費用が安いため人気のある特別養護老人ホーム(特養)。40万人近い「入所待ち」が社会問題になっています。最近、私の外来患者さんで相次いで、特養の付属のショートステイで待機をしている人が増えています。ショートステイにいる間は通院されるのですが、かなり長い間この状態が続きます。そして、半年近くなるとようやく特養に入居できるのです。しかし、この実態には問題があります。今回の記事では、ケアマネ資格をもった認知症専門医である長谷川嘉哉がロングショートステイでの特養待ちについて解説します。
目次
1.ロングショートステイとは?
そもそもショートステイとは、短期間だけ施設に入所して食事や入浴などの介護を受けることができるサービスのことです。例えば、介護者が冠婚葬祭で出かける際や、日々の介護負担軽減のために使います。ショートステイの目的はその名の通り、ショート=短期間、ステイ=滞在を想定しているサービスといえます。
そんなショートステイを本来想定されている利用とは異なって、長期的に利用するケースをロングショートステイといっています。ただし、ロングショートステイは、あくまで介護者の在宅介護がむずかしいなどやむを得ない理由がある方に限定されます。また、期間も介護認定期間の半数を超えてはいけない(介護認定期間が365日の場合、182日まで可能)といった制限がありますが、実態は市町村の判断になるため、それ以上利用できている方もいます。
2.ショートステイの経営のため?
多くの特養は一部をショートステイにしています。しかし、ショートステイを本来の短期の利用者ばかりにすると、無駄な空きが出ます。例えば月曜から木曜の利用者がいて、土曜から日曜の利用者がいれば、金曜日が空いてしまいます。また、予定していた方が入院でもすれば長期間の空きとなってしまいます。その点、ロングショートステイであれば無駄なくベッドを埋めることができます。
3.特養に入れたと思ったら
その結果、ショートで特養待ちをさせている施設が増えています。家族としては、特養に入れたと喜ばれますが、実は半年はショートステイで生活していることが多いのです。
4.ショートステイで特養待ちの問題点
ショートでの特養待ちには以下のような問題点があります。
4-1.ADLの低下
あくまでショートは短期利用を目的としているため、レクリエーションなどが不十分です。放置されがちになり、日常生活動作が低下し認知症が悪化することさえあります。
4-2.費用が高い
特養の費用が安いことは魅力ですが、ショートステイの利用料は高額です。1か月入所していれば多くは15万円は超えます。高くても特養入所までと、多くの方が我慢しているのです。
5.本来のショートステイ利用者には迷惑
ロングショートステイの利用者が増えると、本来の目的に沿った短期的な利用を検討している人が利用できなくなります。実際、外来で患者さんを介護しているご家族が、希望通りショートステイが利用できないケースが増えています。
6.まとめ
- 最近、本来の目的とは異なるショートステイのロング利用をするケースが増えています。
- ロングショートステイは、要介護者さんのADLの低下、介護者さんの費用負担の増につながります。
- ロングショートステイの利用者が増えると、本来の目的に沿った短期的な利用を検討している人が利用できなくなります。