日本人は「保険好き」と言われるほど、保険への関心が高く、多くの方が何かしらの保険に加入しています。実際、保険の販売員の数も全国に数多く存在し、さまざまな商品が提案されています。しかしながら、保険という大切な金融商品であるにもかかわらず、その仕組みや本質に対する理解は、意外と浅いのが現状です。特に、「保障も受けられて、さらに満期金ももらえる」ようなタイプの保険商品に対して、「お得感がある」と感じてしまう方は非常に多いのではないでしょうか。確かに一見すると、一石二鳥のように思えるかもしれません。しかし、そこには大きな落とし穴があります。
目次
1.「貯蓄型保険」は売り手にとって非常に“おいしい”商品
こうした「貯蓄型保険」と呼ばれる商品は、実は保険会社や販売員にとって非常に“おいしい”商品です。なぜなら、商品の設計上、多くの手数料を含ませることができるからです。私たち加入者が支払う保険料の中には、実際の保障に必要な原価だけでなく、多額の手数料や運用経費が含まれており、それが保険会社や販売員の収益となっているのです。
2.保険の基本は保障と資産形成は分ける
保険というのは本来、「万が一に備えるための保障機能」に特化したものであるべきです。一方で「資産形成」は、投資や貯蓄という別の手段で行うのが、最も合理的かつ効率的です。この2つを混ぜてしまうからこそ、支払う保険料は高くなり、肝心の保障も中途半端、資産形成の効果も中途半端という残念な結果になりがちです。
そのため、個人が最もコストパフォーマンスよく保障と資産形成を実現したいのであれば、「保障は掛け捨てのシンプルな保険」、「貯蓄・投資は自分で証券会社などを通じて行う」という考え方が非常に重要です。例えば、医療保険や死亡保険は必要最低限の掛け捨て型で十分ですし、老後資金の準備などは、つみたてNISAやiDeCoなどの制度を活用して投資信託などで運用していく方が、長期的には高いリターンが期待できます。
3.法人保険も基本は同じ
これは法人の場合も同様です。企業が役員の退職金を準備する際にも、保障機能のない純粋な積立型の商品(たとえば、確定拠出年金制度など)を活用する方が、コスト面でも運用面でも有利です。掛け捨ての定期保険で必要な保障だけを確保し、退職金などの準備は別途で戦略的に運用する。こうすることで、会社のお金の使い方も効率的になりますし、無駄な保険料を抑えることができます。
4.保険営業マンは正しい情報を提供しない
しかしながら、こうした「本質的な保険の使い方」についての情報は、保険の販売員側から積極的に提供されることはほとんどありません。なぜなら、販売手数料が下がってしまうからです。保障と貯蓄を分ける合理的な方法は、販売員にとって“売りにくい”商品になるため、どうしても提案が後回しになったり、説明されないまま終わってしまうケースが多いのです。
本当に自分の人生や家族の将来を守るために保険を選ぶのであれば、「誰が得をする商品なのか?」という視点を持つことがとても大切です。そして、少し手間をかけてでも、自ら情報を取りに行き、基本的な金融リテラシーを身につけることで、不要なコストを避け、合理的な選択ができるようになります。
5.まとめ
保険に関しては「なんとなく安心だから」「すすめられたから」といった理由だけで加入するのではなく、しっかりと自分で目的を明確にし、保障と貯蓄を切り分けて考える習慣をつけていきたいものです。
本来は、こういった情報は一般常識として義務教育で日本人に浸透させたいものです。しかし正しい情報であっても、保険会社が有力なスポンサーであるためマスコミで報じられることはないのです。

認知症専門医として毎月1,000人の患者さんを外来診療する長谷川嘉哉。長年の経験と知識、最新の研究結果を元にした「認知症予防」のレポートPDFを無料で差し上げています。