先日、私自身が2つの保険を同時に解約する機会がありました。一つは銀行を通じて加入した保険、もう一つは保険会社のライフプランナー(営業職)から直接加入した保険です。結果として感じたのは、「ライフプランナーから加入した保険の方が、解約手続きが圧倒的にスムーズだった」ということ。そして、何より「顧客目線に立ってくれている」と実感できたのです。
この経験から、私は強く思いました。「保険は銀行から買ってはいけない。保険の本質を理解し、顧客の将来に伴走してくれるライフプランナーから加入すべきである」と。
目次
1.銀行は「代理販売業者」に過ぎない
銀行が保険や投資商品を販売するようになったのは、2000年代以降の規制緩和によるものです。いわゆる「銀行窓販」と呼ばれるこの仕組みでは、銀行は保険会社や証券会社と提携し、店頭で商品の販売を行います。しかし、ここで重要なのは、銀行員はあくまで“代理販売員”であり、商品の本質的な内容を把握しているわけではないということです。
保険にしても、投資信託にしても、銀行が取り扱う商品は「販売手数料が高いもの」が中心です。なぜなら、銀行にとっての利益はそこにしかないからです。商品内容よりも「いかに高い手数料を得られるか」が優先される構造がある限り、本当に顧客にとって必要で最適な商品が提供されることは期待できません。
2.ライフプランナーとの決定的な違い
一方、保険会社のライフプランナーは、顧客一人ひとりのライフステージや価値観、将来設計に合わせてプランを組み、継続的にフォローアップを行います。加入の際はもちろん、今回私が体験したように「解約」や「見直し」の際にも、誠実に対応してくれます。
彼らは「一度売って終わり」ではなく、人生に寄り添うパートナーとしての立ち位置を明確にしています。その違いは、実際に解約手続きを進める中で明白になりました。銀行での手続きは事務的かつ煩雑で、こちらの意図や状況に対する理解も乏しいものでした。
3.投資商品も同じ構図
この「銀行からは買うな」という教訓は、投資商品でもまったく同じです。特に問題なのは、手数料の高い投資信託や仕組債を勧められることが多い点です。多くの人が銀行員のアドバイスを信じて購入してしまいますが、その裏には「銀行の利益優先」という構造があることを忘れてはいけません。
昨今話題となっている「NISA(少額投資非課税制度)」でも、銀行で口座開設し、そのまま窓口で投資信託を購入する人が少なくありません。しかし、NISAこそ、信託報酬が安く、運用効率の良い商品を選ぶべき制度です。にもかかわらず、銀行では高コストの商品が並び、非効率な運用につながることが多いのが実情です。
4.銀行は“お金の血流”に専念すべき
本来、銀行の社会的役割は「融資」にあります。つまり、お金を必要としている企業や個人に対して資金を供給し、経済を回す血液としての役割を果たすことこそが、銀行の本来業務であるはずです。
ところが、近年は預貸金利差が縮小し、銀行の本業が儲からなくなったことで、保険や投資信託といった「手数料ビジネス」に活路を見出しています。これはつまり、銀行が自らのビジネスモデルの限界を補うために、我々消費者を“手数料収入の対象”として見ているということに他なりません。
5.まとめ:我々消費者が選択眼を持つべき
保険や投資は、一生を左右する重要な金融選択です。それを、ただ窓口で勧められるがままに加入・購入してよいわけがありません。今回の体験から私は、「誰から買うか」がいかに重要かを痛感しました。
銀行は、保険・投資商品を“本気で考えてくれる”存在ではありません。だからこそ、ライフプランナーや独立系ファイナンシャルプランナー(IFA)といった、顧客本位の視点を持つ専門家とつながることが大切です。もちろんこの場合の、IFAに薦められるままではなく、消費者自らが学ぶことを忘れてはいけません。

認知症専門医として毎月1,000人の患者さんを外来診療する長谷川嘉哉。長年の経験と知識、最新の研究結果を元にした「認知症予防」のレポートPDFを無料で差し上げています。