歯科領域は、脳血管障害、虚血性心疾患、癌、認知症に関わります。つまり、命に関わるすべての疾患に影響を及ぼします。そのため、在宅領域から始まり、外来、入院レベルにおいても積極的に医科歯科連携がされています。この勢いは、今後さらに加速するものと思われます。そんななか厚生労働省は歯科医養成を抑制しようとしています。このままでは、医科側が歯科との連携をお願いしたくても、歯科医が不足してしまうことが明らかです。実は、40年ほど前に私が医学部に入学したときにも厚生労働省が同じ間違えを起こしていたのです。今回の記事では、今後歯科医師は抑制でなく、増やす必要がある理由をご紹介します。
目次
1.歯科診療が早期回復や退院後の生活改善に効果
以下は、令和6年7月6日の日本経済新聞の記事です。
入院患者、歯科治療が効果 感染予防や栄養改善に期待
歯科と連携し、入院患者の口内の衛生管理に力を入れる病院が増えている。不衛生だと口内の細菌が体内に入り感染症を起こすなど回復が遅れることがある。口内の状態がよければ手術後の食事再開が早まり、退院後の生活も改善する。政府も診療報酬改定で医科と歯科の連携を促している。
記事の中では、特に消化器外科、胸部外科、小児科、血液内科で入院期間の短縮が顕著の様です。ただし、病院内に歯科や口腔外科があるのは全体の2割程度にとどまる点からも、今後歯科医が今まで以上に求められているのです。
2.40年前に医師過剰時代が指摘?
40年前我々が学生であったころ、「医師過剰時代が来る」と言われていました。将来は、「医師が余って、人によっては海外のようにタクシーの運転手になる時代がくる」とまで言われました。そのため、医学部の定員まで減らされていたのです。そして現在、全国的にあらゆる分野で医師が足りていません。まさに、その時の政策が間違っていたのです。
3.歯科医の養成の現状
歯科医師の年齢を見ると、50 歳以上(50 代、60 代、70 歳以上)が 既に半数を大きく超え、平均年齢は 54.3 歳で、年々上昇し続けています。その上、4割程度の医院が「高齢や後継者不足を理由に10年後の引退を考えている」と回答しています。
これらの原因は、歯科医師の供給が減少したことによります。
2024年の歯科医師の国家試験の合格率は、66.1%(新卒81.5%、既卒39.8%。男性62.0%、女性72.0%)。確かに、学生の質の低下、勉強不足もあるかもしれません。しかし、歯学部の入学試験を通った学生の約2/3しか合格できない試験は異常ではないでしょうか? 合格者数も、不思議と2000名程度と人数調整をしているとしか思えない結果です。歯学部に入学して、歯科医になれない1/3の人たちの人生はどうなるのでしょうか?
早急に厚生労働省は、歯科医師の供給増を検討すべきです。
4.まとめ
- 病院でも医科歯科連携の必要性が増しています。
- 歯科医の平均年齢が高齢化するなか、歯科医師の供給が抑制されています。
- 現在の政策は、40年前の医師過剰時代を読み間違えたことと同じです。