脳梗塞リハビリ時に費用負担を減らす!公的補助を最大活用する5つの知識

脳梗塞リハビリ時に費用負担を減らす!公的補助を最大活用する5つの知識
2017-10-18

40歳を超えれば誰でも脳梗塞を発症する可能性があります。まず考えることは、命は助かるのか? 後遺症は残るのか? 仕事に復帰できるのか?

突然襲った病気に、驚き、動揺されているご家族もいらっしゃると思います。

そんな時に、ご家族を不安にさせるのは病気だけではありません。一家の大黒柱が働けなくなって、生活費は? 医療費は? と経済的な不安に直面するのです。

ご家族としては、必死に脳梗塞のリハビリに取り組む患者さんに、経済的な心配をさせずに集中させたいと思われているのではないでしょうか。しかし、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の医療従事者に相談しても明確な答えは戴けません。

私は、認知症を専門とする神経内科専門医として多くの脳梗塞患者さんも診察してきました。今回は、ファイナンシャルプランナー資格をもつ神経内科専門医として、脳梗塞患者さんが使うべき社会資本(=公的補助・公的サービス)についてご紹介します。

1.身体障害者手帳。申請する方法とは

脳梗塞を発症して6か月たった時点で後遺症が残った場合、身体障害者手帳を申請することができます。身体障害者手帳には多くのメリットがありますので、6か月たったら間髪入れずに申請しましょう。

1−1.発症して6か月たったら医師にお願いしよう

発症して6か月経った時に、患者さんがどこにいるかは2つのケースが考えられます。

回復期リハビリ病院でリハビリをしているか、自宅で生活をしているかになります。回復期病院では、自宅へ退院する時期に重なります。そのため気の利いた病院であれば、身体障害者手帳の申請書類を出してもらってから退院となります。

すでに退院して自宅で生活している場合は、退院後の医療機関で作成する必要があります。やはり、気の利いた医師であればすぐに書類を作成しますが、そうでないことの方が多いようです。

それ以前に、開業医であれば書類を作成する資格がない医師が多いのが実態です。そのため、新しくかかる医療機関には書類作成の資格があるか確認しましょう(詳細は後述)。いずれにせよ、6か月たったらご家族からお願いしましょう。

1−2.主治医は指定医師がお勧め

Doctor and patient are discussing something, just hands at the table
当初から指定医にかかることで、申請を行いやすくなります。臨床経験も豊富なこともメリットです

身体障害者手帳の申請に必要な診断書を作成することができるのは、身体障害者福祉法第15条第1項に規定する医師に限られています。指定医師は、以下のすべてを満たすことが条件となります。

  • 開業し、または病院若しくは診療所において勤務する者。
  • 医師免許を取得した後、指定を受けようとする障害区分についてその関連する診療科名及び専門領域において、専門的研究または臨床経験が5年以上の者。
  • 身体障害者の福祉に理解を有する者。

脳梗塞後遺症の患者さんは、医療機関とは一生のお付き合いになります。できれば、身体障害者手帳が記載できる専門医に受診されることをお勧めします。

1−3.身体障害者手帳のおおよその目安・・長嶋監督の身障は?

身体障害者手帳はあくまで、四肢がどの程度動くかで機械的に評価します。介護保険のように生活においてどの程度介護が必要か否かは考慮されません。脳梗塞で、片側の手足が全く動かない、指先も殆ど動かない場合は、完全麻痺と判断し、おおよそ1級が認定されます。ちなみに、わずかに動くレベルであればおおよそ2級が認定されます。

ならば、長嶋巨人名誉監督の身障は何級でしょうか? 監督自身は、自身で歩いていて生活にそれほど介助は必要ではありません。しかし、右の手は完全に動いていません。従って身障は1級の認定が可能です。

患者さんの片側の上下肢が動かない、もしくは動きが悪い場合に身体障害者手帳の申請を見落とされることはあまりありません。しかし、最も見落とされやすいのが、体幹失調です。小さな脳梗塞をくりかえして、明らかな麻痺は認めない場合でも、バランスが悪く100mの歩行ができない場合は、体幹失調で3級の認定が可能です。多くのケースで見落とされているので注意が必要です。

1−4.重度障害医療

身体障害者手帳が認定されると、同時に重度障害医療受給者証が交付されます。これは、身体障害者手帳で3級以上(1級が一番重い)の場合に医療費の自己負担分を市町村が負担してくれる制度です。(経済的に豊かな市町村では、独自政策で4級でも無料の市町村もあります)。

70歳未満の患者さんの場合、自己負担は3割ですから負担は結構重いものです。この制度は、原因となった脳梗塞だけでなく、眼科、耳鼻科、歯科、薬代に至るまで、あらゆる病気の治療について医療費が無料になります。

1−5.障害者控除

確定申告時の障害者控除が使えます。納税者自身、または控除対象配偶者や扶養親族が障害者に当てはまる場合には、一定の金額所得控除を受けることができます。

障害の程度が1級又は2級と記載されている人は、特別障害者になり特別障害者の控除(40万円)ができます。それより軽い方は、障害者の控除(27万円)ができます。

2.サラリーマンの特権をフル活用する方法とは

自営業者の方と違い、サラリーマンの方ならではの制度があります。

2−1.傷病手当

病気や負傷の為に働く事ができず、賃金の支給を受けることができない場合に、標準報酬日額の2/3が支給されます。これは、ご家族としても本当に助かります。会社側にも、働けない人に給与を払うことなく、傷病手当で対応できるので負担をかけません。


