胃腸風邪:判定方法と感染予防方法を総合内科専門医が解説

胃腸風邪:判定方法と感染予防方法を総合内科専門医が解説

感冒の流行で代表的なものはインフルエンザですが、突然の嘔吐や下痢で発症する胃腸風邪にかかる方も少なくありません

胃腸風邪は感染力が大変強いため、いったん流行ると、小児から大人さらには高齢者まで、広範囲に感染が広がります。症状も、悪心・嘔吐・下痢のため不快で、仕事や学業にも支障をきたすため、できれば罹りたくない病気です。

正直、私も普通の風邪やインフルエンザの患者さんは、マスクもつけずに診察をしますが、胃腸風邪の患者さんの診察後は、その度にうがい、手洗いを厳重に行うほどです。今回の記事では、総合内科専門医である長谷川嘉哉が、胃腸風邪について原因・治療・予防を中心にご紹介します。

目次

1.胃腸風邪とは?

胃腸風邪とは、吐いたり下痢をしたりお腹が痛くなったりする状態のことを言います。外来診療では、子供さんには「胃腸風邪」、大人の方には「感染性の胃腸炎」と説明しますが、胃腸風邪と感染性胃腸炎は同じことです。ウイルスや細菌が消化管に入って炎症を起こし胃や腸の動きが悪くなるので、お腹が張ったり気持ちが悪くなって吐いたり下痢をしたりします。

ウイルスが特定できればロタウイルス感染症、ノロウイルス感染症などより詳しい診断名がつきます。

胃腸風邪(=感染性腸炎)の患者届出数は、例年11月上旬から急増し、12月をピークに一旦減少しますが、1~3月に再度増加し、その後徐々に減少していきます。12月のピークはノロウイルス、春のピークはロタウイルスによって形成され、腸炎ビブリオなど細菌性のものやいわゆる食中毒によるものが夏期の胃腸炎の原因になっています。

2.胃腸風邪の原因は

胃腸風邪の原因は以下のものがあります。

2-1.ロタウイルス感染症

ロタウイルスは、生後6カ月から2歳前後の子供が感染しやすく、ほとんどが5歳までに1度は経験します。大人も感染することがありますが、軽症で済むか発症しないケースがほとんどです。子供でも2度目の感染時は軽い症状で済むことが大半です。

ロタウイルスに感染すると、2~4日の潜伏期間を経て次のような症状が現れます。

  • 悪心、嘔吐
  • 水のような下痢
  • 38℃以上の高熱
  • 下腹部の痛み

このような症状が3~4日間続きます。水のような下痢が続き、高い熱が出るのがロタウイルスの特徴です。

Rotaviruses infecting intestine
腸に感染したロタウイルスのイメージ

2-2.ノロウイルス感染症

ノロウイルスは体内に入った後、小腸の上皮細胞で増殖し、胃の運動神経の低下・麻痺が伴うために「腹痛・下痢・吐き気・嘔吐」の症状を引き起こします。潜伏期間は12〜48時間です。嘔吐もしくは吐き気が突然、強烈に起きるのが特徴です。発熱は約37〜38℃の軽度で、大人では吐き気や腹部膨満感といった症状が強いようです。発症後、通常であれば1〜2日程度で症状は治まります。

2-3.アデノウイルス感染症

アデノウイルスは小さな子どもに感染しやすく、咳や鼻水など一般的に「風邪」とされる症状をはじめ、胃腸炎・結膜炎・膀胱炎など、様々な症状を引き起こします。アデノウイルスには50種類以上の型があり、それぞれ症状が異なるのが特徴です。

胃腸風邪を引き起こす場合、季節性があるノロウイルス、ロタウイルスと比べて、アデノウイルス胃腸炎は年間を通して発症するのが特徴です。発熱や嘔吐は軽めで、喉の痛みや目の充血などを伴うことがあります。

2-4.原因不明の胃腸風邪が最も多い

そもそも胃腸風邪の場合、原因を究明しないことが殆どです。これは原因を特定しても、治療・対応方法に変わりはないからです。

ノロウイルスの迅速診断は3歳未満、65歳以上の患者さんは、保険で行うことができます。ロタウイルス感染症、アデノウイルス感染症は全年齢が保険で検査できますが、当院も含め、迅速診断キットを置いていない病院も少なくありません。これは決して手抜きではなく、費用をかけてわかったところで対処方法に違いはないからです。判定結果で有効な薬を投与できるインフルエンザとは異なる点です。

3.治療は

治療にあたって、以下の手順で対応します。


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3-1.38度以上の熱があるか否か?

