上皇后美智子さまが異常を指摘されたBNPとは?・・総合内科専門医が解説

上皇后美智子さまが異常を指摘されたBNPとは?・・総合内科専門医が解説

2019年6月7日宮内庁は、「上皇后美智子さまが近く宮内庁病院で、心臓の検査を受ける」と発表されました。その週初めに行なった定期的な血液検査で、「心不全の診断指標となるホルモンBNP値が正常値を上回っており」ということで、詳しく検査なされるとのことです。

数ある検査項目の中でも、BNPは聞きなれないのではないでしょうか? しかし、臨床の現場では数年前から測定することが可能になりました。心不全を早期に見つけるにはとても有用な項目です。今回の記事では、総合内科専門医である長谷川嘉哉が、この「BNP」について、評価方法、対応方法についてご紹介します。

1.BNPとは?

BNPの正規名称は脳性ナトリウム利尿ペプチド(=brain natriuretic peptide)と言います。心臓から分泌されるホルモンです。尿の量を増やしたり、血管を広げたり、交感神経を抑制することで、心臓が肥大することを保護するように働きます。

BNPは、心臓に負担がかかったり、心臓の筋肉が肥大すると高くなるので、BNPの血液中の濃度を測定すると心臓の状態が分かるのです。

当初、BNPの検査は、心不全の状態を把握するために用いられていました。2007年からは、「心不全の診断」することが健康保険で認可されました。心不全は、当初は症状がないことが多いのですが、BNPは無症状の段階でも高値を示すことが証明されているので、早期発見にもとても有効なのです。

Blood sample for BNP test
BNPの値は近年手軽に調べられるようになりました

2.BNPが高値を示す心不全とは?

心不全とはどんな病気なのでしょうか?

2-1.心不全とは?

心不全とは、病名ではなく、心臓の状態を表す言葉です。人間の身体は、心臓というポンプを中心にして全身に血液を送っています。そんな時に、心臓のポンプ機能が低下すると、身体全体の血液の流れが滞ることで様々な症状が起こるのです。

2-2.症状

心不全で血液の流れが滞ると、身体を動かしたときに息切れがしたり、脚や顔が浮腫んだりします。症状がひどくなると肺にまで水が溜まり、重篤な呼吸困難が出現し救急搬送されることさえあるのです。そのためにも早期の発見は大事なのです。

Emergency Department: Doctors, Nurses and Paramedics Run and Push Gurney / Stretcher with Seriously Injured Patient towards the Operating Room. Bright Modern Hospital with Professional Staff.
重篤な心不全は救急搬送が必要になる場合があります

2-3.検査所見

心不全はBNP以外の検査も組み合わせて診断します。

  • 胸部レントゲン:心臓が大きくなっていないかは、心胸郭比を見ます。心胸郭比(CTR)とは、胸部単純X線正面画像から胸郭幅に対する心臓幅の比率を百分率で表した指標です。男性では50%以下、女性では55%以下が正常とされています。進行すると肺に水が溜まることもあります。
  • 心電図:心不全自体を心電図で診断はできませんが、心不全の原因となっている、不整脈、狭心症、心筋梗塞がないかを調べます。
  • 心エコー:心臓の動きや心臓の弁の動きを見ることで心不全の原因を調べます。ちなみに上皇后美智子さまは、弁の動きが悪くなる弁膜症が指摘されました。

3.BNPの数値の評価

BNPの数値は、少しでも高ければすぐに病気として精査・治療が必要なわけではありません。

3-1.100pg/㎗未満の場合

BNPの正常値は、18.4pg/㎗未満です。しかし、100pg/㎗未満であれば、正常値を超えていても、症状は殆どありませんし、治療・精査も不要です。

3-2.100pg/㎗以上500pg/㎗未満では

これぐらいの数値でも、症状が出ないことが多いです。しかし、このレベルですと、一度は胸部XP、心電図、心エコーなどの検査により、心不全の原因を調べる必要があります。

3-3.500pg/㎗以上

流石にこの数値になると、症状が伴ってきます。早急に精査をするとともに、治療を要することが多くなります。治療としては、利尿剤で心臓の負担を減らしたり、不整脈、弁膜症、狭心症があれば、それぞれに対する治療を行います。

4.高齢者の特徴

こんな有用なBNPですが、臨床の現場では以下のような特徴があります。

4-1.軽度に上昇していることが多い

高齢者の方は、BNPの数値が正常の方は少ないものです。やはり加齢に伴い心臓には負担がかかります。そのため、精査や治療のいらないレベルで高くなっている方が多いのです。そんな時、患者さんに、「上皇后美智子さまと同じで、数値は高いですが日常の生活は問題ありませんよ」と説明すると、とても理解いただき少し嬉しそうです。

4-2.定期的な測定で悪化時に注意

BNPの数値は定期的に観察する必要があります。仮に、精査・治療が不要なレベルでも、経過の中で数値が急激に悪化した場合は、適切な対応が必要になるのです。

4-3.感染症の際に心不全を合併することが多い

高齢者は、発熱を伴う肺炎などを起こした場合、心不全を合併することが多くあります。そんな時に、肺炎の治療だけしていると心不全が悪化してしまいます。そのため、肺炎などが疑われる場合は、同時にBNPも測定して、数値によっては心不全の治療をすることも必要になります。

5.まとめ

  • BNPは、心不全の早期発見に有効な検査項目です。
  • BNPは正常値でなくでも、すべてに精査・治療が必要なわけではありません。
  • 高齢者の肺炎の場合、心不全も合併することがあるためBNPの測定も必須です。
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