歯医者もかかりつけ医を・在宅診療で取得できる「か強診」認定とは

歯医者もかかりつけ医を・在宅診療で取得できる「か強診」認定とは

医療法人ブレインは、強化型在宅支援診療所であり、歯科医の先生とともに在宅医療を支えています。クリニックの外来では歯科衛生士も配備し、歯科用チェアで定期的な口腔ケアを行っています。まさに、医科歯科連携の最前線にいると自負しています。そのため、多くの歯科医の先生方からも貴重な情報をいただいています。

そんな中、令和元年8月17日札幌での道民向け市民公開講座で「 脳の老化を止めたければ歯を守りなさい」の講演をさせていただきました。650名の道民の方に参加いただき、大好評で終えることができました。その際に司会を務めていただいたのが、日本歯科医師連盟会長の高橋英登先生でした。講演の前後に貴重なお話を聞くことができ、医科歯科連携について多くの学びを得ることができました。

今回の記事では、医科歯科連携をなすべき医科及び歯科診療所について、また新しい歯科医のかかりつけ医認定制度「か強診」についてご紹介します。

目次

1.認知症をも予防する口腔ケアをいかに継続するか?

Dentist and Child
虫歯や歯周病の予防にはできれば毎月のオーラルケアが不可欠ですが、健康保険が使えないという欠点がありました

外来患者さんを全員、当院で口腔ケアをするわけにはいきません。かかりつけの歯科医がある場合は、受診をしていただきます。しかし残念ながら、歯科医のなかには、治療が終わると終診になり、継続的な口腔ケアがなされないケースが多いのです。歯科医で口腔ケアを継続してもらうためには、以下の方法があるようです。

1-1.間隔をあけて初診

多くの歯科医では、3か月程度の間隔をあけては受診いただき、そのたびに初診料を算定して、歯のメンテナンスをしていることが多いようです。しかし、大原則として健康保険では「予防のための給付」は認められていません。理想は、この「予防給付制度」が実現することですが、高橋先生とのお話しでも、社会保障制度の現状を考えると難しそうです。最近では、治療内容から予防とされるとレセプトが切られることもあるようです。そのため、3か月の間隔が、4~6か月と伸びる傾向にあるようです。

1-2.自費診療

理想的なのは患者さんが、歯のメンテナンスの重要性を理解して自費で歯科を受診することです。これであれば、受診頻度も毎月でも可能になります。そこで、課題になるのは「いくらまでを負担いただけるか?」です。私の周囲でも、歯の重要性を理解している人は、1回1万円でも出すといわれます。一方で、3000円でも抵抗がある人もいて、意識に差があるようです。

1-3.か強診認定医の活用

2016年保険改定で、厚生労働省は「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」を制定しました。保険の枠組みを一部拡大することで、「う蝕(むし歯)や歯周病の重症化予防治療」をより広く定着させることを目的としているのです。簡単に言えば、か強診の基準を満たせば、保険内で予防歯科ができるようになったと言えるのです。

2.か強診とは?

正式名称は「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」です。厚生労働省が、決められた基準を満たした「地域完結型医療推進を行う歯科医療機関」を認定します。か強診が認定されたれた診療所に関しては、重症度予防への保険点数の優遇(SPTⅡなど)が行われます。保険内で予防歯科ができるようになり、収益性も高くなります。

*SPT:歯周病安定期治療(SPT)。3か月に1回くらいのペースで、歯科医でプラークコントロールや、スケーリングなどのメンテンスと検診を受けて、歯周病菌が増えないようにしていくこと。SPTⅡは、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所という認定を得ることで、従来よりも患者様の負担を減らすことが出来る加点法。

3.「か強診」をとるなら在宅医療に取り組みなさい

認知症を含めた、脳梗塞、心筋梗塞、糖尿病の予防のためにも歯科の先生には、口腔ケアを積極的にお願いしたいものです。そのためには、多くの歯科診療所には「か強診」の認定を受けてもらいたいものです。か強診の認定背景や施設基準については、以下の記事が参考になります。

http://www.dental100.jp/kakyoushin2017_t001inaba/


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この基準の中で在宅医療をしているものからすると、「か強診の歯科医師が、該当すべき3つの項目」にとても関心を持ちましたのでご紹介します。在宅医療に詳しくない先生方には、一見厳しい項目に思えるかもしれませんが、これらの基準の3つ以上に該当することは在宅医療を行う上では当たり前です。いいかえると、厚生労働省は「か強診をとるなら在宅医療に取り組みなさい」と言っているのです。

