テロより怖い、医療問題

2014-01-17

年末には、たくさんの映画を観ました。その中でも、マイケル・ムーアの『シッコ』は医療に携わるものとしては考えさせらる内容でした。アメリカは、日本のような健康保険制度はありません。2006年の統計で、就業していない成人の58%近くが、就業している成人でも23%近くが、健康保険を持っていなそうです。この映画では、4700万人の無保険者だけではなく、保険料を支払っている人にもマイナスの影響を及ぼすアメリカの医療システムの実態が明らかになっています。正直ここまで酷いのかと驚いてしまいました。 いくつかご紹介すると、

・ 作業中、機械で手の中指と薬指を切断してしまった男性。彼は病院で、こんなふうに言われたのです、「中指をつなぐには700万円、薬指をつなぐには140万円かかるけど、どうする?」こんなことを言わなければならない環境では、医師として働きたくはありません。

・  「民間保険に入っていた(=高額な掛け金を払っていた)のに、土壇場で保険会社に難癖をつけられ支払いを拒否された人」。この難癖をつけるのが、保険会社の医師なのです。医師は、難癖をつけて保険支払いを少なくするほど、昇進して、給与が高くなります。

・  保険会社への事前連絡なかったために、救急車に10分間乗っただけで1,000ドルとられたケース。いったいいつ、どうやって事前連絡しろと言うのでしょうか?


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・  911テロ救出作業時の英雄たちが、有害粉塵のため障害が残ったが、政府からは見捨てられ、高額治療費の支払いにより困窮している例

アメリカの医療保険の多くは、HMO(健康維持機構)という、民間の保険会社によってまかなわれているのですが、この制度が非常に問題点が多そうです。アメリカの保険制度の事例をみていると、生き残るのは、より宣伝力に長けていて、よりコストカットに成功した会社です。保険会社が「企業」であるかぎり、どこかで利益をあげなければ生き延びていけません。保険料を安くするためには、当然「医療費をなるべく払わないようにする」という選択をするはずです。これは今の日本の普通の医療でも、保険審査というのが行われていて、「適応外治療」などに関して、国から病院への支払いが削られています。しかし、国がやっているこのシステムですら、それほど酷いものではありません。

当たり前ですが、国民が金のことなど心配せずに病気や怪我の治療ができる社会が理想的です。現状の日本の健康保険制度は何とか守っていく必要がありますし、そのために、皆が大切に使っていく必要があると思います。

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