認知症患者さんが入浴を嫌がる理由と対策を専門医が解説

認知症患者さんが入浴を嫌がる理由と対策を専門医が解説

認知症患者さんが、入浴拒否することはよくあります。もともと風呂好きであった方でも、入浴嫌いになるから不思議です。患者さんが入浴をしないと、ご家族がとても心配されます。ですが、入浴拒否は認知症患者さんではとてもよく見られる症状とまずはご理解ください。

そもそも、私は多くの入浴拒否の患者さんを診てきていますが、入浴拒否で病気になった方はいらっしゃいません。そもそも高齢になると、入浴をしなくてもそれほど汚れません。今回の記事では、認知症専門医の長谷川嘉哉が入浴を嫌がる認知症患者さんの理由とその対策を解説します。

1.入浴拒否とは?

入浴を嫌がるのは認知症の人によくみられる状態です。 毎日入浴をしていた人が、突然「お風呂に入りたくない」と入浴拒否をするようになるのです。

1-1.2年間はいらなかった人も

私の経験では、最長で2年入浴をされなかった患者さんがいらっしゃいます。しかし、皮膚炎になるわけでもなく、その他の内科的な病気にもなりませんでした。どちらかというと、顔色も良く元気なほどでした。この方の例を出すと、そのほかの多くのご家族が「うちはまだ大丈夫」と安心されます。

1-2.「あー言えばこう言う」で入らない

このような患者さんは、ご家族がどれだけ促してもいろいろな理由をつけて入浴されません。「今日は風邪気味」「疲れたから早く寝る」「怪我をした部分が痛い」など、まさに「あー言えばこう言う」です。最後には、ご家族も呆れてしまい、諦めざるを得なくなります。

1-3.それほど臭いも感じない

幸い、高齢になるとそれほど身体も汚れないようです。先ほどの、2年間入浴しなかった患者さんも、ご家族に言われるまで気が付かないほどでした。もちろん最低限として、下着は替えてタオルで体は拭いていたようですが…。

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お風呂に入らなくても、日常を送ることはできます

2.なぜ入浴拒否をするか?

認知症の患者さんは、なぜ入浴を拒否するのでしょうか?

2-1.面倒くさい

入浴には様々な段取りや手順が必要です。特に、服を脱いだり着たりが難しくなる着衣失行は認知症の初期から出現します。そのため普通なら、簡単にできる入浴の手順や方法も、認知症の人には、大変な作業だと感じてしまうのです。

失行については以下の記事も参考になさってください。

2-2.入浴が不安

風呂場は、狭く、滑りやすく、それでいて無防備な裸の状態です。認知症になると体力が落ちてきますので、入浴に伴う動作自体が困難になってきます。そうすると不安感が強くなり、出来れば避けたくなるのです。

2-3.恥ずかしい

認知症が進行しても恥じらいといった、感情は残ります。しかし、周囲からは「転ばないだろうか?」「体や頭はきちんと洗えているだろうか?」と言った心配があります。そのため、家族やヘルパーさんが介助したり、介護施設で集団で入浴したりとプライバシーが保たれにくくなります。このようなことを嫌って入浴したがらなくなるのです。

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いろいろな理由で入浴したがらないことを理解しましょう

3.対策

ならば入浴拒否に対してはどう対応すればよいのでしょうか?

3-1.誓約書を書いてもらう

家族に頼まれると、私は診察の際に、入浴を促します。そうすると、患者さんは「分かりました今日は必ず入浴します」と約束してくれます。しかし、これだけでは本人は忘れてしまいます。そんな時、「○○は本日、入浴することを約束します」という誓約書を作って、患者さんにサインをしてもらいます。そして、夜にその誓約書を見せると、さすがに自分の字でサインをしているので渋々入浴してくれます。

3-2.水をこぼす

これは奥の手です。何気なく、服に水をこぼして、謝りながら服を脱いでもらい、その勢いで入浴してもらうこともあります。しかし、そこまでする必要はほとんどないと言えるでしょう。

3-3.気にせずに、待つ

ご家族に最もお勧めなのが、気にせず様子を見ることです。「入浴しなくても死なない」ぐらいに、気楽に考えましょう。そうすると久々に声掛けをしたタイミングで、素直に入浴することもあります。それどころか、声掛けもなく、突然何事もなかったように数か月ぶりに自主的に入浴されることもあるのです。

4.まとめ

  • 入浴拒否は、認知症患者さんにはよく見られる症状です。
  • 2年間入浴しなくても病気にはなりません。
  • 家族としては、気にせず、気長に待ちましょう。
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