「頭痛に至らない前兆のみの片頭痛」とは?脳神経内科専門医も経験する症状を解説

「頭痛に至らない前兆のみの片頭痛」とは?脳神経内科専門医も経験する症状を解説

私は、数年に一度、片頭痛のなかでも「頭痛のない前兆のみの片頭痛:aura (=前兆) without headache」が出現します。この疾患は、片頭痛の一種ですが、頭痛がありません。「頭痛がないのに片頭痛?」と思われるかもしれませんが、作用機序は立派な片頭痛です。今回の記事では、頭痛を専門とする脳神経内科専門医の長谷川嘉哉も経験する、「頭痛のない前兆のみの片頭痛」についてご紹介します。

1.片頭痛とは?

脳内の血管が広がり、血管に絡みつく三叉神経が刺激を受けることで痛みが起きます。痛みの程度は激烈で、この片頭痛には市販薬は効きません。若い女性が中心で、遺伝性があります。小学生高学年になると発症しやすくなります。不思議と、ついてきたお母さんが「私も昔はひどかったんです」と言われます。つまり、年とともに頻度も性状も軽くなることがあるのです。なお私のように、50歳を超えた男性でも、全く発症しないわけではありません。

2.片頭痛の前駆症状とは?

片頭痛の「前駆症状」として、キラキラした光が見えたり、視野の一部が見えにくくなったりする視覚性前兆が現れることがあります。具体的には、視界の中心からギラギラひかる光、模様が少しずつ視界を遮るように広がっていきます。典型的な片頭痛では、前兆は5~60分以内に消失し、激烈な頭痛は生じ、通常は仕事や学業の継続は困難となります。

3.多くの医師も知らない頭痛のない前兆のみの片頭痛?

片頭痛の大部分は、「前兆のない片頭痛」と「前兆のある片頭痛」の2タイプに分けられます。そのうち前兆のある人は20~30%といわれています。このことは、多くの医師も理解されていますが、前兆のある片頭痛の中に、「頭痛のない前駆症状だけのタイプ」があることはあまり知られていません。

そのため、せっかく医療機関に受診されても「内科から眼科」に回され。「眼科を受診しても異常がない」と言われ、原因がはっきりせずに不安になる方もいらっしゃいます。

私自身の経験でも、最初は、眼科的な病気?と不安になりましたが、専門医として冷静に考え、「頭痛のない前兆のみの片頭痛」と自己診断ができました。その後は、数年に一度同じ症状が起こっても冷静に対処できています。

4.頭痛のない前兆のみの片頭痛の治療方法

「頭痛のない前兆のみの片頭痛」には、通常の片頭痛と同様の治療が有効です。

4-1.トリプタン製剤が有効

片頭痛の治療にはトリプタン系薬剤が有効です。トリプタン系薬剤は、主に3つの作用があり、片頭痛の痛みを引き起こす根源の「血管」と「三叉神経」の両方に作用します。脳の血管に作用して、拡がりすぎた脳の血管を元に戻し、また、三叉神経からの神経ペプチドの放出を抑え込みます。


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4-2.トリプタン製剤の服用のタイミング

トリプタン系薬剤は、服用のタイミングが大事です。前駆症状がある段階で服用すると極めて効果的です。逆に前駆症状がない片頭痛の場合は、服用が遅れるため効果が十分には発揮されません。幸い、「頭痛のない前兆のみの片頭痛」は前駆症状しかないので、その段階でトリプタン系薬剤を服用すると効果的です。

4-3.ロキソニンも効果あり

私の場合は、数年に一度のため発症時にトリプタン系薬剤を持っていませんでした。その上、外来中で途中で診療を止めることもできませんでした。そのため、常備薬であるロキソニンを服薬したところ、10〜20分程度で症状は消失しました。トリプタン系を持っていない場合は入手しやすいロキソニンでも活用してみることは良いかもしれません。

5.症状が改善しない場合は眼科受診も

片頭痛の前駆症状は、網膜剥離の「黒い点やゴミのものが見える飛蚊症」や、「ピカピカと光が見える光視症」の症状とも似ています。症状が改善しない場合や、頻回に症状が出現する場合は、必ず眼科を受診してください。

6.まとめ

  • 片頭痛の中には、「頭痛のない前兆のみの片頭痛」があります。
  • 前兆の特徴は、キラキラした光が見えたり、視野の一部が見えにくくなったりする視覚性前兆です。
  • 治療は、片頭痛の治療と同じトリプタン系薬剤が有効です

 

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