で購入できる物は、すでに2018年6月発売中止で在庫限りで終了となります。これらの代替品としては、医療用はケナログのジェネリックである、オルテルクサー軟膏。薬局で購入できるものは、トラフル軟膏PROクイックになります。但し、口腔の病変に塗るだけなので、しばらくすると流れてしまいます。そのため、何度も塗りなおす必要があります。そのため、実は塗るタイプより貼るタイプのほうがお薦めです。
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  • 口内炎パッチ大正クイックケア:これは患部に貼るタイプなのではがれにく、1日に1-2回貼るだけで対応できます。

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5-2.ビタミン摂取

偏った食生活、暴飲暴食などによるビタミン不足で、口内炎が発生することがあります。特に、皮膚や粘膜の健康維持を助けるビタミンB2・B6・Cが不足すると、口内炎になりやすくなります。緑黄色野菜の摂取に気を配り、バランスのよい食生活を心がけましょう。

といっても食事だけでは難しい場合は、サプリメントとしてビタミンB2・B6・Cを補うこともお勧めです。サプリメント購入の際は、何種類も混ざったマルチビタミン剤はお勧めでありません。これらは、何種類も混ざっている分、個々のビタミンの含有量が低くなりがちです。その上、かえって値段も高めです。

お勧めは、ビタミンBミックスとビタミンCの単独購入です。ビタミンBの場合は、B1,B2,B6は混ぜっているもので問題ありませんその方が値段も安く、含有量も多くなります。ちなみに、私が服用している、ビタミンBミックスとビタミンCは以下のものです。(値段が安すぎるため、合わせ買い対象となっています。何かを購入する際の購入がお勧めです)

【ビタミンB群】

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【ビタミンC】

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5-3.安静・睡眠

風邪や疲労などで体力が低下していると口内炎になりやすくなります。ストレスや疲れを感じたらゆっくり休み、規則的な生活を心がけましょう。

5-4.口呼吸に注意

口の中が乾くと粘膜の免疫力が低下し、口内炎になりやすくなります。水分の摂取で口の中をうるおしたり、あめやガムなどで唾液を分泌しましょう。口呼吸をしたり、無意識に口を開けている癖のある人は、口の中が乾燥しやすく、雑菌が繁殖しやすくなります。口呼吸のデメリットについては以下の記事も参考になさってください。

6.2週間以上口内炎が治らないとき、ごくまれに疑う重篤な疾患

口内炎は、通常であれば2週間ほどで治ります。ただ、なかなか治らない場合は以下の疾患も鑑別する必要があります。外来で「2週間以上、口内炎が治りません」と言われると、医師の脳内では以下の可能性も少しはよぎるものです。主に以下の3つの可能性を否定する検査をしていきます。

6-1.口腔がん

口の中にできたがんを口内炎だと思って放置してしまうことがあるので注意が必要です。口腔がんには、「自然に治癒することがない」、「赤い部分と白い部分が混在している」、「硬く、でこぼこしている」という3つの特徴があります。なかなか口内炎が治らず、3つの特徴がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

6-2.ベーチェット病

ベーチェット病は、ほぼ100%の確率で口腔内粘膜にアフタ口内炎ができます。同時に、陰部(男性では陰茎から陰嚢、女性では外陰部から膣内)にも潰瘍が出現します。皮膚には結節性紅斑(1~数㎝大に赤く腫れる)や毛膿炎(にきび)様の皮疹が、眼には前眼部や網膜などにぶどう膜炎を合併します。これら4つの症状を主症状とし、急性の炎症発作を繰り返す疾患です。

つまり、口内炎以外の症状も伴う場合は、ベーチェットを疑う必要があるのです。

6-3.白血病

体の異変が口内炎となって現れることがあります。免疫がうまく働かない病気にかかると、いつもは悪さをしない菌やウイルスなどが口内炎の原因になります。白血病の初期症状において口内炎は代表格です。口内炎のただれた潰瘍の部分が深い場合は疑うこともあります。外来では、通常の採血に、血液像を加えることで容易に否定することが可能です。

7.まとめ

  • 口内炎は、生活の乱れで起こります。普段の生活を見直すきっかけにしましょう。
  • 予防のためには、緑黄色野菜の摂取に加え、ビタミンBおよびCのサプリメントによる摂取もお勧めです。
  • 口内炎が、2週間以上にわたって治らない場合は、医療機関を受診しましょう。

 

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