三つ子の魂百までという諺があります。辞書的には、「幼時の性質は一生変わらないものだということ」です。これは認知症専門医としても的を得ています。出生時の脳の神経細胞の数は、成人とほぼ変わりません。しかし、それぞれの神経細胞は全くネットワークを形成していません。生命を維持する最小限以外は、ほとんど未発達の状態といえます。ところが、生まれた瞬間から、外界からの強い刺激にさらされるようになります。光・音・におい・暑さ・寒さ・感触などです。その中でも、両親をはじめ家族によるコミュニケーションは重要です。未発達の状態で生まれますが、そうした刺激や環境に適応しようと、脳が活発に活動し始めます。
結果として、3歳くらいで脳の神経細胞のネットワークの80%が完成されるのです。これが「性格形成の原点」と言われる理由です。皆さんは大人になって、自分でものを考えて行動していると思っていませんか?実は、自分を生んで育てた家族・環境によって作られた神経細胞ネットワークで考えているにすぎないのです。
江戸しぐさの中にも、「三つ心、六つ躾、九つ言葉、文(ふみ)十二、理(ことわり)十五で末決まる」と言って、稚児の段階的養育法を考えて、全人教育を実践していました。特に「三つ心」は、“3歳までに心の豊かさを教えなさい。生まれた時は心と体がまだ繋がっていないので、一日一日、心の豊かさを磨いてあげて、心と体を繋いであげる。そうして、豊かな心に従った善い行い、感情豊かな表情のできる子が育つ。” と意味されます。
同様に英語でも、The child is father of the man 直訳すると『子どもは大人(人類)の父である』という言葉で、『三つ子の魂百まで』と同じ意味の諺が語り継がれています。やはり幼少の教育は大事なようです。