漢方薬は効果ある?なし?総合内科専門医がよく使う漢方処方ベスト7を解説

漢方薬は効果ある?なし?総合内科専門医がよく使う漢方処方ベスト7を解説

外来の患者さんの漢方薬に対する考えは、千差万別です。漢方薬を処方すると、「もっと効果のある漢方薬以外の薬が欲しい」いわれる患者さんもいらっしゃいます。逆に、「身体に優しい漢方薬にしてほしい」と言われる患者さんもいらっしゃいます。まったく相反するほどの違いがあるのですが、臨床の現場では、広く漢方薬は使われています。

実際、漢方薬はとても効果があることもありますし、逆に副作用が出ることもあります。但し、いずれにせよ適切に使えば、とても有効な薬剤であることは確かです。

今回の、記事では、一般内科でよく使われる漢方薬について、総合内科専門医である長谷川嘉哉が解説します。

目次

1.漢方薬の一般的な知識

漢方薬の服用に際しては、以下に気をつけてください。

1-1.基本は、食前か食間

漢方薬は、通常の薬のように食後ではなく、食間が食前に服用します。ちなみに「食間」とは、食事と食事の中間を意味しており、おおよそ食後2~3時間を言います。「食前」は、食事の前の30分から1時間を言います。食間と食前、自身のライフスタイルに合った方を選んでください。

1-2.「湯」がつく薬はお湯で飲む?

漢方薬で○○湯という名称の場合、本来は、生薬を煎じた薬であったため、お湯で溶かして飲んだほうが効果があると言われています。但し、十分な量の水や白湯を飲めば、同じ効果が得られます。

1-3.もっとも多い副作用は低カリウム低症

漢方薬は副作用がないと思われがちですが、全くないわけではありません。副作用として最も多いのは、「甘草(かんぞう)」によるものです。「偽アルドステロン症」といって、体が浮腫み、血圧が高くなり、低カリウム血症になります。漢方薬を継続的に服用している場合は、定期的な採血でカリウムのチェックが必要です。また、体に浮腫みが出てきた場合は、必ず主治医に報告をしましょう。

2.よく処方するベスト7を紹介。風邪の引き初めには葛根湯

私自身だけでなく家族も愛用しています。「風邪を引きかけた?」と、少しでもおかしいと思ったら、迷わずに服用することがコツです。風邪の初期であれば、1~2回服用すれば、治ってしまいます。眠気を殆ど誘発しないので、高齢者や認知症患者さんにも安心して使うことができます。また、葛根湯は体を温める効果があり、筋肉の緊張を和らげるので緊張型頭痛や、肩こりにも効果があります。詳しくは、以下の記事も参考になさってください。

3.インフルエンザが疑われたら麻黄湯

熱が出ると、葛根湯では対応ができません。そんな時には、麻黄湯が有効です。イメージとしては、麻黄湯の発汗作用により、体の熱や腫れ、あるいは痛みを発散して治します。解熱鎮痛剤を使うよりも、自然で体に優しいです。インフルエンザにも適応がありますので、抗インフルエンザ薬と併用することもあります。詳しくは、以下の記事も参考になさってください。


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4.鼻水には小青竜湯(しょうせいりゅうとう)

花粉症に対する抗ヒスタミン薬では、眠気が強い患者さんには、小青竜湯がお薦めです。私は、季節になると小青竜湯を毎日服用して、ひどくなると抗ヒスタミン薬を服用するようにしています。小青竜湯は、花粉症だけでなく、くしゃみ、鼻水を伴うかぜや、ゴロゴロとたんのつまった音を伴う気管支炎、気管支ぜんそく等にも効果があります。詳しくは、以下の記事も参考になさってください。

5.大腸憩室炎の予防にも大建中湯

大建中湯は、腸管の血流を増やしたり、消化管の運動促進作用があるため、外科の手術後のイレウス予防や腹部膨満の改善に広く使われています。そのため,漢方薬の売上高では1位になっています。私は、大腸憩室を持っており、定期的に憩室炎を起こしてしまいます。大建中湯を定期的に服薬することで、憩室炎が起こる頻度が減っています。大腸憩室炎については、以下の記事も参考になさってください。

6.認知症の周辺症状に抑肝散

認知症は記憶障害を中心とする中核症状が最初に出現します。その後、症状が進行すると、幻覚、妄想、興奮、暴言、介護抵抗といった周辺症状が出現してきます。そんな周辺症状に対して抑肝散を使用するととても効果を発揮します。ブレーキ系の抗認知症薬であるメマリーと組み合わせることで、かなりの患者さんの周辺症状をコントロールをすることが可能です。詳しくは、以下の記事も参考になさってください。

7.足のつりには、芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)

夜間や運動の後に「足がつる人」は結構いらっしゃいます。特に高齢者では毎日悩んでいる人もいらっしゃいます。予防的に、眠る前に芍薬甘草湯をのむと、足のつりはかなり改善します。但し、足がつってから飲んでいては間に合いません。そのため、毎日服用する必要があるため、低カリウム血症などの副作用には注意が必要です。足のつりについては、以下の記事も参考になさってください。

8.高齢者のトラブルに八味地黄丸

高齢になると、男女問わず尿のトラブルが増えてきます、男性は、膀胱の筋肉が弱まり、頻尿や夜間尿が出現します。女性は、咳やくしゃみで尿が漏れたり、トイレに間に合わない経験をされる方もいらっしゃいます。そんな、中高年の尿トラブルに効果的な漢方が八味地黄丸です。八味地黄丸は身体を暖めて、冷えを取り、加齢により低下した全身の機能を改善することで、頻尿、尿漏れ、夜間尿、残尿感を改善します。

9.まとめ

  • 適切に使用すると、漢方薬はとても効果を発揮します。
  • 漢方と西洋薬を上手に組みわせることが大事です。
  • 服用は、食後でなく、食間もしくは食前が基本です。
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