通常の胃腸風邪の場合、38度以上の発熱は伴いません。38度以上の発熱がある場合は、ロタウイルスや細菌性胃腸炎が疑われます。至急で血液検査を行い、白血球やCRP(C反応性蛋白)を確認します。いずれも正常の場合は、ロタウイス感染を疑いますが、特効薬はないので対処療法を行います。

一方、白血球が増えCRPが高くなっている場合は、細菌性胃腸炎を考え、抗生剤を経口で投与します。なお下痢や嘔吐の症状に加え、38度以上の発熱を伴うわけですから脱水が高度になりがちです。そのため、積極的に点滴による補液も行います。

3-2.絶食が一番

38度以上の発熱がなく、悪心・嘔吐・下痢だけであれば、回復するまで絶食が一番です。正直、病院に受診されても制吐剤もしくは整腸剤を処方する程度です。それも、あまり効果はなく気休め程度です。水分が取れていれば、受診自体が不要です。

3-3.水分も取れない場合

水分も取れないような状態の場合、吐き気止めの坐薬を使ってみましょう。座薬を入れてから30〜60分程度たったら、水分を少量ずつ摂取してみましょう。それでも、嘔吐が強く水分が取れない場合は、医療機関で補液目的の点滴が必要です。

4.胃腸風邪を事前に予防する方法とは

胃腸風邪は普段の生活における予防が大事です。

4-1.手洗い

胃腸風邪は、手についたウィルスなどの病原菌が口から入ることで発症します。食事前に手を洗うことで、口に入ることを防ぐことができます。手洗い後は、感染を広げる可能性のあるタオルではなく、使い捨てのペーパータオルの使用が必要です。

Surgeon in hospital surgery washing handsin sterile uniform "scrubs" before operating theater emergency room.
医師はヒジの方までよく洗います

4-2.手指の消毒法

手指の消毒法としては、医療機関の入り口などにあるアルコールのすり込みが一般的です。アルコールは多くの細菌に対しては有効な方法ですが、ノロウィルスはアルコールでは死なず、塩素系消毒薬(ハイターなど)以外は基本的に効果がありません。塩素は手に塗ることができないため、石けんで丁寧に隅々まで手を洗い、ウィルスを洗い流すことが唯一の「消毒」方法となります。

4-3.トイレを清潔に

胃腸風邪は、病原菌を持った人が排便後、菌が残っている手で部屋のものや食べ物を触ったときに、それが他の人の口に入ることで起こります。手洗いをしても手に付いた菌が落としきれていないためです。また健康な大人では、感染しても症状が軽くほとんど気づかないうちに菌を排泄していることもあります。日頃からこまめにトイレを掃除し、必要に応じて便座やレバー、ドアノブ、蛇口などを消毒する必要があります。

magnifier and bacterial cells on human palm
手には多くの細菌やウィルスが付着していると思ってください

5.家族が下痢や嘔吐してしまった時の予防法

胃腸風邪の感染力は大変強いため、嘔吐物の片づけをした人が感染することも多々あります。

5-1.トイレと手洗いのポイント

石けんとタオルは症状がある人とそれ以外の人に分けてください。石けんをトイレ内において、手を洗ってから出てくると、汚染が広がらず効果的です。また、トイレが2つ以上あるときは、それぞれ症状がある人とそれ以外の人に分けると感染が予防できます。

5-2.吐物の処理方法

嘔吐したときは、吐物のふき取りと周囲の消毒が必要です。処理をする人はマスクと手袋をして、外側から円を描くように吐物をふき取ってください。吐物は周囲2m程度まで飛散していることがありますので、広めに消毒しましょう。ノロウィルスは乾燥すると空気を漂い、口に入って感染することがありますので、消毒液で拭いて30分以上おいたあとに、水ぶきが必要です。ふき取りに使ったぞうきんやペーパータオルはすぐにビニール袋に入れて廃棄してください。

5-3.衣類の消毒

嘔吐物や下痢便で汚れた下着類などは素手で触ってはいけません。手袋とマスクをつけて、バケツなどで水洗いして汚れを落とした後、消毒液に30分以上の浸けおきが必要です。バケツや洗濯場所の周りも忘れずに消毒してください。また、一見きれいでも、片づけをした人は衣服にもウィルスが付いているので、速やかな着替えと消毒が必要です。塩素以外の消毒法として、高温の衣類乾燥機も使用できます。85℃以上になるよう高温に設定してください。

6.まとめ

  • 胃腸風邪は、感染力が強いため、まずは予防が大事です。
  • 感染した場合は、対応方法に違いはないため原因の検査は不要です。
  • 感染したら水分が取れれば絶食が一番ですが、水分が取れなければ点滴も必要です。
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