外来では、「運動をしてくださいね」というお願いを多くの患者さんにしています。しかし、半分以上の方は運動習慣を持たれません。僅かな方は運動をしてくれますが、それもウォーキングを中心とした有酸素運動どまりです。しかし、医師としては、有酸素呼吸に筋肉トレーニング(以下筋トレ)を加えてもらえると理想的です。
筋トレには本当に多くの効用があり、まさに万能薬なのです。年齢の割に元気な方は、積極的に筋トレを行っている方が多くいらっしゃいます。過去には、100歳を超えた双子のきんさん、ぎんさんも筋トレをしていて、効果を得ていたというほどです。今回の、記事では、脳神経内科専門医の長谷川嘉哉が、筋トレの効用と方法についてご紹介します。
目次
1.筋トレとは?
筋肉のピークは、22〜30歳と言われていて、何もしないと下降線をたどっていきます。特に、足や腰といった身体を支える筋肉の減少が顕著で、80歳になると30歳の約半分にまで減少します。
加齢に伴いバランス機能が低下して、骨も脆くなっている高齢者にとって、身体を支える筋肉は命綱と言えます。年齢に身を任せていると、筋肉量や筋力の低下は加速して、転倒の危険が高くなるのです。
それを予防するものが「筋肉トレーニング=筋トレ」です。負荷をかけながら筋肉を収縮させる運動を、「筋トレ」と呼びます。ただし、無理な筋トレはかえって健康を損ねてしまいます。年齢と体調にあった筋トレをすることが大事です。
2.高齢者の筋トレの効果
高齢者の筋トレには、特に以下の疾患で効果があります。
2-1.糖尿病のリスク提言
糖尿病は万病のもとです。しかし、その数は、糖尿病である方、予備軍それぞれで1000万人を超えています。糖尿病は血液中の血糖値が上昇することで発症します。その血糖を消費するのが筋肉です。1日に摂取する糖のうち7割を筋肉が消費してくれます。つまり筋トレにより筋肉量が増えると、糖が代謝され、血糖を下げるインスリンというホルモンの分泌が節約できます。結果として、糖尿病を予防、改善することにつながるのです。
2-2.アルツハイマー型認知症の予防
筋トレを行うと、インスリン様成長因子(IGF-1)という物質が脳や体内で産生されます。この物質は、筋肉の成長を促すだけでなく、アルツハイマー型認知症の原因の一つと考えられるアミロイドβというタンパク質を減少させます。つまり、筋トレがアルツハイマー型認知症の予防になるのです。
2-3.骨粗鬆症の予防
骨粗鬆症があるとちょっとした事故で骨折。骨折を機に、寝たきりや認知症になりやすいのでできれば避けたいものです。骨に垂直方向の力が加わると骨密度が高まり、骨が強くなります。骨は、腱を介して筋肉とつながっているため、筋トレによって骨に垂直方向の刺激が加わるため、骨粗鬆症予防に効果的なのです。
3.まずは有酸素運動から
これだけ効果的な筋トレですが、いきなり筋トレを行うことは避けましょう。散歩やウォーキングといった有酸素運動も筋肉量の維持や増強には欠かせません。筋肉を維持するためには、1日に6000〜8000歩の歩行は有効です。そこに、さらに筋トレを追加するとより効果的になります。
4.高齢芸能人ご用達のスクワットの方法
筋トレといって、よく効くものに「スクワット」があります。黒柳徹子さん、吉永小百合さん、お亡くなりになった森光子さん、 など多くの芸能人がスクワット体操をやっているそうです。
4-1.スクワットの具体的な方法
- 足を肩幅に開いて背筋を伸ばし、両手を前に出す
- 息を吸いながら、ゆっくり膝を曲げ、お尻を突き出すように腰を下ろす
- 太腿と床が平行になるまで腰を落としたら、息を吐きながらゆっくり膝を伸ばして元の姿勢に戻る
- はじめは、5回からスタートして、徐々に回数を増やしましょう
ちなみに、森光子さんは、朝夕毎日75回スクワットをしていたそうです。
4-2.スクワットの注意点
私の周囲にもスクワットで膝や腰を痛めた方が結構います。スクワットには以下の注意点があります。
- 膝とつま先の向きをそろえる
- 膝を曲げたとき、膝頭がつま先より前に出ないように気をつける
- 慣れないうちは、いすの背もたれなどにつかまって行う
5.ブレイングボードでスクワットを行うと安全で効果的
正しくスクワットを行うことに不安な方には、ブレインググループが開発したブレイングボード®もお薦めです。ブレイングボード®は、「有酸素運動」「筋力トレーニング」「柔軟性向上」「バランス性向上」の4つの運動がわずか5分でできてしまいます。ある意味、今回の記事でご説明した運動はこれですべて賄ってしまうのです。
ちなみに、スクワットをブレイングボードで行うと、傾斜のために膝がつま先より前に出ることが予防されます。そのため、自然に正しい姿勢でのスクワットができてしまうのでよりお薦めです。
ブレイングボード®は下記のサイトからお求めいただけます。
6.お金に余裕があれば、負担のすくないパワープレートは超お薦め
ブレイングボードより、もう少し効果が体感できる筋トレをしたい方には、パワープレートがお薦めです。私は、10年近く週に3回は必ず使っています。パワープレートは、簡単に言えば「全身振動マシン」です。といっても、一時流行った、「乗っているだけで振動して、体重が減る?」といった安易な機械ではありません。NASAで開発された、3次元の振動を実現した、高機能な機械です。プロスポーツの世界では、Jリーグでは半数のクラブに、プロ野球、バレー、アメフトの世界にも納入されているようです。
筋肉は、古い筋肉を破壊して、新しい筋肉を再生させることで増大します。そのために、多くの方は重い負荷による筋肉トレーニングを行いますが、年を取ると心血管系への負担が心配です。
そんなリスクがあるトレーニングと同等の効果が、パワープレートでは得られてしまいます。機械に乗ってもそれほどの負担はないのですが、15分も経つと、全身汗びっしょりになってしまいます。その割に、筋肉痛は全く生じません。とても不思議な感覚です。ちなみに、ユニクロの柳井会長が、ソフトバンクの孫さんにプレゼントされたという逸話もあります。
最近では、少し値段の安いものがアマゾンでも売られています。
7.筋トレを行う際の注意
なお、筋トレを行う際には、以下の注意が必要です。
7-1.血圧の上昇
高血圧で治療中の方は、筋トレの前後で血圧を測定しましょう。運動後に、収縮期血圧が180を超える場合は、筋トレは中止です。また、筋トレの際に、呼吸を止めると血圧が上がってしまうので、ゆっくりと呼吸をおこなうと血圧が上がりにくくなります。
7-2.やりすぎはかえって危険
筋トレは、トレーニング後に回復期が必要です。そのため、毎日行ってはいけません。2〜3日に1回程度の頻度にとどめてください。
7-3.姿勢に注意
筋トレの種類に関わらず、重要なことは姿勢です。筋トレ後に、どこか痛みがある場合は、姿勢が悪いことが多いものです。痛みが出た場合は、無理をせず、いったんは筋トレ中止。その後は、第三者に姿勢をみてもらってから再開するようにしてください。
8.まとめ
- 年齢に関わらず、筋トレは万能薬です。
- とくに高齢者の場合は、糖尿病、認知症、骨粗鬆症の予防効果が期待されます。
- 筋トレには、スクワット、ブレイングボード、パワープレートがお薦めです。