検診等でコレステロール高値を指摘されて薬を服薬されている方は多いのではないでしょうか? その際に最も良く使用される薬がスタチン系薬(HMG-CoA還元酵素阻害薬)です。スタチン系薬は、主にコレステロールを下げるために使用される薬剤ですが、「認知症のリスクを減らすという意見」と「認知症を悪化させるという意見」と研究結果が分かれています。服薬する患者さんにとっては、どちらかはっきりしないと服薬が不安です。今回の記事では、認知症専門医であり、認定内科専門医である長谷川嘉哉が解説します。
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1.スタチンが「認知症のリスクを減らす」可能性とは
以下の理由から、認知症のリスクを減らすと報告されています。
1-1.アルツハイマー型認知症のリスク低減
高コレステロールはアルツハイマー病のリスク因子の一つとされており、一部の研究では、スタチンを服用している人はアルツハイマー病の発症リスクが低いと報告されています。
1-2.血管性認知症の予防
スタチンは動脈硬化を防ぎ、脳卒中リスクを低下させるため、血管性認知症(脳卒中や動脈硬化による認知症)の予防に役立つ可能性があります。
1-3.抗炎症作用・酸化ストレス軽減
スタチンには抗炎症作用があり、脳内の炎症を抑えることで神経細胞を保護する可能性があります。さらに活性酸素のダメージを減らすことで、認知機能の低下を防ぐという研究結果もあります。
2.スタチンが「認知症を悪化させる」可能性とは
以下の理由から認知症を悪化させる可能性が報告されています。
2-1.コレステロールが低すぎると脳機能に悪影響
脳はコレステロールを必要とするため、過度にコレステロールを下げると、神経細胞の機能に悪影響を与える可能性があります。特に高齢者では、コレステロール値が低すぎると認知機能低下のリスクが高まるとの報告もあります。
2-2.脂溶性スタチンと水溶性スタチンの違い
スタチンには「脂溶性」と「水溶性」のものがあり、脂溶性スタチン(例:アトルバスタチン(商品名:リピトール)、シンバスタチン(商品名:リポバス)など)は脳に入りやすいため、脳内で予期しない影響を及ぼす可能性があるとされています。一方、水溶性スタチン(例:プラバスタチン(商品名:メバロチン)、ロスバスタチン(商品名:クレストール)は脳への影響が少ないと考えられています。
3.まとめ
- スタチンは血管性認知症の予防やアルツハイマー型認知症リスクを下げる可能性があります。
- 脳の影響を考えると水溶性スタチンの服薬が望ましいでしょう。
- 特に高齢者では、過度なコレステロール低下は、逆に脳機能に悪影響を与える可能性があります。