岐阜県多治見市で特別養護老人ホームが余っている?

岐阜県多治見市で特別養護老人ホームが余っている?

自宅での介護が不可能になってきて、最初に検討する施設は特別養護老人ホーム(以下、特養)ではないでしょうか? 介護保険が使えて費用が安く抑えられるなどのメリットがあり、多くの方が希望される公的施設です。

そのため人気があるために、特養は一時、入所に3年待ちと言われていました。しかし最近では特に地方で空きが見られています。日本経済新聞でもその問題が取り上げられていました。今回の記事では、ケアマネ資格をもつ認知症専門医である長谷川嘉哉が「特養が余っている問題」について解説します。

1.「余る」特養、存続に黄信号by日本経済新聞

2024年1月28日の日本経済新聞では以下の記事が紹介されました。

長期間の入所待機が当たり前だった特別養護老人ホームの状況が変わりつつある。全国の入所待機者の減少が続き、地方で空室が目立ち始めた。人口減社会を迎え、高齢人口の増加ペースが過疎地中心に落ち着いてきたことなどが要因だ。

特養は主に地方自治体や社会福祉法人が設置し、介護保険を活用できるため民間の老人ホームより費用負担を抑えられるなどの理由で入所希望が多い。厚生労働省によると、待機者は2022年度で約25万3000人で、最多は東京都の約2万1400人、最少は徳島県の約1200人だった。

直近のピーク時の13年度(約34万5000人)と比べると、全国の待機者は27%減った。大都市ではなお待機者が多いものの、空室が出るまで長期間待っていた状況が変わりつつあることがデータから読み取れる。

市区町村を対象にした23年の厚労省調査によると、特養の稼働状況(複数回答)について、44.9%が「基本的に全ての施設で満員」と回答した。一方で空室に関しても「施設によっては空きがある」(10.8%)、「時期によっては空きがある」(7%)、「常に空きがある」(2.1%)と一定割合を占めた。

特養の待機者が減少し、空室が出る理由には、過疎地を中心に75歳以上の高齢者の増加ペースが遅くなっていることが挙げられる。民間の介護付き有料老人ホームや認知症グループホームなどの整備が進み、居住先の選択肢が多様化していることも要因だ。

2.岐阜県多治見市の特養は余っている?

基本的には、都心部には高齢者が多いため、定員に対して希望者が多いという状況は変わりがありません。しかし、地方によっては市町村による特養の整備状況によりかなりの差があります。実際、当院がある岐阜県土岐市と隣接する多治見市ではかなり状況に差があります。

岐阜県土岐市の人口は約6万人に対して多治見市の人口は約11万人と約2倍の違いがあります。しかし、特養の数は土岐市3か所に対して、多治見市は9か所と約3倍です。そのため、最近では介護度3以上の要介護者の取り合い状態になっており、待機期間も1年どころか半年程度です。

この状況は多治見市に特有ですが、周囲の市町村も多治見ほどでないですが以前の3年よりは明らかに待機日数が減って言います。

3.特養の待機数の減少は、他の入所施設をつぶしてしまう

特養の待機者が減っても、入居費が安くて、介護力のある特養がつぶれることはまずありません。それよりも、民間の介護付き有料老人ホームや認知症グループホームの経営が悪化しています。何しろこれらの民間の施設は、入居費が最低でも15~20万円かかります。


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一方で特養は、高くても15万円、年金等が少なければ減免制度で10万円以下の費用負担で済みます。民間の施設には減免制度がありませんから、多くの方が特養に入りたいのです。

実際、多治見市では民間の介護付き有料老人ホームはガラガラ、私個人にも銀行から買い取りの相談を受けるほどです(もちろんお断りしますが)。全国チェーンのグループホームでは、どれだけ営業しても入居者が集まらず、さらに介護度が3になった入所者は特養にかわっていく状態なのです。

4.淘汰は悪い事ではない

民間の施設がつぶれていくことは悪い事ではないと思っています。

4-1.理念のない事業所は撤退していく

民間介護事業には、「介護は儲かるから」といった思いだけで参入している業者がたくさんいます。そういった事業所は、劣悪な環境でも平気です。それでも入居施設が足りない時代は、入居する人もいました。私が知る事業所も、あまりの経営者のひどい態度に、「この社長のいる施設には絶対に入居させたくない」と入所の契約で断られた方もいらっしゃいます。こんな事業所は淘汰される方が、世の中のためなのです。

4-2.特養は経営状況も安定

特養の経営は、地方自治体か社会福祉法人に限られ、公共性と高齢者の生活環境を維持するために税制面で優遇されるなど、安定した経営のための措置が取られています。家族や患者さんにとっては毎月の費用が安く抑えられるにも関わらず、施設が倒産するリスクがほとんどないため安心です。

5.最後に残るのは特養と老健とグループホーム

結局、あと10年もすれば介護施設で残るのは特養と老健とグループホームだと思います。介護度が2までの軽い方で認知症の患者さんはグループホームに入所。認知症がなくて介護度2までの方は老健。グループホームと老健で全身状態が悪化して介護度が3以上になれば特養に入所すればよいのです。つまり他の住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅は特別に豪華であるか、医療度が高くても対応できるなどの特徴がない限り存在理由がなくなるのです。

仮に現在、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅に入居していても介護度が3以上になったらすぐに特養に申し込みをすることがお薦めです。

なお老健については以下の記事も参考になさってください。

6.まとめ

  • 特養は、全国的に待機期間が短縮しています。
  • 存在意義のない入所施設は淘汰されますが、これは良いことです。
  • 現在、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅に入居していても介護度が3以上になったらすぐに特養に申し込みをすることがお薦めです。
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