専門医療から放置される脳梗塞患者さん

専門医療から放置される脳梗塞患者さん

私の専門とする脳神経内科は、脳血管障害、認知症、パーキンソン病等を専門としています。これらの患者さんは超高齢化時代のなか急増しています。しかし、脳神経内科の専門医の数は6,500名程度と他の専門医に比べあまりに不足しています。

特に、脳梗塞は、以前は日本では死因第一位でしたが、現在では1位の癌、2位の虚血性心疾患に次いで3位になっています。そのため皆さんの関心が少なくなっている疾患でもあります。しかし脳梗塞を含む脳血管障害の患者数は年間111万人と決して少なくない数です。見方を変えると、亡くなる方は減っていても、後遺症を残して生存する患者数は多いといえるのです。

そんな脳梗塞患者さんですが、発症からいろいろな段階で放置されています。今回の記事では、脳神経内科専門医の長谷川が放置されている脳梗塞患者さんについて解説します。

目次

1.急性期に放置される

いまだに専門外の先生方の中には、「脳梗塞は点滴をつないでおくだけ」と考えている方もいらっしゃいます。最近ではカテーテル治療も進んでいますし、点滴の中に入れる薬剤も良いものが開発されています。患者さんの症状や頭部MRIやMRAからの情報を総合して最適な治療を選択するところこそ専門医の腕の見せ所です。

多くの脳血管障害は突然発症します。その場所、時間帯によっては脳神経内科専門医のいない医療機関に運ばれる可能性も高いのです。できれば健康な時期から、自分の住んでいる地域の基幹病院に脳神経内科専門医がいるか、夜間休日はどの医療機関にかかればよいか調べておくことがお薦めです。

そして発症後は1日でも早くリハビリを開始する必要があります。急性期の治療を行いながら、できるだけ早い時期からのリハビリをおこなう。このあたりの連携も専門医がいるか否かで変わってきます。

2.慢性期リハビリで放置される

通常1か月前後の急性期治療を終えても、片麻痺などの運動機能障害が残ると慢性期リハビリテーション病院に転院します。この場合も、急性期病院の医師によっては、慢性期リハビリの提案もせずに、そのまま自宅に退院させてしまうこともあるのです。

そのため、いきなり退院させられそうになったら、すぐに慢性期リハビリテーション病院への転院を主治医もしくはケースワーカにお願いしましょう。脳血管障害であれば、発症日から5~6か月はリハビリが可能です。この時期のリハビリは二度と行うことのできない大事なリハビリ期間なのです。


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3.残りの人生も放置される

発症から5-6か月経つとさすがに入院でのリハビリは保険がきかくなります。国の考えでは、ここからは地域で介護保険等を使ってくださいということになります。リハビリは生涯続ける必要があります。何しろ、リハビリは良くするだけでなく、維持することも大事だからです。しかし、これらは完全に地域に任されており、十分なリハビリができない地域が大部分です。

そんな中で岐阜県土岐市では、ブレイングループが積極的に訪問リハビリ、リハビリのできるデイサービスを行っています。週2回の訪問リハビリ、週2回のリハビリデイを使えばかなり改善維持できる成果を上げています。私自身、人口6万人程度の地域を変えることはできますが、日本全体を変えるには力不足のようです。

4.常日頃もできれば専門医によるフォローを

急性期から5-6か月経って、自宅に帰ってきても専門医でないクリニックにかかると不利益なことも多くなります。とくに社会資本について熟知していないと、以下が漏れていることが多いです

  • 身体障害者手帳:さすがに片麻痺に対して身体障害者手帳が交付されていないことは少ないのですが、体幹失調に対しては、殆ど漏れています。当院に転院して体幹失調で3級をつけて医療費が無料になり喜ばれる患者さんが多くいらっしゃいます。
  • 障害年金:65歳未満の方であれば、適切に申請する必要がありますが、全国規模でもかなりもらい忘れの患者さんがいらっしゃいます。自分も大学病院から転院されて、障害年金の申請がされていなかったケースがありました。
  • 特別障害者手当:とくに寝たきりになった場合にもらい忘れが多くなります。「身体障害者1級でないともらえない」と勘違いしている医師がいますが、診断基準が違います。身体障害者手帳2級でも、受給できるときは受給できます
  • 介護認定・・脳血管障害の患者さんの介護認定の申請も注意が必要です。運動機能にばかり目が行ってしまいますが、経過中に認知症を合併すること多々あります。この場合、認知症についても記載することで介護度を上げることができます。

5.専門医による水素吸入療法も

脳血管障害がおこると血管が詰まったり、破れることでその先の神経細胞が虚血状態になり、大量の活性酸素が発生します。この際に水素吸入療法を行うと、活性酸素を除去して脳血流を改善させます。実際、心肺停止の患者さんに酸素と水素を同時に吸入すると、生命予後から後遺症も著名に改善する報告がされています。脳神経内科専門医である私の意見では水素吸入療法は将来的には脳血管障害の治療法として広く利用される可能性があると考えています。なお、私自身の22歳の三女の脳塞栓を救った水素吸入の話については以下を参考になさってください。

6.まとめ

  • 脳梗塞を診察する脳神経内科専門医は全国6500名しかいません。
  • 急性期治療から慢性期治療に至るまで専門医の診察を受けられない患者さんもいらっしゃいます。
  • 水素吸入療法が将来的に脳血管障害の治療法として広く利用される可能性があります。
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