アルツハイマー型認知症が血液検査でわかる日が来る?

アルツハイマー型認知症が血液検査でわかる日が来る?

血液検査で認知症の早期診断を行う技術が開発されています。今現在の医療では、ある程度症状が進行しないと認知症の診断はできませんが、もし、発症前に血液検査で認知症が診断できれば、早期治療につながります。今回の記事では、血液検査による認知症の診断の現状・課題・将来性についてご紹介します。

目次

1.現状の認知症の診断

現在、認知症の診断は以下のような方法で行っています。

1-1.問診

患者さんやご家族からお話を聞くことです。どれだけ医療機器を使った診断技術が進歩しても問診がなおざりになってはいけません。問診だけで、認知症の症状が前頭葉機能低下レベルなのか、中核症状レベルなのか、周辺症状レベルなのかがわかります。つまり認知症専門医としては、問診だけでも診断は殆どついてしまいます。ただし、症状が出ていない状態での診断ができない点が最大の課題です。

1-2.頭部CT・頭部MRI

頭部CTやMRIで分かることは、脳の萎縮があるかないかです。しかし「脳に萎縮があっても認知症症状がない方もいますし、脳に萎縮がなくても認知症の症状がある方」がいます。つまり、絶対的ではないのです。逆に、脳腫瘍、脳梗塞、脳出血などを鑑別する目的の方が重要です。

1-3.PET検査

PET検査とは(positron emission tomography:陽電子放出断層撮影)の略で、放射能を含む薬剤を用いる核医学検査の一つです。放射線薬剤を体内に投与して画像化します。このPET検査により、認知症の一因であるβアミロイドの脳への蓄積を画像化することができます。この検査は他の検査と比較して精度が高く、発症前にβアミロイドの蓄積とらえることが可能です。ただし検査施設が限られること、費用も現在は保険外のため20万円以上かかります。

2.血液で認知症をとらえる技術

従来はPET検査でしか、βアミロイドの蓄積を診断することができませんでしたが、最近では以下のような血液で検査できる技術が開発されています。

  • シスメックス:血液検査装置大手のシスメックスは病院内で簡便に調べられる試薬を2021年12月中に厚生労働省に製造販売承認を申請。認められれば2023年春にも実用化されます。試薬は一般的な病院で使われている血液分析装置と組み合わせて使い、「アミロイドβ」の蓄積量を20分以内で測定します。
  • 島津製作所:6月に質量分析法を使い血液中のアミロイドβを検出する装置を発売

その他にも、研究レベルを含めると、多くのメーカーがアミロイドβを検出にしのぎを削っています。

3.早期診断のメリット

認知症の治療における原則は「早期診断・早期治療」です。現在の治療薬でも、早期であるほど効果が出る可能性は高くなります。新薬でアミロイドβの生成を抑えることで神経細胞の減少を防げても、神経細胞が減ってからでは効果が期待できません。神経細胞の減少ができるだけ少ないうちに治療をすることが重要なのです。そのため米バイオジェンとエーザイが21年6月米国で条件付き承認を取得した「アデュヘルム」も発症前の「軽度認知障害」の段階や初期患者が投与対象です。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


4.血液検査の課題

アミロイドβを検出して、アミロイドβの蓄積を予防できたとしても問題は残ります。日々認知症患者さんを診察して感じることは、「認知症患者さんの原因は一つではない」です。例えば、以前は不治の病であった結核の原因は結核菌。結核菌を退治できれば、結核自体を治療することができます。しかし、認知症の原因は多岐にわたります。同じ認知症であっても、多くの原因がそれぞれに組み合わさって発症しているのです。

確かに、若年性アルツハイマーやAPOEフェノタイプが4/4の患者さんの発症にはアミロイドβが相当関与していると考えられますが、そうでない方もかなりいらっしゃるのです。APOEについては以下の記事も参考になさってください。

5.将来的には

先日エーザイ製薬の担当者から、現在申請中の「アデュヘルム」が厚生省の認可を通った場合の意向を聞かれました。内容は「アデュヘルム」の使用については、詳細は未定であるが、使用にあたってPET検査等が必要になる可能性がある。その場合は、「その手続きをしてでも薬を使う意向があるか?」です。

もちろん、「意向がある」と答えさせていただきました。正直、エーザイの「アデュヘルム」の値段と効果については疑問を持っています。しかし、PET検査をしてからの患者さんを対象にした「アデュヘルム」の使用はとても関心があります。

アルツハイマー型認知症の患者さんの中で、アミロイドβの蓄積が確認された患者さんにのみ「アデュヘルム」を使用することは、やみくもにすべての認知症患者さんに使用するよりも、きっと良い結果が出ると予想されます。そしていずれは今回紹介した血液検査によるアミロイドβの検出が実用化されればPET検査を受けるよりも簡単に、「アデュヘルム」の適応が分かるようになります。いよいよ認知症患者さんを、タイプに分けた治療が始まる第一歩になると期待されます。

6.まとめ

  • 認知症の診断においてはPET検査におけるアミロイドβの検出が有効です。
  • 高額なPET検査の代わりに、血液検査でアミロイドβの蓄積が分かる方法が開発されています。
  • 今後は、認知症患者さんのなかでアミロイドβの蓄積が確認される患者さんにのみ「アデュヘルム」などの薬が使用される時代がやってきます。
長谷川嘉哉監修シリーズ