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傷病手当は、患者さんの日々の生活の糧です。そのため、自分の場合は傷病手当書類は、お預かりすることなく、その場で記載してお渡しします。1日でも早くお渡しすると喜ばれるのです。ちなみに書類には医師が ”就労不能”であることを証明します。

2−2.失業手当

脳梗塞の発症をきっかけに退職する場合に使う雇用保険の制度です。通常、雇用保険の受給期間は原則として1年間ですが、その間に病気で続けて30日以上働けないとその分だけ受給期間を延長することができます(最長3年間)。

健康保険で「傷病手当」を受け取った後、この延長措置を使い「失業手当」を遅らせて受給することができます。失業手当を受給するときは医師は“就労可能”と書きます。

傷病手当では“就労不能”で、失業手当では“就労可能”と不思議に思わるかもしれません。しかし、例えば脳梗塞で左片麻痺の後遺症が残ったと考えましょう。左の片麻痺があるので働けないことは事実です。一方で、右手一本なら働けるが仕事がないことも事実です。つまり、どちらも嘘ではないんです。医師は、嘘を書くことはできませんが、患者さんのために視点を変えて書類の記載をすることはできるのです。

ちなみに、この傷病手当と失業手当の使い分けは、かなりの患者さんが利用されています。

3.障害年金を申請しよう

Concept of medical expenses
障害年金が受給できるようになると、生活費の心配がさらに減ります

障害年金も程度によって、もらえる年金額が変わります。障害年金の等級は、身体障害者の等級とは異なる独自の基準です。私は専門医として、障害年金の書類を記載する時がもっとも緊張します。申請が通れば、患者さんは長年に渡って障害年金を受給することができます。しかし、却下されたからといって、症状を重く書き直して再申請はできません。ある意味、“一発勝負”の緊張感があるのです。それだけ重要な障害年金です。以下に、おおよその基準をご紹介します。ちなみに国民年金の方は1と2級だけで3級はありません。

障害等級 1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状によって、日常生活ができない程度のもの。 (他人の介助を受けなければ自分の身の回りのことができない程度)

障害等級 2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、 日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。 (必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で労働により収入を得ることができない程度)

障害等級 3級

労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。 また、傷病が治癒していない場合は労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの。

4.片麻痺では生命保険の高度障害適応にはならない

脳梗塞による後遺症が生命保険の高度障害の適応になると勘違いされている方もいらっしゃいます。残念ながら、片麻痺は高度障害の適応ではありません。住宅ローンは免除されるのでは? やはり、片麻痺では免除にはなりません。これは保険の規定で決まっているので、どうしようもありません。

つまり、働き盛りの方が、脳梗塞になれば多大な経済的負担を負うのです。働けなくなったご主人に代わって住宅ローンの支払いのためにパートを掛け持ちしている方もいらっしゃるのです。

5.片麻痺になっても働けますか? そんな時のための保険とは

Senior Adult Life Insurance Healthcare Concept
まさかのための民間保険ですが、その内容をよく吟味する必要があります

皆さんが、もし片麻痺になっても現在の仕事を続けられるでしょうか? 特に、歯科医、外科医、獣医、美容師等、両手が使えてこそ成り立つ仕事が結構あります。それ以外の職種でも自信をもって、“今の仕事が続けられる”と答えられる方は少ないのではないでしょうか? そんな時に備えた保険を紹介します。

5−1.損保で補償を

皆さん、保証と補償の区別が分かりますか? 働けなくなって、従来の生活を維持するたことは、つまり補うという意味で、”補償”となります。特に、傷病手当が使えない国民健康の方には、所得補償保険がお勧めです。これは、病気やケガで働けなくなった場合に、保険金が支払われます。この保険は、生命保険会社でなく損保会社が窓口になります。そのため、損保の扱いをしていない保険代理店に相談すると、何となくはぐらかされてしまいますので注意が必要です。

5−2.ソニー生命の生前給付保険はお薦め

生命保険会社からは、脳梗塞等で働けない、いわゆる就業不能をターゲットにした商品が販売されています。しかし、専門医として商品を検討すると所定の就業不能状態の定義があいまいです。

某会社の商品など“働けなくなっても毎月お給料のように給付金が受け取れる”と言いながらその基準が『医師の指示を受けて自宅で療養しており、職種を問わず、すべての業務に従事できない状態』と定義されています。これって、『どんな状態?』と専門医でも疑問がわきます。この曖昧さがある限りとてもお薦めできる保険ではありません。

その点2014年10月に発売されたソニー生命の生前給付終身保険および生前給付定期保険は支払事由が、“従来の要介護2以上と高度障害、死亡に加え身体障害者手帳1~3級”と極めて明確です。これは、本当に本当に良い保険です。専門医としても、基準が明確です。

脳梗塞で片麻痺になれば死亡保険と同等の金額が支払われるのです。結果、“障害が残った不幸”を最小限化することができるのです。私は、ソニー生命からお金をもらっているわけではありません。しかし、純粋にお薦めの保険です。

6.まとめ 医師は診断書でも患者さんを救うことができる。

脳梗塞は突然発症します。その瞬間から、病気と経済的不安に直面します。この経済的不安を解消するためにも、この記事の情報をぜひ生かしてください。同時に、学生時代から医師になってからも、一度も社会資本について、学んだことがない多くの医師の方々にも知っていただきたい情報です。医師は、診断書でも患者さんを救うことができるのです。

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