  • 過去1年間に、居宅療養管理指導を提供した実績があること・・在宅医療をするなら算定は当たり前です。
  • 地域ケア会議に年1回以上出席していること。
  • 介護認定審査会の委員の「経験」を有すること・・一度は経験しておくべきです。
  • 在宅医療に関するサービス担当者会議や病院・介護保険施設等 で実施される多職種連携に係る 会議等に年1回以上出席してい ること・・サービス担当者会議者でケアマネと話をすると、大いに勉強になります。
  • 過去1年間に、栄養サポートチ ーム等連携加算の算定があるこ と。
  • 在宅医療・介護等に関する研修 を受講していること・・一度は勉強しておきましょう
  • 過去1年間に、退院時共同指導料、退院前在宅療養指導管理料、 在宅患者連携指導料又は在宅患 者緊急時等カンファレンス料の算定があること。
  • 認知症対応力向上研修等、認知 症に関する研修を受講している こと・・認知症の知識は、歯科医でも持っているべきです。
  • 自治体等が実施する事業に協力していること。
  • 学校の校医等に就任している こと・・機会があれば受けてください。
  • 過去1年間に、歯科診療特別対応加算の算定があること。

4.基準は厳しくなるもの

歯科医の先生と話をしていると、「せっかくとった『か強診』の基準が改訂毎に厳しくなっていく」ことへの不安や不満を口にされる方いらっしゃいます。

4-1.在宅療養支援診療所から強化型在宅療養支援診療所

実は医科の訪問診療でも、当初は、「在宅療養支援診療所」という認定を受けることで算定で優遇を受けることができました。しかし、改訂によって、従来と同様の優遇を受けるためには、さらに厳しい基準としての「強化型在宅療養支援診療所」を算定する必要が出てきました。

4-2.なんちゃって在宅は認めない!

基準が厳しくなっていくのには、医師の側にも問題がありました。当初の「在宅療養支援診療所」では殆ど在宅医療をやっていないのに申請だけする「なんちゃって在宅」があまりに多すぎたのです。結果として厚生労働省が、せっかく優遇しても、在宅医療が推進されなかったのです。まさに、現在の歯科の「か強診」も同様ではないでしょうか? 知り合いにお願いして、数件の在宅患者を捏造? して実態としては在宅医療は行っていない。これでは基準が厳しくなるのは当たり前です。

4-3.真面目に在宅をすれば基準は厳しくない!

実際、基準が厳しくなった「強化型在宅療養診療所」の基準も、近隣の医療機関との連携により、24時間対応可能な医師を常に3名以上確保」、「過去1年間の緊急往診実績が5件以上」、「過去1年間の住宅における看取りの実績が2件以上」と本当に在宅医療をしているものからすると、あまりに低いハードルです。この程度の基準を満たすことなく、在宅医療をしているといってはいけないのです。

5.医科歯科連携=「強化型在宅支援診療所」×「か強診」

Doctors and businessman
歯科も医科も在宅に取り組んでこその医科歯科連携です

医科歯科連携という言葉の本当の意味は、単に医師と歯科医が連携するという簡単なことではないようです。医師も歯科医も一定の基準を満たした者同士のみが連携するもののようです。

つまり、医科も歯科も積極的に在宅医療に取り組む必要があるのです。そのための条件が、医科は「強化型在宅療養診療所」であり、歯科は「か強診」なのです。

その2つが協力することで、「予防医療」と「在宅医療」を推進することこそが、医科歯科連携なのです。

6.時代にそぐわない医療機関は淘汰される

厚生労働省の方針を考えると、医科は「強化型在宅療養診療所」、歯科は「か強診」の認定に積極に取り組むべきです。その結果が数年後には患者数や利益にも差がつくと予想されます。すべての医療機関が国から保護させる時代は終わりを告げるのです。

医療機関としては不満もあるかもしれませんが、患者さんの立場を考えれば、「予防医療」と「在宅医療」を推進することは責務なのです。

7.まとめ

  • 口腔ケアの継続のためには、歯科診療所には「か強診」の認定が必須です。
  • 認定基準を考えると、か強診をとるなら在宅医療に取り組む必要があります。
  • 医科歯科連携のためには、医科は「強化型在宅療養診療所」であり、歯科は「か強診」が必要です。
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