専門医が解説、肩こり・腰痛に最適な湿布の選び方・使い方は?

専門医が解説、肩こり・腰痛に最適な湿布の選び方・使い方は?

外来では、高齢の多くの患者さんが慢性的な痛みに対して、湿布を希望されます。若い方でも、捻挫や肩こりなどに湿布を使われるのではないでしょうか? そんな湿布ですが、種類、使用方法、副作用について知らずになにげなく使っていないでしょうか?

今回の記事では、脳神経内科専門医の長谷川嘉哉が、最適な湿布の使い方をご紹介します。

目次

1.湿布に、患部を温めたり、冷やす効果はない、とは

身体に痛みがあるときに、冷やしたら良いのか、温めたら良いのか迷われるかと思います。基本は、急性期は冷やし、慢性期は温めます。痛みが出てから2〜3日は、患部を冷やすことで炎症反応を抑えます。その後、痛みのピークが超えた場合は、患部を暖めることで回復を早めます。

ならば、最初は冷湿布で、その後は温湿布と考えがちですが、湿布には、深部まで冷却したり、暖めたりする効果はありません。本当に冷やす際は、氷などを使ったり、温める際は、カイロ等を使う必要があるのです。

business woman putting an ice pack on her back pain
冷やして痛みを感じしにくくする効果はありますが、患部そのものの改善効果は期待できません

2.湿布の種類とは

湿布薬は、大きく以下の3種類に分けられます。

2-1.冷湿布は冷たく感じるだけ

冷湿布とは、冷感タイプの湿布です。消炎効果のあるサリチル酸メチルに加えて、冷感を感じるメントールやハッカ油が配合されています。湿布本体の水分による気化熱で、皮膚表面の温度は下がりますが、実際に患部を冷やす効果はありません。

2-2.温湿布も温かく感じるだけ

温湿布とは、温感タイプの湿布です。冷感タイプと同じ消炎効果のあるサリチル酸メチルに加えて、温感を感じるトウガラシエキスが配合されています。あくまで温かく感じるだけで、患部を暖める効果はありません。逆に、冷湿布と同様に、湿布本体の水分による気化熱で、皮膚表面の温度は下がるのです。

2-3.鎮痛剤含有の湿布もある

消炎鎮痛剤が配合された湿布です。痛みを抑える効果は、従来の冷湿布や温湿布よりもあります。しかし、使用回数や、経口からの鎮痛剤との併用に注意が必要です。

3.湿布の形状の違い

患者さんによって、「剥がれにくいこと」を重視する人や、「皮膚に優しいこと」を重視する人など好みが分かれます。

3-1.貼付剤(パップ剤)

皮膚が弱い方には、このタイプを好まれる方が多いです。

昔からあるタイプで、白くて厚い生地でできた湿布です。成分以外に、水分を多く含んでいるため、気化熱でひんやりします。しかし、粘着力は弱いため、テープやネットで固定しないと剥がれてしまいます。

3-2.プラスター剤(テープ剤)

最近は、こちらのタイプが主流です。肌色で薄い生地に有効成分を含ませた湿布です。水分をあまり含んでいないため、ひんやりとはしません。代わりに、しっかりと皮膚に密着し、柔軟性があるため関節部にも使えます。その分、皮膚に負担がかかりやすくなっています。

Woman Applying Ice Bag On Her Knee
欧米では、日本の湿布のような製品は少なく、アイシング、圧迫、固定、安静のRISE処置が一般的です

4.湿布は何枚処方できるか

患者さんの中には、「できるだけたくさん湿布をください」と執拗に訴える患者さんいらっしゃいます。毎日、身体中に7~8枚貼っているとすぐになくなってしまうようです。中には、大量にストックしてお孫さんなどにあげている人もいるので困ったものです。

そのような事情もあったためか、健康保険では、処方箋1回につき処方できる枚数に制限が加えられました。令和2年8月現在、処方箋1回につき70枚が限度となりました。ならば月に何度も受診すれば、その度に70枚の処方が受けられるかというと、それにも縛りがあります。処方箋に、部位、回数、何日分を明記する必要があり、過剰な投与にブレーキが掛けられているのです。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


結果、月に70枚を超える枚数を希望される場合は、薬局等で実費で購入いただく必要があるのです。

5.湿布は何時間効果があるの?

湿布の霊感や音感が感じられる時間はどの程度でしょうか? 一般的にですが、貼付剤(パップ剤)は作用時間は12時間程度、プラスター剤(テープ剤)は24時間と考えてください。そのため貼付剤(パップ剤)は1日に2回貼る必要があります。一方、プラスター剤(テープ剤)は、半日で剥がしても、成分の多くは皮膚に浸透しているため、効果が持続します。

6.湿布の貼り時、はがし時は

湿布にも貼り時と、剥がし時があります。

6-1.いつ貼ればよいの?

お風呂上りがお薦めです。皮膚の汚れや脂分が洗い流された状態なので、湿布がしっかり吸着しやすくなります。但し、水分はしっかり拭いて、汗をかいている場合は少し時間をあけてから貼ってください。

6-2.湿布は剥がしても効果が持続する

そもそも、湿布は貼り続ける必要はありません。おおよそ8〜12時間も貼れば成分は皮膚に浸透し、剥がした後も効果は持続します。そのため、入浴直前に剥がすのではなく、入浴の数時間前には剥がしておいて、皮膚への負担を軽減することがお薦めです。ちなみに、トウガラシ成分の含まれた温湿布を入浴前に剥がすと、お風呂で相当しみますので注意してください(私の体験談です)

7.湿布の副作用は

湿布にも副作用はあります。

7-1.皮膚症状

湿布が刺激となって、皮膚炎を起こすことがあります。剥がすと、湿布の形どおりに赤くなります。使用時間を短くしたり、軟膏を使っても改善しない場合は、使用を中止してください。他の軟膏等への変更が必要になります。

7-2.日光過敏症

湿布を貼った部位に紫外線を浴びるとかぶれる方がいらっしゃいます。紫外線が通りにくい、衣服(長袖・長ズボン)で改善すれば継続は可能です。

7-3.鎮痛剤含有の湿布は、飲み薬並みの管理を

鎮痛剤を含む湿布の場合は、使用方法に注意が必要です。「1日最大2枚まで」の指示に反して、余分に貼ることは飲み薬を余分に飲むことと同じ程危険です。この湿布には鎮痛剤が含まれていますから、基本は経口の鎮痛剤との併用は避ける必要があります。

また、鎮痛剤は胃潰瘍等の消化器疾患を引き起こす可能性があります。この副作用は、湿布であっても同様ですので注意が必要です。

8.まとめ

  • 冷湿布や温湿布には、患部を暖めたり冷やしたりする効果はありません。
  • 好みによって、貼付剤(パップ剤)かプラスター剤(テープ剤)を使い分けましょう。
  • 湿布は、8-12時間貼れば成分は皮膚に浸透し、剥がした後も効果は持続します。
長谷川嘉哉監修シリーズ