介護の名を借りた“無許可宿泊”  お泊りデイという危険なグレーゾーン

介護の名を借りた“無許可宿泊”  お泊りデイという危険なグレーゾーン

近年、「お泊りデイ(お泊りデイサービス)」と呼ばれる形態が、全国各地で広がっています。
日中は介護保険を使ったデイサービスを利用し、夜間は実費でそのまま“宿泊”する。
家族にとっては一見便利で、事業者にとってもニーズの高いサービスです。

しかし、医療・介護の現場に身を置く立場から見ると、この「お泊りデイ」には、極めて重大な問題が潜んでいます。

それは単なる制度上の不備ではありません。
人の命と尊厳に直結する問題です。

目次

1.実態は「宿泊」なのに、書類上は「デイサービス」

お泊りデイの最大の問題点は、
行政が把握できているサービス内容と、実際の運営実態が乖離している点にあります。

ケアプラン上、行政が認識できるのはあくまで「通所介護(デイサービス)」のみ。
夜間の滞在は「介護保険外」「実費サービス」とされ、ケアプランにも給付管理にも反映されません。

つまり行政から見れば、

「その時間帯、その利用者は“存在していない”」

という扱いになります。

しかし、現実にはどうでしょうか。

2.リビングにパーティション──それは居室ですらない

私が実際に見聞きしてきたお泊りデイの多くは、
「宿泊施設」と呼べる水準には到底達していません。

・個室はなく、
・リビングの一角を
・パーティションで仕切っただけ
・ベッドや布団を並べる

これが「お泊り」の実態です。

プライバシーはほぼ皆無。
夜間の動線も不明瞭。
火災時の避難計画が現実的とは言えないケースも少なくありません。

それでも、
「実費だから」
「本人・家族が了承しているから」
という理由で、黙認されてきました。

3.では、これは違法ではないのか?

結論から言えば、
極めて違法性が高い“グレー”です。

宿泊を伴う介護サービスは、本来、

・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・特定施設入居者生活介護

など、明確な基準と設備要件が定められています。

居室の広さ
非常用照明
スプリンクラー
夜間職員配置
消防法・建築基準法への適合

これらを満たして初めて「泊まらせてよい」施設になります。

一方、お泊りデイは
「通所介護事業所」という枠組みのまま、
実態としては“無許可宿泊施設”を運営している状態です。

制度上、明確に「禁止」と書かれていない自治体もありますが、
それは「合法」という意味ではありません。

単に、行政が正面から向き合ってこなかっただけです。

4.火災が起きたら、誰が責任を取るのか?

ここが最も深刻な問題です。

仮に夜間に火災が発生し、
・利用者が逃げ遅れた
・死亡・重度障害が生じた

この場合、責任はどこに帰属するのでしょうか。

まず明確なのは、
行政は責任を負いません。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


なぜなら、
行政が把握しているのは「日中のデイサービス利用」だけだからです。

ケアプランにも
給付管理にも
夜間滞在の記録はありません。

残る責任主体は、
事業者と、その運営者個人です。

しかも、

・消防基準を満たしていない
・宿泊施設としての許可がない
・夜間体制が不十分

これらが重なれば、
業務上過失致死傷に問われる可能性すらあります。

「実費だった」
「家族が同意していた」
これらは、刑事責任の前ではほとんど意味を持ちません。

5.家族もまた、知らぬ間にリスクを背負わされている

家族側も「預かってもらえて助かる」という気持ちから、
深く考えずにお泊りデイを選択してしまいがちです。

しかし、万が一事故が起きたとき、
「そんな環境だとは知らなかった」
では済まされない現実があります。

契約書に小さく書かれた
「自己責任」
「簡易宿泊」
という文言が、
家族を守ってくれる保証はありません。

6.なぜ、ここまで放置されてきたのか?

理由はシンプルです。

・家族のニーズが高い
・ショートステイが足りない
・行政も代替案を持てない

結果として、
誰も正面から「ダメだ」と言えなかった

そのツケを、
現場の職員と、
そして利用者本人が背負っています。

7.「便利さ」と「安全」は、必ず分けて考えるべき

介護は「何とか回す」ことが目的ではありません。
人の人生の最終章を支える行為です。

リビングの一角をパーティションで区切った場所は、
居室ではありません。
「泊まらせてよい場所」でもありません。

お泊りデイという言葉の柔らかさに、
私たちは騙されてきました。

これは制度の問題であると同時に、
倫理の問題です。

8.最後に

お泊りデイを一律に否定するつもりはありません。
しかし、

・現状はあまりに危うい
・責任の所在が不明確
・事故が起きれば取り返しがつかない

この事実だけは、
もっと多くの人が知るべきです。

「今は大丈夫」
「今まで問題がなかった」

介護の現場で、
この言葉ほど危険なものはありません。

長谷川嘉哉監修シリーズ